三菱重工業と米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、「蜜月」に終止符を打った。火力発電向け蒸気タービンの共同開発を皮切りに、両社の看板であるガスタービンの事業統合交渉を水面下で進め、原子力分野での協力まで視野に入っていたが、結局、思惑は一致しなかった。順調に進めばGEと提携関係にある日立製作所も巻き込んだ「東芝包囲網」まで発展する可能性もあったが、すべては幻と消えた。
「GEとの関係はもう引き返せないところまで冷え込んでしまったね」。三菱重工幹部は、ぽつりとつぶやく。
両社の接近が始まったのは2006年ごろから。09年1月には、ガスタービンで発電し、その排ガス熱で蒸気タービンでも発電する「ガスタービン・コンバインドサイクル」(GTCC)向け蒸気タービンの共同開発で覚書を結んだ。
両社はそれまで、航空機エンジン分野で部分的に関わりがあった程度で、重電分野ではほとんど関係がなかった。日本の重電メーカーは欧米からの技術導入で成長してきたが、三菱重工は米ウエスチングハウス、日立製作所や東芝はGEをそれぞれ「師」と仰ぐ歴史的な経緯があったからだ。
蒸気タービンはほんの序章にすぎなかった。次に始まったのは、両社にとって主力事業であるガスタービンでの提携交渉。電力会社の発電設備に使われる大型ガスタービンは、GE、独シーメンス、仏アルストム、三菱重工が世界4強。世界の液化天然ガス(LNG)火力発電所の建設案件の受注で激しくしのぎを削っている。
三菱重工は高効率・高出力の上位機種の開発で先頭を走るが、ボリュームゾーンの品ぞろえが弱いのが悩み。一方、GEは、ボリュームゾーンで幅広い製品を持ち、市場をがっちりと押さえているものの、ハイエンド製品の開発で出遅れた。「両社が組めば、最強連合ができる」――。三菱重工、GEとも総論では思惑が一致、具体的な提携交渉に入った。
だが、交渉を重ねるにつれ、提携のあり方についての両社の利害の不一致が次第に浮き彫りになる。関係者の話を総合すると、三菱重工は、両社のガスタービン事業全体の統合を提案。これに対し、GEは上級機種を対象にした開発・販売提携を主張した。
焦点になったのは、三菱重工が09年に開発を完了した「J型」ガスタービンだ。素材や加工、シミュレーション技術を総動員し、世界最大・最高効率を実現した自信作。三菱重工とすれば、虎の子のJ型をGEに差し出す以上、三菱重工の弱点であるボリュームゾーン機種をGEに提供してもらい、品ぞろえを相互補完するのは譲れない一線だった。
一方、GEは包括提携というより、自前でできることは自前でやり、足りないピースを三菱重工との提携で補うというのが基本的な姿勢だった。J型は高性能すぎて需要はそう多くないというのがGEの読み。三菱重工の高い技術力とGEの販売力を組み合わせ、ハイエンド市場を共同開拓しようという戦略だった。
ゼネラル・エレクトリック、三菱重工業、日立製作所、東芝、ウエスチングハウス、シーメンス、アレバ、ものづくり進化論
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