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平成22年度 広報ぼうさい
特集 災害の備え、何をしていますか
いつ、どこで、災害が起こるかわからない。いざ巨大地震が発生したときに必要となるのが、水や食糧等の災害に備えた備蓄品である。
今号では、港区と港区の超高層マンションを、公助(市区町村)と共助(自主防災組織)の事例として、また、専門家の家庭を自助(家庭)の事例として、それぞれどのような備えをしているのかみてみよう。

阪神・淡路大震災

(財)消防科学総合センター災害写真データベースから
http://www.isad.or.jp/


自治体における備蓄
 市区町村等の自治体では、災害発生時に避難所となる公立小中学校や自治体所有の施設等に災害に備えた備蓄倉庫を設け、水や食糧、生活必需品、医薬・医療品、また防災資機材を配置・管理している。


食料の備蓄と飲料水の確保

 港区では、区立小中学校や区が管理する施設等、約100ヶ所に防災備蓄倉庫を設置している。

 食糧は、自宅が被災して避難所に避難せざるを得ない人の想定人数に基づき算定した2日分を備蓄。高齢者や乳幼児向けに、白粥、食べやすいスティックタイプの乾パン、粉ミルクなども備蓄している。

 また、飲料水は、最低限必要な量として一人一日3リットルを基準に確保している。給水所や、小中学校、区所有施設の受水槽からの給水の他、民間ビルとの間で飲料水使用協定を締結する例もある。さらに、区立小中学校のプールの水をろ水機でろ過し、飲料水として利用できるようにしている。

避難者のための備蓄品

 災害発生後、区民は安否確認等のため近所の一時集合場所に集合、あるいは火災延焼の危険があれば広域避難所へ一時避難。その後自宅に被害がなく、火災延焼の危険もなくなれば、基本的に自宅へ帰宅する。港区では、災害発生後、区民が自宅で生活できるように自助で3日分を目安とした非常食を備蓄するよう呼びかけている。

人づくり、組織作り

 阪神・淡路大震災では、自治体職員や教職員の到着が間に合わなかったため、やむを得ず被災住民が鍵を壊して避難所を開けた例もあったという。大規模災害が発生すれば、自治体職員も被災者となり、災害出動に遅れが出ることも当然あり得る。また、港区の場合、区内在住職員は、全職員の約1割。そこで、災害発生直後には地域の力が重要な即戦力となる。

 港区は、共助促進の一環として、災害時に地域の防災会(町会、自治会)、事業所、PTA等が協力して避難所運営や避難誘導などを行うための地域組織「地域防災協議会」の活動を支援している。避難所運営のマニュアルづくりや炊き出し用資機材の使用方法等について、助言や訓練を行っている。

 備蓄物資があっても、迅速かつ円滑に運用できる組織がなければ意味がない。港区では、地域の人づくり、組織づくりのサポートに力を入れている。



食糧
避難者の想定人数から算定した2日分を備蓄


毛布、カーペット
毛布は、軽量でかさばらないフリース素材への買い換えを進めた


ろ水機
区立小中学校に配備し、プール等の水をろ過して飲料水として利用


救助用工具セット
リュックサックタイプになっており、担いで現場に急行できる(バール、大型ハンマー、ボルトカッター、ロープ、折込み鋸)

(写真提供 港区)


港区備蓄品一覧より一部抜粋 (2009年4月1日現在)
【食糧】
乾パン(スティックタイプ)、缶入り粥、アルファ化米、パンの缶詰、調整粉乳、ミネラルウォータ等
※アルファ化米とは、米飯を炊いた後に乾燥させたもの。湯や水を加えて柔らかくして食べる。湯を注いで30分程度、水を注いでも1時間程度で食べられる。

【救助用資機材等】
投光機、発電機、炊き出し用バーナー、電気メガホン、テント、簡易便所、ポータブルトイレ、担架、組み立て式リヤカー、大工道具セット、救出用資器材セット、間仕切りパネル等
【生活必需品】
毛布、カーペット、バケツ、タオル、石鹸、ポリタンク、調理器具、食器、ゴミ収集袋、オムツ(子供用、大人用)、哺乳瓶とスペアの乳首、多機能ラジオ、乾電池、生理用品、肌着、ブルーシート等
※哺乳瓶、乳首、調整粉乳、水、オムツ(子供用)等はセットにしている

