きょうのコラム「時鐘」 2011年9月8日

 国際金融の不安から世界的に、金ブームだという。いつの世も、どこの国でも、混乱期に頼りになるのは「カネ」ではなくて「金(きん)」である

昔は金沢の川で砂金が採れたらしい。それが地名の由来になったのは金城霊沢の古跡からも知られているが、全国的に「金沢」という地名が多いのは東北だ。宮城、岩手、秋田、山形など各県にある

義経伝説にも「金売り吉次」という奥州の人物が登場し、中尊寺が世界遺産になったのも金色堂の存在が大きい。東北で金が産出したので聖武天皇が大仏建立を決断したことなど、東北の「金」が歴史を塗り替えた例は少なくない

その東北復興に必要なのはカネだが、カネの成る木はない。あるとすれば国民から集める税金だ。増税すれば一時的にカネは出るが、搾り続ければすぐ枯れる。増税が「金の卵」を生む鶏の腹を割く愚行に例えられるゆえんである

この時期に、将来のためだと言って「金」を貯め込んでもしょうがない。人間の経済活動こそが、復興に必要なカネを生みだす鶏だ。経済の営みを活発にさせること、野田新内閣のやるべき仕事はこの一点にあろう。