東京電力福島第1原発事故後の風評被害に苦しむ福島県の農家を支援しようと、福岡市内で17日に予定されていた「ふくしま応援ショップ」の開店が7日、取りやめになった。企画者側によると、計画発表後に「福島のトラックが来るだけで放射能を運んでくるだろう」といったメールや電話が相次いだことが原因という。新たな出店先を探すが、被災地を応援しようという試みに水を差された。
「応援ショップ」は福岡市西区の商業施設「マリノアシティ福岡」内の農産物直売所「九州のムラ市場」の一角約20平方メートルに開設する計画だった。ムラ市場関係者によると、メールや電話は約20件で「出店をやめないなら不買運動を起こす」や「危ないものを売るとはどういう了見だ」などの内容も含まれる。ショップの運営主体で生鮮品宅配などを行っている「九州産直クラブ」(福岡市)にも同様のメールが約10件送られているという。
ムラ市場によると、産直クラブは国の暫定規制値の10分の1まで放射性物質量の基準を厳格化し検査結果は店頭で開示。生鮮品の取り扱いはやめ、震災前の原材料を使った加工品だけを販売する方針だったが、7日に関係者で協議し異論も出たため見送りを決めた。
産直クラブは「こんな事態になるとは予想していなかった。安全性は検査した上で消費者に判断してもらいたかったが、非常に残念」。ムラ市場側は「メールの内容はいわれのない話で、とんでもないことだが、他のテナントに迷惑を掛けるリスクがあった。違う形で支援したい」と説明した。
ムラ市場と産直クラブは正式な店舗使用契約は結んでおらず、ムラ市場に出資しているマリノアシティ運営会社の福岡地所は「出店の合意形成ができていたとはとらえておらず、メールなどの苦情は判断材料ではない。被災地支援は企業としてこれまでも行ってきた。収益性の観点からもムラ市場は九州の生産者支援に力を注ぐべきだ」としている。
=2011/09/08付 西日本新聞朝刊=