187の病院のレセプトから算出した診療科別収支で、内科系では保険点数で100円稼ぐのに109円を要する「-9%」の逆ざや状態。そして、産婦人科も100円稼ぐのに118円の費用が発生するという「-18%」の逆ざや状態です。
この結果は、平均的な費用をかけて(人員を平均的な人数配置し、平均的な設備を揃えて)医療を行う限り、内科系と産婦人科はやればやるだけ赤字が積み重なる価格設定であることを意味します。
本来であれば、この数値を真摯に受け止めて、保険点数の改訂が検討されるべきでしょう。しかし、健康保険支払い側は会議上で「これは計算手法の開発途上で出てきた話。中身について議論するのは避けた方がいいだろう」と事実上、無視する姿勢を示したのでした。
国策レベルで「内科/産婦人科といった医療の主要部門が保険点数だけでは赤字」という状況が放置される以上、地域医療を支える医療機関の閉鎖や撤退は、今後も続けて起きるのは時間の問題と言えるでしょう。
日本大学の撤退は許されざることか?
今回、日大練馬光が丘病院は撤退の理由を、開設以来連続して支出超過(赤字状態)が続いていることと、民法第604条規定(賃貸借の存続期間は20年を超えることができない)により、病院の賃借期間は20年に短縮可能だからと説明しました。
一方、練馬区側は病院開設時に30年の賃借契約を結んでいる以上、契約満了前に運営から撤退するのは了承できない、もし撤退するのであれば、責任を持って引き継ぐ医療機関を探すべきである、とウェブサイト上で主張しています。
どちらにも各々の立場で主張があるのでしょう。しかし、問題の本質は、相次ぐ医療費削減政策により、保険診療だけでは病院運営が赤字にならざるを得ないという、低すぎる健康保健点数にあります。新たな運営主体を探したところで、それは解決を先送りしたに過ぎません。
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