2日に正式発足した野田新内閣は、小沢一郎元代表のグループから2人を入閣させるなど、党役員人事に引き続いて党内バランスを優先した布陣となった。民主党代表選の決選投票で野田佳彦首相を支持した鹿野道彦農相のグループから2人が入閣するなど、論功行賞色もにじむ。民間からの登用はなく、まずは政権の足元固めに徹した地味な顔ぶれとなっている。
「任命されました」
国家公安委員長の打診を受けた山岡賢次氏が2日午前、電話で報告すると、小沢元代表は「よかったな、よかったな」と繰り返した。山岡氏は小沢元代表の側近の一人。元代表のグループからは一川保夫氏も防衛相で入閣し、野田首相は組閣を通じ「脱小沢」路線の見直しを打ち出した。
グループごとの閣僚配分をみると、菅政権での主流派だった野田グループに2人、前原誠司民主党政調会長のグループが3人、菅直人前首相のグループは1人。中間派では鹿野グループの2人のほか、旧民社党系、旧社会党系グループにそれぞれ1人を配分した。鹿野グループのベテラン議員は「党内バランスに気を配っている」と評する。
今回の組閣について、野田首相は2日の記者会見で「代表選の時に『怨念(おんねん)の政治はやめましょう』と言った。言葉だけでなく人事で表れるか、自分なりに心を砕いて、人事の骨格を決めた。適材適所の人選をさせていただいた」と説明し、挙党態勢づくりを重視したことを明らかにした。
党内基盤が強くない野田首相は、代表選の論功行賞にも気を配った。特定のグループに属していない議員で入閣した4人のうち、再任の平野達男復興担当相を除く3人は岡田克也前幹事長に近い。岡田氏は野田陣営の選対顧問も務めた功労者で、手厚く遇した。
一方、政権が代わっても、参院で野党が多数を占めるねじれ国会の現状は変わらない。今後、政権運営を軌道に乗せるには野党との協調が焦点になる。挙党一致に腐心した野田首相は国会対応も重視。首相をはじめ、川端達夫総務相、安住淳財務相、鹿野氏、鉢呂吉雄経済産業相、山岡氏と、計6人の国対委員長経験者を並べ、野党と独自に調整できる人材をそろえた。
ただ、一連の「内向き人事」により、閣僚に不可欠な政策面の実績は後回しになった。安住氏は軽量級の印象が否めず、玄葉光一郎外相も外交政策の経験に乏しい。初入閣組で実務型といえるのは長年、子育て政策にかかわってきた小宮山洋子厚生労働相や、文教行政に詳しい中川正春文部科学相らが目立つ程度だ。
内閣としての発信力にも疑問符がつく。知名度のある閣僚は蓮舫行政刷新担当相と細野豪志環境・原発事故担当相ぐらい。スポークスマン役の藤村修官房長官は2日の会見で「発信は必ずしも地味ではない」と強調したが、3代目を迎えた民主党政権を反転攻勢させるため、アピール力が問われることになる。【葛西大博、横田愛】
毎日新聞 2011年9月3日 1時35分(最終更新 9月3日 1時38分)