CAS(近接航空支援)であります。
風邪をひいてしまいますた(*≧m≦*)
夏風邪ほど苦しいものはないです。何とかしのいでおりますです。
さて、先日面白い映像を明石出張の際に観ました。
朝のTVニュースだったのですが、アフガンの地上部隊から
支援爆撃の要請を受けたF-15Eが搭載しているLJDAMを使うことを
パイロットが拒否して、GUNで攻撃を行うというものでした。
拒否した理由は近くに学校があったからです。
たかが20mmといえど、結構な威力なのですが、地上からは
相変わらず爆弾を落としてくれとの要請が入ります。
それでもF-15Eは搭載機関砲による支援を行います。
これは色々と考えさせられる映像です。F-15Eをこの手の任務に
投入するのが妥当かどうか、小火器しか持たないゲリラだったから
よかったものの、これがMANPADSなどを装備した正規軍だったら
どうなのか。
空自はCASという任務を重視してません。というか無視です。
陸さんから散々の要請がありながらです。
先ほど、F-2の開発要求を読み直してみたのですが、近接航空
支援のきの字も出てきていません。あくまでも着上陸阻止
が地上攻撃の目的なのです。
無理からぬ話ではあります。空軍の本来の任務は航空優勢を
確保することですから、元々保有機数が限られている空自では
労多くして余り報われない3K仕事は余りやりたがらないのです。
これは何処の空軍でも同じです。余裕があるUSAFではA-10
という専門機を持っていますが、USAFですらA-10を早期に退役
させてF-16へ更新しようと企んだことがありました。
これらの事情から米陸軍では、独自にCAS専用機を保有しようと
何度か考えたことがあります。古くはA-4やA-7、比較的最近では
泥んこ戦闘機(MAD FIGHTER)を独自に研究したことがあります。
しかし、軍の縄張り争いと予算の壁に阻まれて頓挫します。
そこで、固定翼でなくヘリコプターを武装させて火力支援させる
ことになりました。お馴染みのAH-1やAH-64です。
AH-64は第一次湾岸戦争の開戦劈頭にイラク・クウェート国境
西側の地上レーダー施設を破壊するという本来なら空軍が
やるような任務をやってのけます。
しかし、今日は攻撃ヘリコプターの限界も明らかになりました。
元々、本質的に脆弱性を有するプラットフォームであるヘリは
生残性において劣ります。益々高度化する地上軍の防空
システムの前においては、例えNOEが可能なヘリと言えども
生き残れる可能性が段々低くなってきています。
第二次湾岸戦争ではイラク軍の強力な防空コンプレックスに
遭遇したAH-64は少なからぬ被害を受けています。
そういう状況下で、AH-64のような金喰い虫(運用経費が
主力戦闘機並み)へ果たして金を掛けるべきかという疑念が
生まれてきます。(しかもラ国しても輸入部品が多く稼働率も
低いと予想される。AH-1Sも現在、同じ理由でまともに運用
できるものは少ない)
陸自のAH-64の調達が中止された要因の一つには、以上
のような疑念があるのではないかと勘繰る今日この頃です。
では陸さんとしてはどーするのか。ちょっと考えてみますた。
1. 特科に精密誘導弾の運用能力を持たせる
(GMLRSや高精度化弾薬等)
2. 普通科に精密誘導弾の運用能力を持たせる。
(精密誘導迫撃砲弾、MPMS等)
3. 攻撃ヘリの生残性、コストパフォーマンスをより高める。
(長射程MPMS搭載、機体は国産汎用ヘリベースで良い)
4. 空さんはあてにならんから、海さんに頼む。
(艦船による火力支援、艦載固定翼機調達の理由付け)
さーて、この先どうなりますか。今後益々先細るであろう
防衛予算の行方も含めて、目が離せないところでは
ありますね。
(追記)
上記4について、海さんの装備に表向き対艦用としながらも対地用としても使えるもの、AGM-65Fマーベリック(P-1用)、AGM-114Mヘルファイア(SH-60K用)、ハープーンBLOCK2(そうりゅう級)、Mk45mod4(5,000トン級)等が増えてきたことはベクトルが一致するかもしれません。
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コメント
