パソコンケース内のエアフロー思想の誤り
近年しばらく読まなかったパソコン雑誌を手にして「なんだこれは」という記事が目に付いた。この夏場のパソコン雑誌ではパソコンの冷却と言うことを主眼を置いた記事が多かった。この中で特集記事やパソコンケース内の冷却について書かれたものには当然誤りは見つけられなかった。
パソコンケース内部の風向などは、自作をする人は間違いなく判っているはずであるから妙なことを書くと言うこともあり得ない。しかし、パソコンに関する記事を書いているWebサイトではとんでも無いことが書かれていたりすることがある。書いている筆者というのは多分、パソコンを組んだこともない人物????なのである。
ところが、パソコン雑誌でも「えっ」という妙な事が書かれていることがある。
それは雑誌「DOS/V」の「最新PC自作マニュアル」という毎回同じ記事を載せて一切変更が無いもの。
その中で、「手順3ケースに電源を取り付ける」である。
1、電源の装着位置および向きを確認する
「写真の説明」‥吸気用の穴があるので、吸気ファンを下向に設置した。
まずは、電源の装着位置および向きを確認する。
今回使用するケースは最下部に電源を設置するタイプで、底部に新鮮な空気を取り込む穴があいてるので、電源の吸気ファンを下向きに設置する。
この電源は何かと言えば
Antec EarthWatts EA-650GreenANTEC 環境に優しいGREENカラーの高効率650W電源 EA-650-GREEN という最近の一般的な電源。
この電源の冷却機能(下置き)というのは、吹き出しファンによって上部に熱を逃がし、メッシュになっているケース後部から「新鮮な空気」を取り込むようになっている。
ここでパソコン内の上部に噴き出すというのは、熱は上昇気流によって上部に行きやすいという常識的なものである。
ここで、雑誌DOS/Vの電源設置では、PCケース下部に熱風が吹き出し、その熱風を電源後部から吸い込むというおそろしく非効率なものである。
ここでの大きな間違いというのは、電源のファンを「吸気ファン」とわざわざ言っていることである。
ここで多分この記事を書いた筆者は、電源ファンが本当の「吸気ファン」で電源のメッシュ部分から熱風が噴き出すと思っているに違いない。
もしそうだとすると、電源は常に熱風に曝されるという結果になる。
(日経WinPCでもこんな程度の認識)
いろいろと検索してみたら「ケース底面に付ける電源の向きは上下どちらが正しい?(日経WinPC・記者)」と言う記事があった。
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110223/1030383/
記事を書くライターがこんな程度であるから驚くべきである。
この中でメーカーからの話があって
「編集部で議論したところ、PCケースの底面に穴が空いていれば、電源内部に空気を送り込むため、吸気ファンがある面を下に向けるのが正しいだろうという話になりました。」(間違い)
「電源ユニットやPCケースなどを製造しているCooler
Masterに尋ねたところ、PCケースの底面に穴が空いていない場合は電源ユニットの吸気ファン面を上に向けるのがお勧めとのことでした。理由はPC ケース内のエアフローを確保するのに加え、電源内部のエアフロー上も有利だからです。」
この話も記者がどういうふうに理解したのか、多分良く理解していないのに違いない。
「下向きが正しいと思っていた、底面に穴が空いているPCケースも、製品ごとに最適な方向が異なるという意外な回答でした。正しいと思っていた吸気ファンを下に向けると、外気を直接取り込んで冷やせるため電源の寿命を延ばせる利点があります。」(間違い)ここまでくると病膏肓に入るである。
吹き出しファンでは、外気が取り込めないだろう。
これはその昔にDellや一時撤退したGatewayが直感で設計した過ちで、DellやGatewayの電源というのは長持ちしなかった。
その昔秋葉原にあったGatewayのショールームのデスクトップパソコンは、電源から熱風が吹き出ていたというのは大笑いであった。
電源というのは常に外気から空気を取り込むための「吸気ファン」と言うのがあって、その昔のものは直接パソコンの外部に設置されていたのが内部になったと言うだけである。
Antec EarthWatts EA-650Greenなどの一般的な電源が吹き出しファンであることは、馬鹿馬鹿しいとは思ったものの動画にしてある。
従って、以前にマウスコンピューターのNEXTGEAR-MICRO im500BAxの内部エアフロー 図を示しておいたが、再度掲示するとこんなものである。
どこかのサイトの「NEXTGEAR-MICRO im500BAxの内部エアフロー図」では全く間違っているので注意した方が良かろう。
又、この問題が実はケースメーカーのプレゼンあたりの人でも何か勘違いしている節もあるものがある。
それは久しぶりに「ストームシステムテクノロジー」というBTOパソコンメーカー。
ここで「Dragonlord Kシリーズ PC-K62」のWebサイトへのリンクが貼ってあってPCケースのエアフローのアニメーションがでていた。
このエアフローは、ケースだけのエアフローは間違いない。
しかし、どうも電源を入れた感じのエアフローになっていて「電源ユニットホルダー採用」付近に電源をしめす点線と「PSU」の記載もある。なんと「フィルター付きの電源ユニット用吸気口」とまで書かれていて、雑誌DOS/Vの電源設置そのままである。
直感でしか物事を判断せず、実際のエアフローなり技術を理解しないと言うのは不思議なものである。
ここで再度「NEXTGEAR-MICRO im500BAxの内部エアフロー 」などを使ったので、マウスコンピューターなどのメーカーのプロのワザというものを再度見てみると言うのが自作を目差すものとして有意義である。
マウスコンピューターなどが一番嫌うものは「クレーム」である。メーカーとしてはユーザーが買って兎に角確実に動く、壊れないと言うのが必須である。
買っては見たものの起動しないとか、直ぐに壊れたではあの「ソーテック(総鉄屑とかクソーテックとの異名もあった)」の二の舞になってしまうからである。
それで、NEXTGEAR-MICRO im500BAxの裏配線 を見てみると、CPUクーラーにはIntelのリテールクーラーと同じプッシュピン方式を使っていない。
このクラスのメーカーだとCPUもクーラーもバルク品なのだが、バックプレート固定タイプを使っているところがプロのワザの一端を見ることが出来る。
by 書道家syuun
日経WinPC・DOS/Vも知らないPC…