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東北の野菜や肉についての正しい考え方

植草一秀の『知られざる真実』
中部大学の武田邦彦教授が大阪読売テレビのローカル番組「たかじんのそこまで言って委員会」に出演して東北地方の農産物について発言した内容が問題視されている。
 
 武田氏は「一関には放射性物質が落ちている。子どもは東北の野菜や牛肉を食べたら健康を壊す」と発言したと報道されている。
 
 武田氏の発言に、事実と異なる部分があるなら、武田氏は訂正するべきだが、この種の発言に対して、言葉狩りのような対応を示すことは正しくないと思う。
 
 これは、原発事故発生当初から生じている問題で、私も本ブログで何度も取り上げてきた。事実無根の不安心理を煽る発言は当然のことながら示すべきではないが、低線量被曝と内部被曝のリスクに有無については、学術的にもまだ完全な回答は得られていない。大丈夫だとする説もあれば、低線量の被曝でも影響を受ける人が存在するとの説もある。
 
 しかも、ヨウ素131やセシウム137、あるいはストロンチウム90、プルトニウム239などの子どもの健康への影響は10年ないし20年経たないとはっきりしないとの学術的な報告もある。住民への影響を考慮するに際して、これらの影響を慎重に吟味しようとする姿勢は称賛されこそすれ、避難の対象とするべきものでない。また、多くの放射性物質の半減期は長く、飛散した放射性物質の影響は長期に残存する。
 
 消費者が絶対安全なものだけを摂取したいと考えるのは当然のことである。この消費者の姿勢を誰も非難することはできない。
 
 他方、農林水産物の生産者が、原発事故による放射能放出によって、生産物が販売不能に陥ったり、販売が振るわずに価格が下落して、売上金額が減少することについて、心配したり、怒ったりすることも当然の反応である。
 
 この農林水産物生産者に、出荷許可を出しているのだから頑張って売れと言い放って、何らの救済措置を取らないことは不当である。

武田教授の発言の基軸は、放射能汚染に対して、慎重のうえにも慎重を期すべきであるとの基本姿勢を示したものであり、個別事案について事実と異なる部分については、もしそのような部分があるなら訂正と謝罪が必要だが、基本姿勢そのものは間違ったものではない。
 
 このような発言に伴い、安全を重視する消費者の行動が間違っているとの空気が醸成されることは不当である。このことは、原発放射能放出事故を発生させた責任が電力事業者にあるにもかかわらず、放射能汚染による被害の責任が安全を重視する消費者に転嫁されてしまうとの、根本的な誤りを生み出しかねない。
 
 実際に、これまでの事実経過を振り返ってみても、政府の発言をそのまま信用するわけにはいかないのだ。「市場に流通する農林水産物は、絶対的安全を確保したものだけである」と政府は繰り返し発言してきたが、実際には、流通して、消費者がすでに摂取してしまった後で、牛肉にしても野菜にしても、規制基準値を超えるものが流通していたことが何度も判明している。
 
 この点を踏まえれば、政府の示す「安全」は原発そのものの安全と同様に、「絶対安全」ではないのだ。

『週刊ダイヤモンド』2011年9月11号タイトルは
「汚れるコメ 食卓に迫る危機の正体」



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 である。28ページから63ページまで、巨大特集が組まれている。その冒頭には、「放射能汚染への懸念から、安全性に疑念の目が向けられている」との記述がある。

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