【医療防疫用資機材】
災害医療資機材7点セット、救急用医療セット(消毒液、包帯、ガーゼ等)等

【燃料等】ガソリン、オイル、灯油


超高層マンションの災害に備えた備蓄
 建設が相次ぐ高層、超高層マンション。いざ大きな地震が起きれば、エレベータは使えなくなり高層階に住民が取り残される、いわゆる「高層難民」問題が近年認識されている。

 港区にある芝浦アイランドは、地上49階の超高層棟を中心とした5棟に約4千世帯、港区人口の5%にあたる約1万人が居住。分譲棟と賃貸棟がひとつの自治会を構成している。全5棟のうち分譲棟2棟各々で住民による管理組合が設立され、地震に備えた備蓄品の整備や住民交流のイベントが行われてきた。


基本は自助

 芝浦アイランド自治会の防災対策は自助を基本とし、それを共助で補うという方針だ。

 2010年5月、自治会全体の防災計画書、そして、分譲棟のケープタワー、グローヴタワーの2棟でも、自治会主導のもと各棟の防災計画書をそれぞれ作成した。災害発生時の安否確認等の情報伝達、備蓄品の取扱い、避難誘導等の詳細を明記。自治会では、日頃から港区との情報交換等で連携を行いながら、災害発生時には自助と共助で持ちこたえるための防災計画書を作成した。


Case1: 分散備蓄と5〜7日分の備え―ケープタワーの場合

 一般的に備蓄品は災害発生から3日分を用意することが望ましいといわれているが、港区では、高層マンションは、エレベータの使用不能、水、電気、ガス等のライフライン復旧までの時間を考慮する必要があるため7日間程度の備蓄をするよう呼びかけている。そのため、ケープタワー管理組合では、各家庭である程度食糧備蓄があると想定し、これを補完するかたちで3日分の水や食糧を準備。簡易トイレと合わせて、全フロアへの分散備蓄を完了している。


Case2: 情報提供と階段を使った避難対策―グローヴタワーの場合

 グローヴタワー管理組合では、現在のところ水の備蓄はあるが、その他の食糧備蓄は行っていない。費用の面、食の好み、アレルギーの心配等が主な理由。そこで、防災食の試食・販売会の開催等により、住民自ら食糧備蓄を行うよう呼びかけている。グローヴタワーが力を入れているのが情報発信。トランシーバーやシート型ホワイトボード等の情報伝達ツールを4フロアごとに配置。また、階段による避難を想定し、傷病者や高齢者を運ぶための非常用階段避難車や布担架も準備している。


防災食の試食・特別価格販売会 (グローヴタワー 2010.7.4)
防災食の試食・特別価格販売会 (グローヴタワー 2010.7.4)
(写真提供 グローヴタワー管理組合理事会)
芝浦アイランド
芝浦アイランド


自治会主導でコミュニティづくり

芝浦アイランド自治会長の額田晋さんによると、2棟の賃貸棟については近日中に防災計画書づくりを進める予定。

「本格的な防災対策のためのフレームがやっと出来上がったところです。防災計画書に基づく訓練等の実施は、まだこれから。災害時の対応を円滑に進めるためにも、住民の防災意識の向上に加え、住民同士の交流促進等、いざというときに協力できるコミュニティづくりをすすめていきたいと考えています」



飲料水、簡易トイレ、食糧
地震発生後もマンション内で生活を続けるには、生命を維持する水の備蓄に加え、トイレの整備も必須。簡易トイレは、排便収納袋と薬剤のセット。収納袋を便器やバケツ、段ボール箱等に1回ずつセットして使用。使用後は焼却可能。食糧は、クラッカーやピラフ、赤飯等いろいろな種類のアルファ化米を備蓄(食糧備蓄はケープタワーのみ)


