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「津波を語る」被災者の笑顔の陰に…

産経新聞 8月17日(水)7時55分配信

 仙台の知人から「みやぎ民話の学校」開催の案内状が届いた。震災で一度は中止を決めたが、被災した語り部から主催者側に「生きている限り、語っていきたい」と申し出があり、今月21、22日に宮城県南三陸町で行われる。7回目の今回は、被災した語り部6人の体験談を中心に「津波を語る」という。案内状には、大震災で形あるものを根こそぎ奪われた今、心に刻んだ思いを語ることで、再び立ち上がろうという力がうまれるのではないか−とあった。

 一方、“津波の語り部”として知られる岩手県宮古市の田畑ヨシさん(86)。昭和8年の三陸津波の体験を紙芝居にして、30年以上にわたり語り継いできた。そんななか再び被災。田畑さんは、避難生活にもかかわらず「これからも津波の怖さを語り継ぐ」と、読み聞かせを再開したという。

 悲しみや怖さを正面から受け止めたうえで、明日(あす)に向かっていこうとする年老いた語り部たち。そのたくましさには、心が動かされる。

 5月から産経新聞社の被災地支援活動「未来塾」がスタートした。著名人に避難所や学校などを訪問してもらい、被災者との触れ合いを通じて「元気」を届けようというものだ。いままでにスポーツキャスターの舞の海秀平さんや歌手の平原綾香さんらが訪れている。「大変ですが、もうひと頑張り」「元の生活を絶対に取り戻す」などの言葉や子供たちのはじける笑顔には、反対に励まされてしまう。

 その一方で、会場では故郷(ふるさと)を追われたお年寄りらが目頭を押さえる姿を目にする。「これからの生活設計ができない」などと不安を漏らす人もいる。

 死者・行方不明者約2万人。全半壊住宅は25万棟を超え、数多くの人が避難生活を送っている。また東北3県の失業者は十数万人ともいわれる。この現実を忘れてはいけない。被災者らの復旧・復興への決意や時折見せる笑顔の陰には、計り知れない悲しみ、苦しみ、悔しさ、絶望感が渦巻いているはずだ。

 震災から5カ月。被災者の闘いは始まったばかり。いままで以上に心情をくみ取り、その思いを伝え続けていくことが重要だ。

 7月20日付の本紙「朝の詩(うた)」(仙台市の川口るみさん)の一節には、胸が締め付けられた。

 《こんな時なのに 花が咲きました こんな時なのに 涙も出ないのです…》(地方部長 楠崎正人)

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最終更新:8月17日(水)8時8分

産経新聞

 

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