この10年間、韓国国民は歴代指導者によって、北朝鮮は真の脅威ではなく、南北朝鮮の統一コストはあまりに巨額で、心配しないほうが無難と考えるように言い含められてきた。韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領はこのポリアンナ(楽観)的な見解を持っていない。従って韓国国民も持つべきではない。
李明博大統領が15日、北朝鮮の政治体制が崩壊した場合、北朝鮮を吸収するコストを賄うため、「統一税」を示唆したことで物議を醸したが、大統領の現実的な認識こそが実質的に価値のあるものだ。統一税構想は、最低限の準備だけで発表されたもようで詳細も未定だ。しかし、北朝鮮の最終段階について、避けては通れない公的な議論を進める条件を整えるものだ。
李明博大統領は既に自身を現実主義者だとしている。同大統領はまた、説明責任を果たさずに10年近く続いた無分別ともいえる対北朝鮮援助を終了させた。同大統領は、北朝鮮の金正日 ( キム・ジョンイル ) 総書記に対し、核開発を放棄すればマーシャルプランのような復興支援を行うと呼びかけている。同大統領は、念のために諜報活動を再開させたほか、朝鮮半島問題について日本や米国など同盟国に対して注意を向けさせている。3月に起きた乗組員46人が死亡した韓国軍哨戒艦沈没事件ついても、北朝鮮側の責任を追求している。
李明博氏の統一税構想は、北朝鮮政権にとっては挑発と受け止められる可能性が高い。しかし、統一コストに関する議論はずっと以前に進めておくべきものだった。韓国の歴代政府は、予想される北からの難民の大流入に対し、どこに収容すべきかといった問題など重要度の低い緊急対策計画は立てていた。しかし、他の多くの重要懸案は残されたままだ。例えば、北朝鮮の1人当たり所得をいかに早急に引き上げるか、統一のための支援はどの分野に振り向けるかといった問題だ。
一方、韓国は米国や日本などの同盟国や中国など近隣国との間で、特に統一コストの分担問題について協議を開始する必要がある。統一コストは数十年で500億~5兆ドルかかると見積もられている。李明博大統領には、韓国政府が統一に伴う財政負担の大部分を引き受けると最初に示唆することにより、他の関係国が財政負担問題に取り組みやすくする狙いもあるようだ。
李明博大統領の統一税構想をめぐる議論で、これらの問題の大半あるいは一部でさえも解決されない可能性が高い。この特別税は恐らく、統一に伴う財政問題を解決する上で最善の策ではないだろう。同大統領の最も賢明な統一財源確保政策は──実際にはそのように呼ばれていないが──法人税減税や、統一の衝撃を吸収できるほど十分に韓国を繁栄させるような施策であった。李明博は、新たな統一減税を提案したほうがいい。
しかし、税金に関する欠点がなんであれ、有益な手段であることは確かだ。その時期が来れば、韓国はこの問題をある程度検討したほうが得策だ。あたふたと対応しないで済む。韓国の友好国と近隣国も同様だ。