[解説]県の水がめ 汚染可能性

2011年9月6日 12時51分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録
(5時間31分前に更新)

 【平安名純代・米国特約記者】ベトナム戦争で使用された枯れ葉剤の沖縄での散布について、当時の作戦に携わった元当局者が初めて事実関係を認めたことで、これまでの証言の信ぴょう性が高まった。今後は散布場所や範囲などを早急に特定し、環境影響を調査することが求められる。米政府による情報開示が不可欠だ。

 今回の証言で、枯れ葉剤の散布が明らかとなった北部訓練場の周辺一帯は「沖縄の水がめ」といわれる地域で、環境が広範囲にわたって汚染されている可能性もある。事実を解明するには米側に対する日本政府の強い働きかけが不可欠だ。

 米陸軍が初めて枯れ葉剤散布作戦を立案したのは太平洋戦争末期の1945年で、東京、横浜、大阪、名古屋、京都、神戸の6都市の稲作地帯への散布を計画。しかし、原爆投下が優先され、実行には至らなかった。

 作戦は、ベトナム戦争の開戦を受けて復活。米軍は61年から約10年にわたり、南ベトナム解放民族戦線の拠点崩壊を目的に空中から総量9万1000キロリットル(推計)を散布した。

 戦争の長期化に伴い、66年頃から枯れ葉剤が大量生産されたため、米軍は試験散布範囲の拡大を決定。オーストラリアやカナダ、韓国でも使用されたという。

 米政府は91年から米兵の枯れ葉剤被害者に補償を始め、枯れ葉剤をつくった製薬会社も、米国の被害者だけに和解金を払っているものの、外国での使用に関しては異なった基準を用いている。

 オーストラリアでは、豪軍が作成した文書で米豪軍の枯れ葉剤使用が明らかとなった。カナダでは、2007年にカナダ政府が枯れ葉剤と健康被害の因果関係を認め、基地で勤務した元軍人や被害が認められた被害者約4500人への補償を認めた。

 韓国では1999年、駐韓米軍司令部が作成した報告書を基にした地元紙の報道を受け、米国防総省が事実を公式に認定。しかし、オレンジ剤と健康被害の関係を示す決定的証拠がないとし、韓国側への補償責務などは否定した。

 米越両政府はことし1月に米軍が使用した枯れ葉剤の汚染を2013年までに除去することで合意。散布から半世紀を経てようやく汚染土壌などの除去作業が7月に開始されたが、ベトナム全土に28カ所あるとされる高濃度汚染地域の除去には20年かかるとの推計もある。

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