目次 // この事故って / 放射線とか放射能 / シーベルトとベクレル / 放射線と体 / これからの生活 / 原子力発電所
公開: 2011年6月18日 / 最終更新日: 2011年9月6日
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ぼくは数理物理学を専門にする大学教員なので、実は、放射線についても原子炉についても「専門家」というわけじゃない。 放射線の体への影響についてはまったくの素人(しろうと)だ。 ここに書いてあるのは、ぼくなりに、いろいろな文献やいろいろな人の意見を読んだ上で、信じていいだろうと判断したことである(考え違いなどがあったら、是非とも教えてください)。 よくわからないことについては、「よくわからない」とはっきり書いた。 どのくらい「よくわからない」のかを知った上で、これからどうしていくべきかをみんなで考えていくべきだと信じているからだ。
ぼくの力が及ばなくて取り上げていない重要で切実な問題もたくさんある。 たとえば、食品の安全性、他の原子力発電所の状況、政治や経済のこと、などなど、いくらでもある。 もちろん、そういったことについても何かが書ければうれしいのだが、今の段階のぼくの理解では人にお見せできるものは書けそうにない。 どうかお許しいただきたい(もちろん、少しずつ学んで考えていくつもりだが)。
田崎晴明(たざき はるあき)学習院大学理学部
順番に読んでいけるようになっている。 もちろん読み飛ばしても、好きなところから適当に読んでもいい。
この事故ってやばいの? もっとひどいことになるの? そうしたらどうすればいい?(2011年8月24日更新)
放射線とか放射能ってなに?(2011年8月28日更新)
シーベルトとかベクレルってなに?(2011年8月4日更新)
放射線って体に悪いの?(2011年8月4日更新)
これからどう生活すればいいんだろう?(2011年6月18日更新)
原子力発電所ってけっきょく何をやっているの?(2011年6月29日更新)
震災と事故のすぐあとは、ぼくみたいに専門知識のない学者がなにか「情報発信」するなんて夢にも思っていなかった。 しかし、しばらくして、この中途半端で苦しい状態がダラダラと何ヶ月も何年も続くのだ、これは長期戦なのだということがわかってきて、ぼくも何かしたほうがいいかなと思い始めた。
ネットでの情報をみていると、ぼくなんかよりずっと詳しくて優秀な人たちがいろいろと重要なことを書いている。 でも、そういう情報は、ちょっと難しくて多くの人には敷居が高そうだったり、ツイッターとかブログとかホームページの一部とかにバラバラに出ていたりすることが多い。
そういうのはもちろん大事だけれど、少し別の路線で、
いまの状況、そして、これから先のことを考えるために必要な基本的なことがらを、わかりやすく簡潔に一カ所にまとめたものがあったらいいなあと思い始めた。 でも、なかなかそういうのがみつからない。 みつからないなら自分で書こうと思ったというわけだ。
ぼくは物理が大好きで、物理を教え、自分でも研究して少しでも新しいことをみつけるのを、生涯の仕事にしている。 でも、ぼくの研究には原子力とか放射線とかはぜんぜん関係してこないので、原子力発電所のことについてはまじめに関心を払ってこなかった。 実をいうと、まだ若かった頃、少しだけ勉強したときに「放射性廃棄物があとに残ってどうしようもないのは、困ったことだ」ということは感じていた。 ただ、それ以上は踏み込まなかったし、原子力発電所そのものは安全につくられていると(今から思えば大した根拠もなく)思っていた。
「物理が好きで専門に勉強したといいながら、原発の問題に気付かないとはけしからん」とお叱りを受けたら、返す言葉もない。 言い訳にはならないけれど、ぼくらが物理学の世界に入ったときには、もう原子力発電というのは基礎的な物理学を離れた、どこか遠い学問分野の話になっていた。 要するに、原子力発電については、一般の(あまり関心のない)人たちと同じ程度の情報しかもっていなかったのだ。おそらく、まわりでいっしょに物理を学んでいた仲間たちのほとんども同じだったと思う。
そいういうわけだから、福島第一原子力発電所で大事故がおきたときには本当にショックを受けた。 もとをただせば物理学から生まれてきた技術がこんなすさまじい被害と苦しみを人々に与えることには愕然としたし、今まで無関心だったのはまずかったと素直に思った。思ってもどうしようもないし、何の言い訳にもならないのはわかっているけど。
それから、自分なりに原子力について復習しいろいろ考え直したけれど、やはり(事故の直後に反射的に思ったように)「原子力発電所を持ち続けるのは人類には無理だ」という結論に落ち着いた。 もちろん、すぐに全てを止めるのは苦しいだろうが、徐々に止めていくしかない。 それは多くの英知を必要とする長く困難な道になるが、やるしかないと(おそらく、多くの人と同様)ぼくは思っている。
ただし、この「まとめ」は「原発廃止」を訴えて書いた物ではない。 それは誤解しないでほしい。 そういう意見や立場とは関係なく、できるだけ公平にわかっていることを解説したつもりだ。
本来は、そういった人たちのお名前をあげるべきだろう。ただ、その人たちがこの解説のすべての記述に賛成されるとはかぎらないので、失礼は承知で、お名前はあげないことにする。
お力を貸してくださったすべてのみなさんに心から感謝したい。
hal.tasaki.h@gmail.com
あてにメールでお願いします(Twitter のアカウントはありますが、140 文字以内でのやりとりは苦手です)。 ただし、上に書いたように、ぼくは放射線や医学のプロではないので、ご質問をいただいても答えられないことが多いと思います。ご了承ください。 また、このページは、あくまで大学での研究や教育の合間をぬって作っているので、メールをいただいてもすぐには反応できないかもしれません。これもお許し下さい。