7月15日、日本大学医学部付属練馬光が丘病院(東京都練馬区)が2012年3月をもって撤退することを発表し、病院を引き継ぐ新たな医療機関の公募が始まりました。
同病院は、東京23区内で年間9万7000人の入院患者を受け入れ、年間1万9000人もの救急患者の診療を行っていた大学病院です。東京都内の地域医療の要であった大学病院が実質的な破綻状態に陥っていました。積み重なった赤字額は、20年間で140億円に達するといいます。
この破綻撤退劇は、これまでの地方の公立病院の採算悪化に伴う閉鎖とは全く意味合いが違います。
なぜならば、日本大学練馬光が丘病院は、病床稼働率や平均在院日数や人件費率、経常収支比率などの経営健全度を示す指標で、全国トップクラスの優良病院であったからです。
例えば、病床稼働率について見てみましょう、過去に破綻が報じられてきた夕張市立総合病院や銚子市立総合病院の閉鎖前の病床稼働率は約40%でした。しかし、今回の日大練馬光が丘病院の病床稼働率は80%を超えています。他の人件費率などの経営指標上の問題もなく、外来も混雑して行列ができている状態だったのです。
医療以外の業界において、稼働率が80%を超える施設が純粋に本業だけで赤字を積み重ねて閉鎖に追い込まれる状況は考え難いでしょう。
でも、保険診療においては、このような事態が起こり得るくらい、価格が低く抑えられているのです。
放置される「赤字必至」の公定価格設定
日本大学撤退発表前の7月13日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会において「医療機関の部門別収支に関する調査」が提出されました。
これは、現在の保険点数(公定価格)が適正かどうか調べるため、どれくらいの費用が実際にかかっているかを計算したものです。報告書に記載されていた数値は目を疑うものでした。
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