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[ライフ]ニュース トピック:天気・気象
【台風12号】命綱は世界遺産の土産物まんじゅう 空腹の子供らに提供
世界遺産・熊野那智大社の近くに広がる和歌山県那智勝浦町市野々地区。台風12号で県道が寸断されて車の通行ができず、孤立状態が続いた。6日に迂回路(うかいろ)が開通するまでの間、住民らは土産物店が“配給”した商品で命をつないでいた。商品を提供した菓子製造販売「ねぼけ堂」社長の上原善夫さん(41)は、「あの状況なら、誰もが同じことをしたはず」と振り返る。
同地区は熊野那智大社へ向かう県道の脇に住宅地が広がる。普段は多くの観光客らが通過する地区だが、県道が寸断されると町から食料品などの配給はなく、住民らは町の中心部まで徒歩で数時間かけて買い出ししていた。
だが、高齢者や子供は身動きがとれない。道路沿いに並ぶ土産物店には5日昼ごろから、空腹を抱えた子供たちが訪れるようになった。ある店の男性従業員は、「小学生くらいの子供が『おじさん、食べ物がない』とひもじさを訴える光景は切なかった」。冷蔵庫にあった魚類やお菓子類などの商品を手渡したという。
こうした店舗の経営者の多くは地元ではなく、町の中心部で生活していたが、雨の止んだ5日には、従業員を引き連れて次々と店に戻り始めた。「ねぼけ堂」の上原さんもその1人。5日、「自転車に乗って、膝上まで水につかってロープを伝いながら」店に入り、住民が食料に困っている状況を知って、店内に陳列していたまんじゅうや餅などの菓子数百個を住民に配った。「高カロリーでおなかも満たせると思った」と上原さんは振り返る。
地区には那智川の氾濫で建物が損傷した店舗も多いが、従業員らは傾いた建物で寝泊まりしながら、住民に食料を配って店の復旧に向けた作業を進めている。住民の峪育(さこいく)さん(66)は、「土産物店の商品が私たちの命綱になった。社長さんたちには本当に感謝している」と話していた。
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