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2010年10月17日 (日)

XASM-3のお話であります。

体調ワルー(。>0<。) 従って、今日は短めです。

近頃巷で、人気急上昇中のXASM-3のお話です。
分かり易く、質問形式にしてみました。

1. IRR(Integral Rocket Ramjetengine)とは何か
   ラムジェットはかなりの高速で飛行しないとラム圧が得られない
 ため、静止状態から自力で発進することが困難、そのためラム圧
 が生じる速度域まで加速する目的で、ロケットブースタを追加
 したものであり、小型化するためにラムジェット燃焼器内に
 ブースタ推進薬を充填し、インテグラル・ブースタ化したもの。

2. ラムジェットの利点は。
 通常のジェットエンジンと違い、空気圧縮機が不要となり、小型
 軽量化が可能となる。また、ロケットエンジンは推進薬の約8割
 が酸化剤であり、燃料は2割程度であるのに対して、ラムジェット
 では空気から酸素を得るので比較的長時間の推力維持が可能
 となる。

3. IRRを最初に実用化した国は。
  旧ソ連のSA-6ゲインフルSAMにて初めて用いられた。

4. 当初予定されていたIIR(画像赤外線)シーカー搭載が見送られたのは何故か。
 空自は対艦誘導弾を電波誘導及び赤外線誘導方式の2系統
 で整備する方針を持っており、XASM-3にIIRシーカーを搭載して
 しまうと現在調達中のASM-2の調達理由が無くなってしまう。
 XASM-3はあくまでも、ASM-1の更新用として計画されている。

5. IIRシーカー無しにどうやって個艦識別を行うのか。
 GM開発官が部内誌で以下のように発言している。
 「パッシブ電波シーカによる目標識別等の機能を備え、高脅威艦
  に対処可能とする
。」従って、パッシブレーダによる電波情報
 で目標識別を行うものと考えられる。

6. IRRの動作フェーズは。

  1. ブースタフェーズ(ロケットモータによる加速)
  2. トランジェントフェーズ(ブースタノズル及びポートカバーの切り離し)
  3. ラムジェットフェーズ(ラムジェットによる飛翔)

7. 高衝撃型貫徹式弾頭とは。
 XASM-3はM3程度の超高速で敵艦へ突っ込むため、従来の
 弾頭では、接触した瞬間の衝撃で弾頭及び信管が損傷して
 しまい、艦内部まで到達しない可能性がある。
 そのため、高い衝撃を受けても動作する弾頭と信管の新規
 開発が必要となる。
 詳細は不明だが、BROACHのように先駆弾頭を備えている
 可能性がある。

8. ステルス性は。
 XASM-3には幾つかの飛翔パターンがあるが、高速で飛翔する
 ため、余り低い高度を飛ばせられない。
 そのため、生残性を高めるためにもステルス化が必須となる。
 ASM-2等と異なるのは、ASM-1から発展したASM-1ファミリーが
 ステルス翼や磁性体塗料によるステルス化に留まっているのに
 たいして、電波反射をできるだけ抑えるような機体外形を採用し
 いること、また超高速による空力加熱に耐えるステルス構造を
 有していることである。

10041514

9. ミサイル間通信機能を有しているのか。
 それに関しては不明だが、昨今の技術的動向から有している
 可能性が高い。少なくても多目標同時弾着機能等は
 有していると考えられる。

10. どのような状況で使用されるのか。
  生残性が高くまた高価(3~4億/発)であることから、高脅威艦
  すなわちエリア防空艦や空母等が目標になると考えられる。
  XASM-3を使って、まずこのような目標を戦闘不能にし、その後
  ASM-2のような個艦識別可能なミサイルを使って他の戦闘艦を
  攻撃し戦闘能力を奪い、その後は輸送艦等の低脅威の艦船を
  誘導爆弾等を使って殲滅するものと考えられる。

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コメント

パッシブレーダーシーカーによる高付加価値目標識別ですか。索敵するAD防空艦や航空管制する空母はEMCONが難しいとの判断からでしょうが、揚陸艦とかはどうなんでしょう?
いっそのことISARやインパルスレーダーなどのイメージングレーダーモードとか付かないですかね。

ミサイル間や母機との2WAYデータリンクが搭載されれば、少数でも柔軟な打撃が期待できますね。

投稿: yang | 2010年10月18日 (月) 02時09分

連投すみません。
あー、良く理解してませんでしたね。高脅威対象でしたね、ASM-3の目標は。

後、今回の概算要求でASM-2Bの名前が出てましたが、これが以前、書かれていたASM-2のD/Lバージョンでしょうか?
空自初のスタンドオフウエポンか・・。

投稿: yang | 2010年10月18日 (月) 03時26分

>ASM-2(B)

いま、手元で確認できる資料では平成15年度契約実績において、93式空対艦誘導弾(B)の記載があります。
制式要綱が公開されていた平成12年まで、制式要綱上は93式空対艦誘導弾(B)の記載はありませんので、H12~15の期間で追加されたものと思われます。
具体的な内容は分かりませんが、この時期に航法装置へリングレーザージャイロを追加して誘導精度を向上させる試みが行われたらしいので、93式空対艦誘導弾(B)とは、それではないかと推測しています。

投稿: keenedge | 2010年10月19日 (火) 11時10分

ご回答ありがとうございます。
2003年には登場していたのですね。勉強不足でした。なにより、このサイトのASM-2のページにASM-2(B)について書かれていましたね。大変、失礼致しました。

投稿: yang | 2010年10月20日 (水) 02時42分

最近の入札情報では「ASM-2B
改善弾」の試験に関わる入札が行われていますね。最近では射撃も行われたようです。
以前、ASM用のGPSについて触れられていましたが、おそらくこの改善弾に用いられるものではないでしょうか?

投稿: | 2010年10月21日 (木) 20時56分

>改善弾
確かに3DPの契約実績に「ASM-2B改善弾の技術的追認に伴う試験支援役務(射撃訓練計測システム)一式」等の契約が見受けられます。通常、技術的追認は既存品を試験する際に使う用語なので、ちょっと判断に迷うところですね。
ついでに4DPで「ASMミサイル射撃訓練用標的設置等」がありますが、これは試験に供するものなのか、年次訓練に伴うものなのかは分かりません。4DPでは、「空対地誘導弾要素技術に関する調査研究」なんて面白そうなものもありました。要求元はADTWだと思います。

投稿: keenedge | 2010年10月24日 (日) 04時24分

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