ちまたの旬な話題から、日本の未来像を問うテーマまで。


ゴビンダさんの再審はかなうか〜東電女性社員殺害事件の新展開 - どん・わんたろう

マガジン9

 その結果――、被害者の女性の体内に残っていた精液から2人分のDNA型が検出された。一つは被害者の型だったが、もう一つはゴビンダさんや事件当夜にホテルで性交した常連客の型ではなかった。そして、それは現場の室内にあった陰毛のDNA型と同じだった。つまり、ゴビンダさん以外の、今まで浮上していなかった男性が、事件発生と極めて近接した時点に、しかもおそらくこの部屋で、被害者の女性と性的関係を持っていたわけである。

 前述した通り、2審判決は「被害者が、ゴビンダさん以外の男性とこの部屋に入るはずはない」と認定し、有罪の大きな根拠にしていた。今回のDNA鑑定の結果によって、その前提が崩れるわけだ。「証拠上、ゴビンダさんが犯人だという可能性がゼロになったわけではないが、相当に薄まった。比較すれば、今回新たに浮上した男性の方が疑わしい」と客野さん。「証拠としての新規性は十分あり、新旧の証拠を併せて判決に合理的な疑いが生じたのだから再審を開始すべきだ」と訴えている。すぐに再審を始めて、審理をきちんとやり直すべきだと思う。

 ところで、今回のDNA鑑定の結果を読売新聞が特報したのは7月21日付朝刊だった。しかし、この時点では鑑定書は東京高裁に提出されておらず、弁護団は内容を全く知らなかったそうだ。要するに、検察側が読売にリークしたらしい。自分たちに不利な鑑定結果なのに積極的に報じさせるってのは、何か意図があってのことじゃないかと訝ってしまうよね。

 読売の記事をはじめ、後追いしたマスコミ各社に、検察は「再審開始に必要な新規性、明白性がある証拠とは言えない」「無罪に直結しない」というコメントを流し続けた。これに対して、正式の鑑定結果を見ていない弁護団は当然、具体的な反論をなし得なかった。検察のリークは、弁護団に先んじて世論形成してしまうためだったのではないか。そんな見方も出ている。

 DNA鑑定書が正式に提出された後の8月10日に開かれた、裁判所、検察、弁護団による三者協議で、検察は鑑定の信用性についての意見を保留し、その後、9月16日までに意見書を出すと伝えてきたそうだ。弁護団も9月中に最終意見書を出す方針を示しており、客野さんは「10月5日の次回・三者協議で再審開始の見通しが示されるのではないか」と期待をもって話していた。「支える会」は9月14日に緊急集会を開く。

 ところが、本稿があらかた完成した段階で、さらに新たな動きが出てきた。

 「検察が、これまで開示していなかった約40点の物証についてもDNA鑑定を実施する」と報道されたのだ。被害者の胸から検出された唾液(読売新聞)や、被害者の首を絞めた時に付着したとみられる皮膚片(東京新聞)が含まれているという。中でも、胸の唾液の血液型はゴビンダさんとは異なり、新たに浮上した男性と同じだそうだ。

 東京新聞の取材に、検察幹部は「結果が冤罪を主張する弁護側に有利になる可能性があるとしても、鑑定すべきだと判断した」と話している。額面通りに受け取りたいところだが、これらの証拠を今まで隠し続けていた検察をにわかに信じられないのが、つらいところではある。「狙い」があるのでは、と勘繰ってしまう。

 いずれにせよ、新たなDNA鑑定の結果が出るまでの半年間、おそらく再審開始の決定は出ず、ゴビンダさんは獄中に閉じ込められ続けることになりそうだ。検察や裁判所が、今後の再審請求審に真摯な姿勢で臨むよう求めて、DNA鑑定の結果を聞いたゴビンダさんの手紙の一節を紹介する。

 「DNAじっけんで私は無実であること明らかになっても、私は刑務所にいなければいけない、なぜですか? 本当に辛い悲しいです」「もし本当に悪ことしたのなら、しかたありません。でも、私は刑務所に入れられるような悪いこと、絶対に絶対にやってないのです。14年間、人生の一番いい時期、無駄になりました」
12

注目のテーマ

たばこ増税、1箱700円も視野に

小宮山洋子厚生労働相がたばこ増税を示唆。700円までは値上げしても税収が減らないという。

台風12号、平成最悪の被害に

死者・行方不明者は100人を超え、台風災害としては平成最悪となった。

野田内閣が正式スタート

「適材適所」とは言うものの、閣僚人事は派閥均衡型となった。

BLOGOS 編集部

» 一覧

BLOGOSをスマホで見よう

スマートフォン版
アプリ版BLOGOSをダウンロード(無料)
ケータイ版
QRコード
携帯サイトのQRコードはこちら
http://m.blogos.com/

BLOGOS メルマガ

震災復興 関連情報

close なぞり検索

検索リスト

この機能をOFFにする