磐田市のラグビーチーム、ヤマハ発動機ジュビロの監督を2月から清宮克幸さんが務めている。早大を率いて、関東大学対抗戦の5年連続全勝優勝という実績を上げたカリスマ監督は、低迷するジュビロをどう指導するのか。
――昨年、ジュビロは業績不振の影響で、抱えていたプロ選手の雇用をやめ、選手全員を社員にしました。チームにとってはやはり痛手ですか
良くも悪くもチームの歴史の中で、大きな転機でした。優秀な選手が何人も去りましたが、あの大きな試練を乗り越えて、強いチームができた。日中仕事がある中でも競技にしっかり打ち込める、強い意志をもった選手がそろいました。
――社会人ラグビーの全国リーグである「トップリーグ」が10月に開幕します。昨年度は14チーム中11位。今年の目標は
優勝です。昨年以前も熱を持ってやっていたので、私が監督になった以降も目標は変わらない。何を武器にして戦うか、アプローチの方向が違うだけ。
7月には、昨年度トップリーグ1位の東芝ブレイブルーパスと試合をしました。通用する点としない点がはっきりして、課題が浮き彫りになった。また、強豪を相手に十分やっていけるな、という自信も感じています。
プレーできる環境も良い。ヤマハ発動機という会社は、自前のスタジアムを持ち、自社の名前がつくスポーツ財団がある。これほどスポーツに対して愛情を持つ企業は少ない。また、磐田市には競技に打ち込む環境が整っています。グラウンドには緑が多く、海も近い。休日にサーフィンを楽しむ選手たちもいます。リフレッシュしやすい環境は、競技をやる上で大きなプラスです。
――6月5日には被災地の岩手県釜石市で、地元チーム・釜石シーウェイブスと親善試合をしました
あのチームは、地域に根付いた素晴らしいチーム。日本選手権で7連覇を達成し、ラグビー界に釜石の名をとどろかせた、まちのスターたちです。
釜石でやることには大きな意味がありました。彼らとしては、地元の人たちが見に行けない遠い場所でやることに抵抗があると感じました。だから、ヤマハが赴いた。集まってくれた千人を超えるファンには、「何かあったときは助け合う仲間なんだ」という空気を伝えられたと思います。
――ラグビーの魅力とは
体を張って何かを守る、本当の強さが詰まっている点です。日々体を鍛え、生活を律する。たとえば、暴飲暴食をしてると試合なんてできないですよ。選手は平日にアルコールを口にすることはないし、食事もしっかり管理している。夜は午後10時には就寝します。
みんな競技にまじめに、ストイックに取り組んでいる。それは全て試合でボールや、仲間や、プライドなどを守るため。大事なものを体を張って守ることが、ラグビーの最大の魅力ですね。(友田雄大)
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大阪府生まれ。野球やサッカーなどを経験し、高校からラグビーを始める。その後は早稲田大、サントリーなどで活躍。2001年に選手を引退してからは、早稲田大やサントリーの監督として手腕を発揮する。
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■ラグビートップリーグ 実業団ラグビーの国内最上位リーグ。14チームがしのぎを削る。県内では、ヤマハ発動機ジュビロが唯一参加。ジュビロのリーグ過去最高順位は2004年度の2位。数年前まで優勝争いに絡む強豪だったが、近年は低迷しており、昨年度は11位に終わった。