緊急時用浄水装置
近隣プールなどの水をろ過・殺菌処理し、飲料水として確保


布担架(左)と救急箱(右)
(グローヴタワー)
布担架は、8フロアごとに1つ配置。担ぎ手の人数を増やし、運搬者の負担を減らせるハンドル数の多いものを選択。救急箱は、1、2階と高層階(30階)に分散した配置を考えている


非常用階段避難車
(グローヴタワー)
傷病者や高齢者を一人で安全に避難させることができる階段避難器具
(写真提供 グローヴタワー管理組合理事会)


シート型ホワイトボード、ペン、トランシーバーといった
情報ツールを4フロアごとに1セットづつ分散備蓄

(グローヴタワー)
シート型ホワイトボードは、何度でも書き消し可能。静電気で張り付くので粘着テープや画鋲は不要。各フロアのエレベーターホールに貼り、救援物資の入手や配布等、住民へ情報伝達。トランシーバーがあれば、高層階住民とも容易に情報伝達できる


両タワー共通備蓄品:
ペットボトル入り飲料水(5年保存)、簡易トイレ(7年保存)、アルミ組立式リヤカー、バルーン投光機、インバータ発電機、緊急時用浄水装置+ろ過材、災害用マンホールトイレ

その他:
芝浦アイランドのマンションの給水方式は受水槽方式(水道本管からくる水道水を一度水槽に貯めてから各戸へ給水)。災害時には受水槽に貯まっている水を住民に供給
備蓄品保管場所:
(1)防災備蓄倉庫(各タワー内1箇所)
(2)電気ケーブル類の配管用スペース(各フロア)
ケープタワー管理組合 グローヴタワー管理組合
約1,100世帯、約2,600人。
備蓄品:
水、トイレ、食糧3日分程度を準備
ペットボトル入り飲料水(1.5リットル)
7,800本、簡易トイレ31,200個等。食糧は、非常災害用クラッカー、アルファ化米(しそわかめご飯、えびピラフ、ドライカレー、山菜おこわ等)
約830世帯、約2,000人。
備蓄品:
発災時の在宅者人数が不明のため、何日分という算定はしていない
ペットボトル入り飲料水(1.5リットル)
6,000本、簡易トイレ24,000個等
※災害発生時には、各フロアで安否確認後、ケープタワーは、備蓄食糧等を各世帯に分配予定。グローヴタワーは、在宅者人数等の状況により備蓄品分配等を検討予定。


家庭で準備する備蓄
 家庭の備蓄品として、どのようなものを備えたらよいのだろうか?

 危機管理アドバイザーの国崎信江さん(平成22年5月号から「防災Q&A」シリーズ執筆中)に自宅の備蓄品について聞いてみた。


3段階の備蓄品

 自宅の備蓄品は、緊急避難時にすぐ持ち出すもの(1次品)、災害発生から3日間を生き抜くためのもの(2次品)、長引く避難生活をできるだけ快適にすごすためのもの(3次品)と、3段階に分けて備えています。さらに外出時の被災に備え、普段持ち歩くバッグにも防災グッズを携帯しています。


自分や家族にあったものを選ぶ 

 防災品を選ぶ際には、自分や家族に必要なもの、使いやすい、食べ慣れているといった「相性」を考えてほしいなと思います。あれもこれもと詰め込みすぎて、“重くて持ち出せない非常持出袋”では意味がなくなってしまいます。また、自分でこだわって揃えたものなら、買ったまま一度も開けずにしまい込むということもなくなるのではないでしょうか。


できることからはじめる 

 「これでなければ絶対ダメ!」というような固定概念を捨てて、例えば、持ちやすいリュックに入れてみる。また、普段携帯する防災グッズは、好きなキャラクターの付いた懐中電灯や携帯の充電器、お菓子ひとつからでもいいのです。そろえる品物の内容も費用も、“いかに負担に感じないでできるか”ということから始めてみてはいかがでしょうか。


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防災グッズは、いつも携帯
普段から、バッグの中にも急場がしのげる必要最小限の防災グッズを携帯。外出中の災害で、エレベーター等に閉じ込められる場合も想定し、携帯トイレ、暑さや寒さをしのぐ小物、お菓子等も入っている。


