国民主権、平和主義、人権尊重を柱とする日本国憲法や沖縄戦の教訓などを大切に思う、地域住民の声、民意を反映した妥当な判断が下されたことを評価したい。
八重山地区の社会科教科書採択問題で石垣、竹富、与那国3市町の教育委員全員による協議が行われ、2012年度から使用する中学公民教科書に東京書籍版を多数決で採択した。
今回の問題は、教科用図書八重山採択地区協議会の玉津博克会長(石垣市教育長)が現場教員による順位付けを廃止し、無記名投票を導入するなど、従来の教科書選定の手法を一方的に変更したためボタンの掛け違いが始まった。
玉津会長主導で「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版が選定され、石垣市、与那国町両教委が追認したことで政治・社会問題化。同協議では育鵬社版の採択をめぐり激しい議論を展開し、最終的に協議会答申の育鵬社版ではなく、東京書籍版を採択した。
琉球新報社が石垣、竹富、与那国3市町で実施した世論調査で「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書採択に6割余が反対していた。教育委員の採択は、その民意に沿ったものと言える。
育鵬社版は現行憲法の役割を積極的には評価せず、戦前の大日本帝国憲法の全文を掲載している。愛国心を強調し、日本の安全保障で米軍と自衛隊の役割を高く評価するなど「改憲志向」の強さが突出していた。
東京書籍版は憲法の平和主義を評価。公共の利益を政府が一方的に判断して個人の人権が制限されてはならないとするなど、育鵬社版とはだいぶ趣を異にする。
平和憲法に否定的な教科書に、住民や教育関係者が毅(き)然(ぜん)と異議を唱えたことに敬意を表したい。
文部科学省の教科書検定をクリアした教科書が問題視されたのは、検定制度に欠陥がある証左だ。
08年度以降使用される高校教科書の検定で、文科省が沖縄戦の「集団自決」の記述に検定意見を付し、日本軍による命令・強制・誘導などの表現を削除・修正するよう教科書会社に求め社会問題化した。検定意見の撤回と検定の民主化が進まねば、根本的な解決とは言えない。
生徒が大人の建設的な「熟議」に学ぶことは意義がある。しかし、不毛な対立には巻き込んでならない。県民全体で教科書選びの民主化へ向け、不断の努力を続けたい。
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