線量計が鳴る中、紙おむつを穿いて 福島第一原発の岸壁に船を曳航した
(SAPIO 2011年8月17日・24日号掲載) 2011年8月25日(木)配信
海上自衛隊横須賀港務隊は、ふだん曳船(えいせん)(タグボート)で横須賀港などを出入港する護衛艦などを曳航したり、故障して動かなくなった船を移動させる業務に従事している。3月下旬、ある命令が下った。真水を搭載した米軍提供のバージ(はしけ)船2隻(1隻約1100t)を、福島第一原発敷地内の岸壁に接岸させろというものだ。原子炉内の冷却水を海水から真水に切り替えるため、大量の真水が必要とされたからである。
横須賀からいわき市小名浜港まで、多用途支援艦「ひうち」と「あまくさ」がバージ船を曳航。そこでポンプの設置作業を行ない、原発の沖合へ。そこからが横須賀港務隊の出番だ。
隊長の魚住亜紀生1尉が振り返る。
「4人の船長を含む28人で任務を遂行しましたが、長さ約55m、幅約15mのバージ船を曳航し、原発敷地内の岸壁に着岸させるのは、技術的にはいつもと同じ業務の範囲内。しかし、実際には想像以上に厳しい作業になりました」
隊員たちは、津波による海底の障害物に目を光らせながら、バージ船をゆっくりと岸壁に接岸させ、真水を陸に移すと、再び曳航して沖の補給艦に横付けし、また真水を入れて再び岸壁へ運ぶ作業を繰り返す。日頃作業している静かな湾内と異なり、この時の福島原発の沖合は波とうねりが激しく、作業は困難を極めたという。勝山真二准尉の話。
「船が上下左右に動く中で、乗務員が隣の船に乗り移ったりするのは大変危険です。船と船が激しくぶつかり合って、船体も少なからず損傷します。まさに命懸けの仕事でした」
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