FILE158:「ニッポン奇祭列島」
2011年9月8日放送
9月13日(火)午前1:30〜<総合>再放送予定です。
ニュースや特別番組等の影響で、放送時間変更や休止の場合もございます。ご了承ください。
NHKオンデマンドで9月9日(金)午後6時〜配信予定です。
三隅治雄(民俗芸能学)・杉岡幸徳(奇祭評論家)
今回は全国からよりすぐった珍祭・奇祭を一挙紹介!クサーい泥を通行人やパトカーにまで塗りたくる不気味な妖怪(沖縄県宮古島)や、泣き叫ぶ子どもを袋に押し込め連れ去ろうとする顔なし河童(鹿児島県南さつま市)など、強烈キャラが続々登場する。
案内人は、民俗芸能を研究して60年、祭り研究の第一人者である三隅治雄・国立文化財研究所名誉研究員。奇祭を求めて東奔西走、300以上の祭りを見てきた奇祭ハンター・杉岡幸徳が、衝撃&笑撃映像を続々プレゼンする。
茨城県龍ヶ崎市では、「蛙男」が命綱もセイフティネットもなしの上空で驚異のアクロバットを披露し、秋田県男鹿市・潟上市では、牛に乗った意識不明のヒゲ男がヤマタノオロチを退治する。天狗とお多福が神聖な境内でくり広げる露骨な「アバンチュール」(奈良県明日香村)から、あるものの周りで踊る世にもシュールなおばちゃんたちの盆踊り(青森県新郷村)、おふざけコントも真っ青の、集落あげての葬式ごっこ?(埼玉県秩父市)まで、奇想天外、ア然ボー然のオンパレード。
お祭りに隠された深―い意味とは?変わった神様に人々が託してきた思いとは・・・?
三隅治雄(みすみはるお)
民俗芸能学・芸能学会会長
1927年大阪府生まれ。國學院大学国文学科卒。
折口信夫に師事し、東京国立文化財研究所芸能部長、実践女子大学教授などを歴任。
民俗芸能研究における第一人者。紫綬褒章受章。
杉岡幸徳(すぎおかこうとく)
奇祭評論家
1969年 兵庫県生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科博士課程中退。大学卒業後フリーのライターに。これまで日本各地300以上の奇祭を見てきた奇祭評論家。
今回の対戦内容
/爆笑問題
杉岡:(青森県新郷村の)「キリスト祭り」はたまらないですね。
田中:どういう見方をするんですか。
杉岡:むっちゃ感動しますよね。涙が出そうと言うか。シュールレアリズムの絵みたいな感じでね。
田中:ほんとそうだよ。あんなシュールな映像ないわ。
杉岡:「キリストの墓」とおばあちゃんの盆踊りを衝突させる。そこに「キリスト祭り」が生まれる。その瞬間、この世界が生まれ変わったような感動を覚えるわけですよね。
太田:これ日本独特ですか、こんな無茶なことをするのは?
三隅:「ナニャドヤラ」という非常に古い盆踊り、これと見事にくっつけながら…
田中:見事じゃないです、別に(笑)。
三隅:この不調和がお祭りなんです。
先生の対戦感想
三隅:大変楽しかった。爆笑問題さんは、自分の持っている知的な興味の中で次々と自由で率直な意見をどんどん述べておられるなと思いましたね。飾らないでね。
日本のお祭りの面白い側面、今まであまり語られなかったいろんな魅力の一面っていうのが、今日爆笑問題のお二人のいろいろ感想などを通じて、見る方によく伝わったのではないかなという思いがいたします。
杉岡:爆笑問題さんも大いに笑ってくれていたので、良かったなと思いますね。
印象的だったのは、要するに日本はいい加減だっていう話ですよね。いろんなもの、キリスト教だろうが何だろうが勝手に採り入れて、ぐちゃぐちゃにしてやってしまうと。もっといい加減に生きようじゃないかという、そういうメッセージを受け取った感じがしました。
爆笑問題の対戦感想
田中:面白かったですね。いろんな知らないお祭りがいっぱいあって。
ああいうお祭りが全国各地にいろいろあって、それぞれに盛り上がっているっていうのは、何かいい感じがしますよね。ホッとするというかね。
僕は東京生まれだから、お祭りと言っても、近所の神社の縁日みたいなものとかね、盆踊りぐらいのことしかないんですけど。それでもあれだけウキウキしたっていうのは何だろうと思うものね、今考えると。中学・高校ぐらいから興味はなくなっちゃったんだけど、子どもの頃は縁日とか、盆踊りの音が遠くから聞こえてくると、それだけでもすごいうれしかった。ああいうのが大人になっても、更にもっと強いのがあるっていうのは、ちょっとうらやましい気がしました。あんな熱狂する行事なんてないじゃないですか。日本独特な感じがするけれども、アナログな感じのものがずっと続いているっていうのはね、何かホッとするよね。
太田:ああいうお祭りっていうのはある意味理解不能というかね。分析すること自体ばかばかしいというか。あまり「意味」なんか考えてやっていないんだろうし。実際にそこでやっていることを、1個1個、「これはこの象徴で」とかって意味付けしても意味がないというかね。それこそ野暮っていうんだろうけど。
世界中どこでもそうだけど、「神」っていうイメージは、やっぱり「乱暴者」っていうのがあるんだよね。下手すれば人間よりも野蛮で、何をしでかすか分からない、みたいな神様がいて。で、そういう野生に近いようなものをなだめて、ヨイショしておだてて、それと同時にばかにもして。何か茶化して、普段の恨みも忘れるというか。何かそういうもののような気がしましたね。
ディレクター観戦後記
日本には、こんな変な?お祭りがこんなにたくさんあるのか…。
それが、各地から取り寄せたVTRを見たときの私の素直な感想です。笑いをこらえきれず、職場でゲラゲラ笑ってしまいました。
今回とりあげたお祭りは、決してメジャーではありません。派手な観光資源というわけでもないのに、何百年も前から営々と続けられてきたのは、地元の方自身も、奇祭を大いに楽しみ、愛しているからではないでしょうか。
「不謹慎」を笑い飛ばす、日本人の大らかさに心を癒されました。
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