96式多目的誘導弾システムの話であります。(その2)
いやー厳しいですなぁ。大綱ではP-1の新規取得は、たったの10機ですかぁ。P-3Cの維持の方に金を廻してくれるとこちとら助かるんですが。
さて、先日の96式MPMSお話の続きです。取りあえず、以下のビデオを見て下さい。
これはイスラエル・ラファエル社製の対戦車ミサイルSPIKEの映像です。このミサイルは誘導弾の光ファイバー経由で送られてくるシーカーの映像をもとに射手が誘導するタイプのものです。そう、96式MPMSとほぼ同じ誘導方式です。(96式では初期・中期はプログラム誘導による自立航法ですが)
映像を見ると、かなり広範囲の戦場の様子を視認できます。96式MPMSでは高度200mの水平巡航飛翔時において、搭載しているシーカーは約600mの捜索幅を持っています。(弾道飛翔することも可能) SPIKEはスタンドアローンで発射される誘導弾ですが、96式MPMSでは1台の射撃指揮装置により、2台の地上誘導装置が統制され、誘導装置画面が送信されてきます。各ミサイルから送られてくる映像情報を統合することにより、射撃指揮装置ではかなり広範囲の戦場情報を得られることになります。
これにより、例えば誘導弾によって撃破した目標の映像を記録して損害評価に役立てる他、既に撃破した目標のマップを作成しておいて後続の部隊に伝達することによって、無駄な攻撃を避けることができるようになります。HEAT弾頭で撃破した際は、目標内部は破壊(=乗員)され、見た目は無事なように見えてもでも既に機能を停止している場合があるのですが、マップにより無駄な攻撃を避けることが可能となります。
96式MPMSが何台もの車両により構成されるのは、長射程のスタンドオフ兵器ゆえに求められる指揮統制能力と目標情報の収集ができるこの誘導弾ゆえの情報処理能力を求められるからでしょう。
さて、現在は96式MPMSの後継となる将来ネットワーク型多目的誘導弾システムの研究が行われています。これは、ユニットで行っていた目標情報処理等を指揮統制ネットワークに組み込むことによって得られるようにし、また誘導弾自身に自律的な目標捜索・識別能力を持たせることにより、大幅な省人化とコストダウン、リアクションタイムの短縮、機動性の向上をはかったものと推察します。
本年のblogの更新は今回で終わりです。今年1年間、当方の駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。そろそろネタ切れの感もありますが、来年も適当に続けたいと思っておりますのでよろしくお付き合いの程お願いいたします。
さて、来年が皆様にとって良い年になりますように。
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コメント
本当に一年間御苦労様でした
投稿: watakou | 2010年12月28日 (火) 03時02分
名前も見た目もやりたいことも似ているが、
官としてはあまり後継とは言いたくないとの由。
投稿: | 2010年12月29日 (水) 06時17分
将来ネットワーク型多目的誘導弾システムってアメリカのNLOS-LSと似てますよね
これと同じようなものを目指してるんでしょうか
投稿: | 2010年12月29日 (水) 12時11分
今年も興味深い話を色々聞かせていただき、ありがとうございました。
益々のご活躍、お祈りしております。
よいお年を。
投稿: 名無し二等空士 | 2010年12月31日 (金) 17時58分