(備品一例)
ゼリー飲料
非常食(お菓子等)
扇子(夏季の暑さ対策)
ティッシュ
ウエットティッシュ
除菌剤
マスク
大判のハンカチ
非常用覚書(貴重品リスト等)
我が家の防災マニュアル
煙フード
簡易トイレ
懐中電灯と乾電池
身分証明書
筆記具
携帯電話と充電器
現金(紙幣と硬貨)
※煙フードは耐熱温度が400℃程度。煙の温度が高くない火災の初期段階には有効
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1次品 「防災ベスト」
緊急避難の際に直ぐ持ち出せる、最低限のサバイバルグッズを入れたベスト。地震等の災害発生時には、「防災ベスト」とヘルメットを各自着用して避難する。直ぐ取り出せるように、玄関の近くや子供部屋にハンガーにかけて保管。グッズは、多くのポケットに分散されるので着用時にもそれほど重さを感じない。また、ベストを着用しながら、子供やけが人を背負うことも可能。ポケットが多いアウトドア用ベストでも代用できる。子供が大きくなってきたら、自分の防災ベストの中身は自分で詰めるようにすると防災意識の向上にも役立つ。


(備品一例)
ゼリー飲料
非常食
お菓子(あめ、チョコ、クッキー等)
使い捨てカイロ
ティッシュ
ウエットティッシュ
救急絆創膏と包帯
マスク
おしりふき
レインコート
バンダナ
着替え
タオル
軍手
携帯型ライト

携帯トイレ
携帯ラジオと乾電池
給水袋(給水車から水をもらうため)
おもちゃ(子供用)
防災手帳(緊急連絡先、集合場所記載)
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2次品 非常持ち出し袋
緊急避難後、安全が確保されてから家族が3日間生き延びるための水、食料、生活必需品。内容は、アウトドアの旅行用品をベースに、さらに、応急手当の医薬品、暑さ・寒さ対策の小物等、電気や水道等のライフラインが途絶えたときに必要なものをプラス。膨大な量になるので、持ち運びに便利なように3つに分けて、玄関近くや車のトランクなどに保管。食料や電池等は、年に3、4回は期限などをチェック。避難ロープやレジャーシート等は防災教室などで災害時の使い方を確認しておく。


(備品一例)
3日分の非常食(缶詰、缶入りパン、餅等)

食器類
給水袋
タオル
医薬品
歯ブラシ・歯磨きシート
携帯トイレ
生理用品
トイレットペーパー
ビニール袋
ウエットタオル
消臭スプレー
使い捨てカイロ
応急手当テキスト
救急セット(消毒薬、ガーゼ、包帯等)
マスク
綿棒、脱脂綿
着替え
雨具
懐中電灯
乾電池
ロープ
マッチ
ライター
ロウソク
レジャーシート
ガムテープ
軍手
煙フード
万能ナイフ
避難ロープ
防災用ブランケット
ラジオ
貴重品
筆記用具
油性マジックペン
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3次品 自宅倉庫の防災用品
自宅のストックルームや庭の倉庫に備蓄している家族の1〜2週間程度の食料や生活必需品。3日以上、さらに避難生活が長引いた場合にできるだけ快適に過ごすためのもの。内容は、普段から多めに買い置きしている食料や生活必需品をベースに、さらに非常食をプラス。食器や調理器具はキャンプ用品と兼用。水は、ペットボトルのミネラルウォータの他、宅配水のストックや光触媒の効果で3年間水の交換が不要なポリタンクも用意。避難生活が長引いた場合、非常食だけで過ごすのは難しいので、レトルト食品やパスタ等、家族が食べ慣れた食品も備えている。賞味期限がせまった食品は普段の食事や趣味のキャンプで使用して入れ替え。

(撮影 浅山 美鈴)

(備品一例)
非常食(缶詰、レトルト食品、麺類、米、餅、お菓子等)

トイレットペーパー
ティッシュ
大型の簡易トイレ
食器
鍋、やかん
ガスボンベ
カセットコンロ
ランタン
テーブルと椅子
レジャーシート
寝袋
燃料
着火材
ライター
マット
段ボール
ポリタンク
テント





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