中国・北京市で貧しい農民工の子どもが通う「黒学校」が次々と強制撤去されています。
中国・北京市で、子どもたちおよそ1万4,000人が通い、「黒小学校」と呼ばれる学びやが、事前通告もなく、次々と強制撤去されています。
北京市の戸籍を取得できない出稼ぎ労働者。急成長の陰で、その子どもたちも格差の闇に追いやられています。
道路に寝転び、「北京の建設のために貢献したのに、わたしたちの子どもは教育を受けられないんだ!」と声を上げる男性や、「農民の子どもは人間ではないのか!」と叫ぶ男性。
彼らは、「農民工」と呼ばれる農村部からの出稼ぎ労働者たちで、子どもたちが通う学校が通告なしに取り壊され、地元政府機関に押しかけた。
警察官が、「話したいことがあれば立てばいい」、「立って話しなさい」と促しても、道路に寝転んだ農民工の男性は、「わたしは捕まえられても平気だ」と聞かなかった。
今、中国では、貧しい農民工の子どもたちが通う、通称「黒学校」が次々と取り壊されている。
数日前に取り壊されたばかりの小学校は、がれきだけが残され、その場所が学校であったとは思えない。
「1年1組」の教室の中は、ガラスが一面に散らばり、めちゃくちゃに壊されていた。
行き場をなくした子どもたちは、今も、取り壊された学校で無邪気に遊ぶ。
学校の跡地には、高層ビルが建つという。
子どもは「前は、ここで寝ていたんだよ」と話した。
ほとんどの農民工が、都市部での戸籍を持っておらず、オリンピックなどもあり、北京市には農民工らが、この10年で400万人以上流入した。
農民工の子どもたちは、公立学校に通うことができない場合が多く、黒学校と呼ばれる違法学校に通わざるを得ない。
生徒数は、北京市で10万人にも及んでいる。
農民工の子どもは「(ほかの学校に移るの?)まだわからない。早く学校に行きたいよ」と話した。
中国政府は、黒学校24校の取り壊しを決定した。
その背景には、北京に押し寄せる農民工を減少させたい狙いがある。
子どもたちに案内されたのは、学校の敷地内にある農民工が住むアパート。
そのアパートも、まもなく取り壊すことが決まっている。
アパートの住民は「本当にどうしたらいいのか、わからない」と話した。
取り壊された学校に通っていた小学1年生の劉振振ちゃん(8)は、「(新しい学校に行きたい?)行きたいよ」と話した。
政府から転校を指示された学校は都心部のため、マンションの家賃がこれまでの5〜6倍ほどと、とても生活はできないという。
振振ちゃんの母親は「数日住んで、ここを離れます。あっち側は、すでに取り壊しているので...」と話した。
住む場所もなく、通う学校さえない振振ちゃん一家。
そして北京市内では、この日も、黒学校がまた1つ閉鎖になった。
教師は保護者に、「あす、お金を払い戻します」、「もう学校が閉鎖するので」と説明していた。
北京市内に100校以上にも及ぶ黒学校。
中国では、義務教育は無料だが、黒学校は年間授業料およそ1万円で、農民工にとっては決して安くない。
学校関係者は「うちは黒学校だとさ。8年間も運営して問題はなかったのに...。突然、『違法学校』ってどういうこと?」と話した。
黒学校は、農民工の子どもたちが公立学校に通えないことを見越した、まさに「農民工ビジネス」。
振振ちゃん一家が住むアパートの傍らに止まる、付近の雰囲気には似つかわしくない、1台の外国車。
アパートの大家は「お金は戻ってこないし、場所もなくなる。生活ができないよ!!」と話した。
農民工ビジネスを見込んで、学校に先行投資したアパートの大家だが、政府から数千万円の立ち退き料を手にするという。
振振ちゃんの母親は「(外国車は大家のもの?)そう。(お金持ちね?)持っている人は、結構持っているのよ」と話した。
中国の経済発展を足元で支えた農民工たちが搾取される現実。
振振ちゃんは「わたしは、もうすぐ8歳になるよ。妹は、そろそろ1歳だよ」と話した。
振振ちゃんが2年生に進学するめどは、立っていない。
(09/08 01:17)