RG400Γのレストア記録

 

 

 新規登録から18年を経過した車輌ではあるが、部品供給に関しても特に問題がない(一部パーツを除く)ことから、レストアなどと言う大げさなものではなかった。
 カスタムはレストア終了後から着手する予定である。

 

15年12月
 
実家のガレージに車体が届く。
 
HK31A106***の車体番号から2型と判明、また、ロータリーディスクバルブの形状からエンジンも2型である。スピードメーターが取り外されており、走行距離は不明。
 
画像では見ていたが、実物の塗装は画像以上にひどい状態であった。
 また、
左右ともに新しい転倒の痕跡があり、特に右側がひどい。タイヤは前後とも新品に近い状態のダンロップアローマックスを履いているが、サイドがベトベトに溶けていることから、おそらくサーキットでのスポーツ走行中にハイサイドにより転倒した車体と思われる。
 
車検は16年11月中旬まで残っているので、なんとか春までに復活させる。

 

16年 1月
 年末年始の休み中に、塗装の剥離をする

 樹脂パーツの塗装部分は、何重もの重ね塗りのため塗膜が非常に厚く、ちょっとやそっとでは剥離できず、スクレーパーでの削り取りとサンドペーパーでコツコツ落す。(サンドブラストは摩擦熱で樹脂が溶けてしまうため不可)
 特にテールカウルは他の部分と異なり、粘性のある塗料(耐熱塗料みたい?)のため時間がかかった。

 

剥離前

剥離後(元は青白だった)

16年 2月
 エンジン始動を試みるが、かかりそうな音はしても、かからない
。ガソリンタンクを外し、プラグキャップに予備のプラグを取り付けスパークテストをしたところ3番・4番(後ろ側)の火花は飛んでいるが、1番・2番は飛んでいない。イグニッションコイルを交換してテストすると正常に火花が飛ぶことからコイルの不良と判断する。(後日調査したところ、プラグキャップとコードとの接続不良と判明。
 清掃のためキャブを外すが、勢いがついてしまい、そのままの車体をバラシ始め、とうとうエンジンまで降ろしてしまう。
 ただし、1人での作業だったため、フレームから重いエンジンをパズルのように降ろすのには、1時間近くかかってしまった。
 各部の破損状況が判り、どんどん憂鬱になっていく

 

ハゲタカ?

勢いでエンジンまで

燃焼室はそうでもないけれど...

排気口はカーボンだらけ

4気筒とも同じような状態

カーボン付着

サイレンサーと接触しスイングアームに穴

クラッチレリーズピニオンが中でガタガタ

 エンジンを降ろす際にシリンダーヘッドを外していたので、簡単に腰上オーバーホールをすることにし、消耗部品を発注する
 まずは、作業しやすい後方(3番、4番)のシリンダーから外していく。1シリンダーに6本のスタッドボルトがあるため、シリンダー固定用のヘキサゴンボルトを緩めるのに苦労し、とうとうスタッドボルトリムーバーを購入してしまった。
 このスタッドボルトリムーバーは、一度使ったらダブルナットなんかだるくてやる気が起きないほどの優れもの。でも。使用頻度は低いかもしれない。
 シリンダーを固定しているヘキサゴンボルトを抜くとゴムハンマーでシリンダー周辺を軽く叩き、排気ポートからウェスをピストンとシリンダーに噛ませて、キックアームをキックするとシリンダーが抜けてくる。はずだが、なかなか抜けてこなかった。
 3番、4番を無事に外し、1番、2番シリンダーに移る。こちらは比較的外しやすかったが、2番のピストンスカートに無数の深い傷ができていた。傷には砂粒がくい込んでいることから、転倒時に吸気ダクトにできた穴から吸い込まれた土砂がシリンダーとピストンの間に入ったことが原因と思われる。更にシリンダーにも深くはないが傷が確認できたた。また、2番キャブのオイルチェックバルブが壊れているようで、シリンダー内に2ストオイルが溜まっていた。
 ピストンのクリップリングをラジオペンチで取り外し、自作のプーラーでピストンピンを抜く。
 2番気筒はクランクケース内に砂粒が残っている可能性もあることから、腰上オーバーホールの予定を変更し、
クランクケース内の消耗部品を追加発注する。また、シリンダーにダメージがあったことから、0.5mmのオーバーサイズピストンキットを前側2個発注する。

4と書いてあるけど3番シリンダー

排気バルブは固着してました

サブチャンバー内はカーボン堆積

自作ピストンピンプーラー

2番ピストン

深くはないがシリンダーに傷

原因はここから入った土砂

クランクケース内はオイルだらけ

ガレージ

燃焼室は...