>空自はCASを無視
つまり、CASをする羽目になることは航空阻止の失敗を意味し、航空優勢が失われた局面ですから不名誉と考えるのが当然かも知れません。絶対そうはならないぞとの裏付けがあるのであれば心強い限りです。
もし自衛隊にCASが必要になるとしたら、島嶼の奪還作戦くらいのものでしょうか。
投稿: 雨辰 | 2010年6月22日 (火) 16時20分
CAS を円滑に運用しようとすると、FAC/JTAC の育成とか SADL みたいな仕組みの整備とかいう話も絡んでくるので、内輪で済ませることができる「1」「2」の組み合わせが、案外と現実的かも知れないなあと思いました。
投稿: 井上@Kojii.net | 2010年6月24日 (木) 10時02分
はじめまして。
CASやSEAD(これも我が国は不熱心ですね)のような危険度の高い任務は、今後UAVが担っていくことになるんでは、などと考えております。まだまだ先の話だとは思いますけどね。
F2にMaverickくらいは…なんてトーシロは考えてしまいますが、空自にはそれ以上に優先すべきことがありますし、単純に「金も時間も無い」ってことなのかなー。
投稿: Exarrow | 2010年6月26日 (土) 09時06分
>井上さん
MPMSやGMLRS(GPS誘導という特性上、固定目標に限定されるが)は良い選択だと思います。特にMPMSは良いですね。
米国でNLOS-LSの開発が急がれているのも分かります。
>Exarrowさん
空はSEADには興味があるようです。SEADと言っても、所謂Maritime Interdiction用ですが。
F-2にAGM-65という話は防衛通信にも出ていました。私も気になって、M社周辺に聞いてみましたが、具体的な話はないようです。
投稿: keenedge | 2010年6月27日 (日) 14時21分
し、しかしNLOS-LS は先日に中止が決まってしまったのであります。陸軍もさることながら、海軍の LCS の精密誘導火力はどうするんでしょうか。
投稿: 井上@Kojii.net | 2010年6月28日 (月) 06時19分
>井上さん
そーなんですか。うちの米国の上司もいまやってんだよねーと自慢していたのですが。。。96式MPMS売り込みますか?ちょっとオーバーキルですが(w
投稿: keenedge | 2010年6月28日 (月) 23時10分
こちらには初めてコメントさせていただきます。
今は亡きエバケン師がCCTを高く評価されていたのを、
思い出さずにはいられません。
ソフト的には三幕の壁が障害でしょうが、
ハード的にはいかがなものなんでしょう?
投稿: 七師三等兵 | 2010年6月29日 (火) 11時17分
>七師三等兵さん
初めまして。浅学にして、空自がUSAFのCombat Control Teamのような組織を持っているかどうかは分かりません。FACは出張っていると聞いてますが。
一つ分からないのが、LJDAMのデジグを誰が運用するかです。空自の機体にデジグを積む様子はありませんので、Northrop Grumman社のAN/PED-1 LLDRのような地上配備のデジグを使うのではないかと考えてます。そうなると、CCTのような組織が必要になるかもしれません。AN/PED-1では目標データをTactical Datalinkへ流すことが可能です。日本だとまた波の関係がとか言い出しそうですが。
投稿: keenedge | 2010年6月29日 (火) 18時54分
>井上さん
どうも海軍向けは続行らしいです(今月号の軍研より)
海軍としてはLCSが片手落ちになるのは何とでも阻止したいでしょう。
そうでなくとも重要な装備品の一つである対潜UUVに欠陥が見つかったりと難産になってますからね。
投稿: | 2010年7月10日 (土) 22時29分
そういう話も出ていたのですが、海軍が代替案について照会したという話もあって、まだよく分からないのです。FY2011 国防歳出法の内容が確定すれば、今後の方向性が分かると思いますが。
投稿: 井上@Kojii.net | 2010年7月14日 (水) 06時52分