神戸拘置所(神戸市北区)で06年1月に死亡した男性被告(当時29歳)の母親(64)が、「必要最低限の医療を受けられずに凍死した」として、国に約5400万円を求めた国家賠償請求訴訟で、神戸地裁は8日、国に約4300万円の支払いを命じた。矢尾和子裁判長は死因を凍死と判断し、「職員らが異常を認識し得たのに、医師の診察を受けさせなかった」と拘置所の過失を認めた。
判決によると、男性は04年12月に児童福祉法違反罪で起訴された。同拘置所に勾留中の05年末ごろから体調が悪化し、日記に「こごえる、ふるえ止まらない」などと記載。06年1月7日、顔や手足に凍傷を負った状態で死亡した。男性は公判で起訴内容を否認し、弁護人以外の接見は禁じられていた。
国側は「嘔吐(おうと)物を喉に詰まらせた窒息死」と主張したが、矢尾裁判長は▽独居房の窓が死亡前日から開放され、室温が氷点下だった▽死亡時の直腸の温度が致死的に低かった--などを理由に凍死と認定。房の監視カメラの映像から、男性が死亡前、ほとんど体を動かせない状態で嘔吐していたことも判明し、職員の注意義務違反を認めた。
男性の母親は「拘置所は『亡くなる10分前まで元気だった』と説明していた。裁判もまともに受けられない国とは一体何か。本人も無念だったと思う」と涙ながらに話した。【重石岳史】
神戸拘置所の岡田和治総務部長の話 主張が認められず残念。判決内容を十分検討し、関係機関と協議して今後の対応を考えたい。
毎日新聞 2011年9月8日 23時29分