名古屋市の河村たかし市長が主導した市議会解散請求(リコール)の署名簿が外部に流出した問題で、大量の署名簿がインターネットのファイル転送サイトで公開されていた。署名者の氏名や住所、生年月日を不特定多数の第三者が見られる状態になっており、河村市長や署名集めをした団体が責任を問われるのは必至。一方で、市長を批判するために個人情報を公開したとみられ、その手法も議論を呼びそうだ。
ファイル転送サイトは大容量のファイルを一時的に保管し、アドレスを知っていれば誰でも自由にダウンロードできる。毎日新聞が問題のサイトからファイルをダウンロードしたところ、署名用紙1枚ごとにファイル化されたデータが確認された。名古屋市北区で集めた署名とみられ、署名日▽住所▽氏名▽生年月日が記されており、押印もあった。本物の署名簿のコピーである可能性が高い。
この問題では、署名簿をスキャナーで取り込んで電子データ化したとみられるものが、3月の出直し市議選候補者の間に出回ったことが分かっている。
ファイル転送サイトのアドレスは6日夜、匿名で毎日新聞社に送られてきたファクスに書かれていた。五つのアドレスとともに河村市長を批判する記述があり「署名簿の流出の事実を立証するために、およそ4万人分の名簿を公表する」「該当する市民にはご迷惑な事であろうがご容赦願いたい」と記されていた。
リコール署名簿流出問題を巡って河村市長は発覚当初、毎日新聞の取材に経緯などを調べる考えを示した。6月市議会本会議では「流出の事実は確認していない」としたうえで、引き続き調査すると明言した。
だが今月5日の定例記者会見で河村市長は「よく分からなかった」と調査結果を説明。調査対象者などの詳細は明らかにせず、結果の公表については「(リコールの)請求代表者に聞いてもらうべきだ」などと述べ、追加調査にも消極的な姿勢を示した。【山田一晶、加藤潔、福島祥】
毎日新聞 2011年9月7日 東京朝刊