ここまで磨く

洗浄後のシリンダーとヘッド

 2型のスペアエンジンを1基入手する。外観はこちらの方がきれいだが、先に手をつけたエンジンを完成させるため部品取りとする。ボーリングする経費がないため、2番気筒のシリンダー及びピストンはこのスペアエンジンから調達する。また、ガタガタのクラッチレリーズピニオンも、クランクケースカバーごと交換で修理した。
 
シリンダーヘッドのサブチャンバー内のカーボン堆積がひどいため、パーツクリーナーを満たして一晩置く。マイナスドライバーで突付くとすごい量のカーボンが落ちてきた。多分、サブチャンバー内の3分の2は詰まっていたと思われる。
 燃焼室は軽いブラッシングできれいになったが、ざらつきがあることから#500、#800の耐水ペーパーで研磨し、ピカールで磨き上げる。ピストントップも同様に磨く。どちらも鋳造品のため鏡面までにはならないが、そこそこ光るようになった。
 キャブレターも1日1個のペースで、仕事から帰るとバラして磨いた。外観はオイルまみれだったため腐食が
発注しておらず、内部もきれいな状態で、特に問題は無かった。シリンダーは上下ともガスケットの残りカスをスクレーパーで削り取り、細目のオイルストーンで仕上げた。クランクケース側も同じ作業を行う。
 
発注していた消耗部品が入荷するが、ヘッドガスケットが欠品でバックオーダーとなってしまった。ちなみにヘッドガスケットはオートリメッサの取り扱いができるショップでないと入手できないようである。また、オーバーサイズピストンセットとノーマルサイズピストンリングセットが結構な価格のため、追加で発注を考えていたクランク大端部のベアリングなどが発注できなくなってしまった。資金に余裕があれば、クランクの芯出しも考えていたのに...。
 欠品のヘッドガスケットを求めて、ワイドホイールカラーを購入した
ミドルクラスに問い合わせたところ、2セットあった在庫から貴重な1セットを分けてもらうことになった

 

16年 3月
 
前後の足回りをバラし、洗浄しながら今後の使用に耐えられるか点検する。
 スイングアームは穴の開いた本体のほか、ピボット部のカラーやニードルベアリングもボロボロになっており、全く使用できない状態であった。これは事前に入手し、グリスアップしていた中古品を装着する
。リアサスは抜けていないので、ワイヤーブラシで錆を落してから真鍮ブラシで磨く。ホイールはケミカルで磨いてから装着し、リアブレーキのエア抜きをしておく。
 フロントフォークは比較的きれいで、可動部に錆はなく、クランプ部分に若干の点錆が発生している程度のため、#800の耐水ペーパーで錆を落してピカールで磨く。ステム部を分解すると下側のローラーベアリングに錆が発生して赤茶色になっていた。洗浄したところベアリングに目立ったダメージが見られないことから、ベアリンググリスをたっぷり塗って組み立てる。
 前後のホイールもグリスアップして装着する。フロントのディスクローターは磨耗が激しく、厚みは限界値4mmを大きく下回り3.4mmであったため要交換である。

リア廻り組み立て

作業風景

フロントフォーク&ホイール

錆だらけのステムベアリング

 クランクケース割りをする予定で部品を発注していたが、本業が忙しくなり時間を取れなくなってきたのと、資金不足を理由に断念する。問題の2番気筒は、エンジンを逆さにしてクランクケース内に溜まったオイルを抜き、徹底的にエアを吹きかけた。4つのクランクケース内の清掃を終え、組立工程に入る。
 それぞれのコンロッドにピストンを取り付け、シリンダーを嵌め込む。ここでの注意点は、ピストンの取り付け方向とピストンリングの合口がずれないようにシリンダーに挿入することである。ピストンリングは指で押し付けて挿入した。シリンダーが独立しているため作業は簡単である。
 シリンダーを組み終えたところでフレームに搭載する。
降ろす時に非常に苦労したエンジンであるが、スタットボルトをはずしていたため、大した苦労なく搭載できた。スタッドボルトを取り付けてからガスケット、シリンダーヘッドを載せ、ナットを規定値で締め付けて終了。

 

16年 4月
 ゴールデンウイークの完成を目指して、仕事から帰ると配管、配線
小物パーツの取り付け、調整等細かい作業をサービスマニュアルを見ながら進めていく。
 チャンバーはエキパイ内部のカーボンをマイナスドライバーで突付き落す。これだけでかなりの量が落ちた。さらに、ネットで購入した強力洗浄剤でチャンバー内のカーボンを除去する。熱めお湯に規定の量を溶かし、出口をビニール袋で塞いだチャンバーに流し込む。チャンバー4本に約20リットル入った。反応にはある程度の温度が必要なようなので、これを太陽の当たる壁に立てかけて置く。夕方、チャンバーをひっくり返すと、コーヒー色に変色した洗浄剤と多数のカーボンの塊が出てきた。水道水で色水が出なくなるまですすぎ、立てかけて乾燥させた。なんとなく軽くなった気がする。外側は錆をワイヤーブラシで落し、耐熱塗料をスプレーする。
 チャンバーが付いたままのオイル交換は、結構面倒なため取り付け前にギヤオイルを交換しておく。また、程度の良いフロントブレーキローターを入手することができたので交換する。フロントカウルと下側サイレンサーは現在入院中の500Γのものを取り付ける。

 

16年 5月
 連休中、部品取用にエンジンレスの400Γを入手する。前後ともRGV250Γ(VJ22)の足回に換装してあるので、カスタムにはこれを利用する予定である。フレームはアルミ錆がひどいが歪み等の問題はない。エンジンは1基持っているので、時間とお金があればもう1台再生できる

