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連載 3.11 その時 そして

3.11その時 85)田畑ヨシさん・3

2011年07月06日

 田畑ヨシさんは4月9日、自宅跡を訪れた。がれきは撤去され、庭だったあたりに目をやると、わずかばかりの水仙が芽を出していた。

 「こんな状況なのに、なんて力強いんだろう……」。涙があふれ出た。悲しみだけじゃない、希望につながる形で今回の悲劇も伝えていきたいと願った。

 10年近く前に作った昭和三陸津波の犠牲者を弔うための詩を下敷きに作詞することにした。

 大震災から2カ月が過ぎたころ「海嘯(つなみ)鎮魂の歌」が完成した。滝沢村に住む長女の高橋恵美子さん(61)が「風化させてはならない」と、東京で活動する知り合いの3人組バンド「サスライメイカー」に曲作りを依頼した。リーダーの磯部俊行さん(33)は「ヨシばあちゃんの思いを受け継ぐことになる。腹をくくって引き受けた」。

 「突然襲う大つなみ 永久(とこしえ)忘れんあの怖さ」で始まる歌は、こう結ばれる。「復興誓い船出する 今、静かなる碧(あお)き海 恵(めぐみ)の海よ ふるさとの海」

 田畑さんは言う。「私ももう年。多くの人が体験したこの震災を、歌と一緒に皆さんが伝えていってくれればねえ」

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