【ワシントン白戸圭一、エルサレム花岡洋二】米国務省のヌーランド報道官は8日の記者会見で、パレスチナ自治政府が今月、ニューヨークで開かれる国連総会で国連加盟を申請した場合、米国は国連安全保障理事会での採決で「拒否権を行使する」と明言した。米政府はパレスチナの国連加盟を通じた独立に反対してきたが、政府高官が公の場で安保理での拒否権行使を明言したのは初めて。
報道官は「交渉によってのみ達成可能な国家樹立を実現しようとするパレスチナの動きに、米国は反対する」とし、イスラエルとの和平交渉を通じた問題解決をパレスチナ自治政府に求めた。
オバマ米大統領は5月の中東政策に関する演説で、パレスチナは67年の第3次中東戦争以前の境界線を基本に独立すべきだとの見解を表明。イスラエルとパレスチナに交渉再開を呼びかけているが、両者は応じていない。
クリントン国務長官は5日、アッバス議長に電話し、国連加盟申請や総会への「国家」承認決議案の提出を見送るよう要請。7日にもヘール中東担当特使がアッバス議長と会談して説得したが、議長は応じなかった。
国連憲章第4条2項の規定により、国連加盟は安保理の勧告に基づいて総会で決定される。米国が拒否権を発動すれば「勧告」は成立せず、パレスチナの加盟は阻止される。
一方、パレスチナ自治政府内には、米国との決定的対立を避けるため、国連加盟申請を見送る考えも増えている。
ただ、国連総会で非加盟のままの「国家」承認を求める決議案をアラブ諸国などに提出してもらう予定で、中国やロシアなど加盟国の半数を大幅に上回る120カ国以上が賛成する見通し。
国連総会には国家承認の機能はないが、自治政府は、決議案が可決されれば、現在の国連オブザーバー資格が格上げされてバチカンのように国際機関への加盟に道が開かれ、国際社会に事実上の独立国家扱いされるとしている。
毎日新聞 2011年9月9日 11時05分(最終更新 9月9日 13時13分)