 連休明け、いよいよエンジンを始動する

 オイルポンプのエア抜きを行い、ガソリンタンクに30:1の混合ガソリンを作る
。オイルホースは、中間にスクーター用のチェックバルブを取り付けたことから、ホース内のエアが抜けたことを確認してから接続する。プラグ穴よりスポイトで各気筒5ccの混合ガスを注入し、プラグを取り付ける。タンクを取り付け、各キャブのドレンボルトを軽く緩めてガソリンが来ていることを確認する。チョークレバーを引き、キーをONにしてキックすると一発で始動した。組立時に塗布したオイルのためガレージ内が白煙だらけになった。
 エンジンが暖まったところでチョークを戻し、軽くレーシングするが、タコメーターが動かない。また、ウインカーが動作せず、その他の灯火類も暗く、エンジン回転数により不安定である。
バッテリーレス仕様を改め、バッテリーを搭載してみるが変化は無い。電装系は後回しにして、4本ともきっちりオイルが吐出していることを確認してから、オイルホースをキャブに接続した。
 翌日、テスターで電装系のチェックを行う
。結果は、なんと...ただのヒューズ切れ!メイン(1個しかないけど)の20Aヒューズを交換してエンジン始動すると、ウインカー以外の灯火類は全て正常に動いた。それにしても、ヒューズが切れてもエンジンが動くとは..。灯火類が暗く不安定だったのは、レギュレーターで整流されていない交流がハーネス内に流れていたためと思われる。
 タコメーターは、イグニッションコイルからの信号線の断線と判明。よく見るとメーター側のギボシ端子部分で切れていたので、新しい端子に付け替えたところ動き出した。また、ウインカー以外の灯火類が正常になったことから、リレーの不良を疑い、部品取車のリレーと交換するとウインカーは正常に動作した。
 エア抜き実施後もブレーキのタッチが改善されないことから、フロントブレーキのオーバーホールを行う。キャリパーを取り外し、ブレーキバッドの間に2〜3mm程度の板材を入れ、ホース取付口からエアを吹き込む。エアの力によってピストンが押し出されるが、4個あるピストンの1個が出てこない。ピストンとワイパーの隙間にシリコンスプレーをたっぷり噴射し、何回かエアを吹いてようやく出てきた。次に、ブレーキパッドを取り出し、今度は5〜6mm程度の板材を入れてエアを吹く、これで4個ともピストンが取り出しやすい状態になる。以前CRMで経験したことだが、板材を入れてストッパーの役割をさせないと、ピストンが1個飛び出した時点でそこからエアが抜けてしまうので残りのピストンを取り出すのに非常に苦労する。
 ピストンを取り出しやすい状態にしたキャリパーをフロントフォークに取り付け、キャリパーの左右を組み合わせているボルトを緩めてキャリパーを分割する。ピストンを取り出し、ワイパーとオイルシールを外せばキャリパーの分解が完了。後は、ワイパー部分に溜まったスラッジを掻き出し、キャリパー全体をブレーキクリーナーで洗浄する。ピストンはプライヤーか何かではさんだ傷があり、そこから錆が発生していたため、ヤスリ→耐水ペーパー→コンパウンドで修正、研磨した。
 ワイパーとオイルシールを発注したところ、オイルシールが廃番となっていた。8個のうち6個は再使用できそうなので、部品取から2個調して組み立てる。ブレーキ回りを取り付けエア抜きを行うが、相変わらずタッチはスポンジー。

ブレーキキャリパー分解

磨き上げたピストン

デイトナ赤パッド

 

 北海道前哨戦ツーリングを欠席し、バイク屋でブレーキを点検してもらう。結果、内側と外側のブレーキパッドの磨耗量の違いによりディスクとの隙間が均一でないことがわかった。つまり、先に内側のパッドがディスクに接触し、さらにブレーキレバーを握りこんで外側のパッドが接触してディスクを挟み込む状態になっていた。原因は、磨耗によりディスクローターを交換した時にパッドも交換すべきものをケチって再使用したため。
 ブレーキパッドを発注し、ピストンリングの慣らしのため高速道路に上がり、80km/hで30分程度流す。復路は速度を上げてみる。田舎の高速なので少々ブレーキが効かなくても問題ないはずだが、怖くてメーター読み180km/hでアクセルオフしてしまう。
 家に帰ると、チャンバー内のつまりが吹き飛んだのか以前よりも、アイドリング音がはじけるような良い音になり、レーシングしたときのアクセルのツキも良くなっていた。

 

16年 6月
 月初めに都合により作業中断するが、ブレーキが治ったことからバイク通勤になる。エンジンはレスポンス、始動性とも絶好調である。ただし、外装は各パーツが色違いのためブラックジャックのような状態。
 19日、20日と北海道前哨戦ツーリング第2弾へシェイクダウンを兼ねて参加。2日間とも雨だったが、天候に関係なく快調であった。

入手時

レストア後

(ツーリングのためサードカバーなし)

 

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