「血も涙もない判決」遺族上告ヘ

判決後、記者会見で怒りをあらわにする原告団=6日、那覇市松尾・八汐荘

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2011年9月7日 10時13分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録
(14時間34分前に更新)

 戦争に参加した「英霊」として、家族を無断で合祀(ごうし)された遺族らの怒りは、再び司法の厚い壁に阻まれた。靖国神社などに合祀取り消しと慰謝料を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部は6日、原告5人の訴えを棄却した。「血も涙もない判決だ」「一審より後退している」。怒りをあらわにする原告、弁護団は、上告審で沖縄戦の実相を問うため、三度立ち上がる決意だ。

 判決言い渡しは5分程度で終了。淡々と判決文を読み上げる裁判長に、原告団長の川端光善さん(76)は、視線を向けることはなかった。閉廷後、八汐荘での会見で「母が沖縄戦で亡くなったのは47歳。ただの田舎のおばさんが、なぜ(準軍属として)合祀されるのか。最後まで戦い抜く」と訴えた。

 「裁判官はちっともわかっていない。屈辱と怒りしかない」。金城実さん(72)は、判決文と拳を机にたたきつけ、「国は都合の悪い過去を消し去ろうとしている」と声を荒げた。

 わずか2歳の弟を含め、沖縄戦で犠牲になった家族4人が合祀されている安谷屋昌一さん(71)は「死してなお軍隊に仕立てられ、戦争賛美の道具に利用される。なぜ司法にはその苦しみが伝わらないのか」。

 崎原盛秀さん(77)は「八重山の教科書や自衛隊配備問題、靖国も根っこは同じ。訴訟を通して、再び戦争に向かう流れを警告していきたい」とした。

 高裁判決では「靖国の教義や宗教的行為を否定することにつながりかねない」として、原告らの主張を退けた。池宮城紀夫弁護団長は「血も涙もない判決だ」、丹羽雅雄弁護士は「一審より後退した」と批判した。

 2010年12月、大阪高裁は、国が個人情報を神社側に提供したことが「宗教行為の援助、助長に当たる」として憲法の政教分離原則に違反する、と判断している。

 原告の1人、吉田文枝さん(69)は「一般の子どもやお年寄りまで準軍属として合祀されている実態は、東京、大阪の訴訟と比較してもひどすぎる」と憤った。

 靖国神社の話 神社の主張が全面的に認められた。極めて常識的な判決が下されたと思っている。

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