止まない雨はない
テーマ:ブログこの数日間、雲の隙間に青空が見えることもなかったんですが、
止まらない雨も止み、久しぶりに青空を見ています。
昨日は、亡くなった栗城隊のテンバさんのご家族とも会い、
今後のことについても話し合いました。
遺体の損傷が激しく、まだ識別に時間がかかるそうですが、
確認できしだい葬儀を行うことになりました。
24日の事故で、
こちらが入手している情報と今の気持ちを書かせて頂きます。
24日は朝から大雨でした。
カトマンズに着いてから、エベレストの玄関口ルクラに向けて
飛行機は4日間飛んでいませんでした。
飛行機自体も10日間飛んでいなかったそうです。
当日は、大雨でしたが飛行機が飛ぶということで
我々はタラエアーをチャーターしており、それに乗りました。
墜落したアグリエアーが一番最初に飛び、
我々も滑走路に入ったところでルクラの空港が悪天候で閉鎖したため、
飛行機が元の場所に戻り、再び空港待合室に戻りました。
その後、通訳のチェトさんから
一番最初に飛んだ飛行機が戻ってこないことを聞き、
そこに僕のシェルパのテンバさんが乗っていることがわかりました。
栗城隊は荷物が多いためタラエアーに変更し、
飛行機を2機チャーターする予定でしたが、
一番最初に飛んだアグリエアーに空席が出たために、
テンパさんが一番乗りを考えて乗っていたと思われます。
テンバさんは何事も率先して行く人でした。
ダウラギリ、チョモランマ、アンナプルナと
3回僕の遠征に参加してくれた一番強いシェルパです。
年齢は僕のひとつ上でした。
テンバさんは、僕の中継やエベレストの夢を一番理解しているシェルパで
単独・無酸素の危険性も知っている人です。
隊長になにかあれば助けにいくと、
だれよりも率先して動いてくれるシェルパでした。
23日も集合時間が午前4時45分にも関わらず、
午前3時間から準備をしてくれていました。
テンバさんの夢は日本に行く事でした。
エベレストが終わったら日本に招待するよと約束していて、
家族にもそのことを伝えていたようです。
そんなテンバさんに感謝の気持ちをこめて
高所用の電池不要の腕時計をプレゼントする予定でした。
他のシェルパの前で渡すと嫉妬を受けるので、
ベースキャンプでこっそりと渡すつもりでしたが渡せなくて本当に残念です。
アンナプルナの時、7200m地点で僕が体調不良でアタックをやめて
一晩苦しんでいたら、キャンプ2から一気にテンバさんが救助に向かってきました。
重い酸素ボンベを背負って登って来たのに、肝心のマスクがない。
そして、第一声が「隊長。山頂が見えるよ。山頂バックに写真を撮ってくれ」と
調子の悪い僕にカメラを渡しました。
天然なのか、気の効いたジョークなのかわかりませんが、
今回のエベレストはテンバさんにとっても夢だったのです。
昨日、渡せなかった腕時計はテンバさんの弟に渡しました。
彼もまたシェルパです。いつか僕の隊に参加するかもしれません。
また、空港には日本人の林さんがいました。
林さんは空港で会ったばかりの青年でした。
僕が座っているベンチの向かいに座っており、
現地の日本人から僕の噂を聞いたらしく話しかけられました。
「どこからの来たの?」
「横浜です。大学一年です。」
「どこまでいくの?」
「エベレストのベースキャンプです」
「僕と同じだね」と答えました。
林さんは冒険という世界に興味があるらしく、
どうやってこれまでやってきたのか色々と聞いてきました。
「いつから始めたのですか?」
「君と同じ大学1年からだよ」
「いくつですか?」
「28です」と言葉数は少ないが、
何か大きな夢を掴もうとしてる好青年でした。
最後に僕の名刺を渡し、「なにかあったら連絡を下さい」と伝えた時に、
アグリエアーのアナウンスが流れ、
「お先に行ってきます」と言って足早にゲートに向かって行きました。
事故後、林さんのご友人からも問い合わせがきており、
できる限りの情報を集めてお伝えしました。
現地の情報では、当時の視界は2000mで
1600m以下の場合は離陸をやめるようです。
アグリエアーはルクラ空港閉鎖でカトマンズ上空に戻り、2回周回しました。
その後、カトマンズの南85キロ地点の村で墜落しました。
通常のモンスーンでは、飛行機が飛べなくても3日間ぐらいで晴れるようですが、
10日間連続で晴れないのは珍しいようです。
気象予報士によると、北半球全域が高温で雨量が多い
ラニーニャ現象が関係しているのではという見方もありますが、
アグリエアーの最後の無線が「エンジンが故障した」という言葉を最後に
無線が途絶えたそうです。
詳しい事についてはブラックボックスの回収とエンジンを回収して
調査委員会の調査結果を待つしかないです。
実は4日前には、墜落したアグリエアーの
同じ機体同じ機長に乗っていっていたようです。
ルクラ着陸3分前にカトマンズに引き返し、
僕らは無事にカトマンズに降りました。
その時に何か異常を感じるものはありませんでした。
登頂よりも全員無事下山が僕の目標でした。
しかし、山じゃないとはいえこのような結果になり、本当に辛いです。
でも、落ち込む僕を励ましてくれたのは同じシェルパの仲間や隊員からでした。
そして彼らから是非、登ってほしいと言われました。
気持ちではわかっていてもこんなにエベレストが遠く感じたのは初めてで、
登るこすらできないと思っていました。
本当は僕が逆に励まさないといけないのに。
彼らは、絶対にやろうと言ってくれました。
テンバさんが生きていたらどう思っていたのだろう。
まだ気持ちが山に向かっていないですが、
テンバさんの写真を持ってエベレストの山頂に向かいます。
そして、テンバさんの代わりに残された家族に
精一杯のことをしてあげたいと思います。
降り止まない雨はありません。
今、青空が徐々に見えるように僕の心の曇りもいつか去り、
そして、雲の向こうの頂に向かえるようテンバさんの力も借りたいと思います。
亡くなられたテンバさん、林さん、14名の方に心からご冥福をお祈り致します。
ナマステ。
写真1
現在のカトマンズ上空の様子。青空が少しづつ見えてきました。今日、隊の荷物がルクラに飛び、無事に着陸したそうです。
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2010年春のアンナプルナ遠征のドキュメンタリーが
いよいよ地上波での放送されますので、お楽しみに!
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