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<尖閣漁船衝突>明日1年 「英雄」船長、監視付きかごの鳥

毎日新聞 9月6日(火)12時34分配信

<尖閣漁船衝突>明日1年 「英雄」船長、監視付きかごの鳥
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港で水揚げ作業をする中国漁船。船体は衝突した漁船と同じ青色に塗られている=中国福建省晋江で、隅俊之撮影
 尖閣諸島付近で昨年9月、中国漁船が日本の海上保安庁巡視船と衝突した事件は7日で発生から1年になる。逮捕後、釈放された※其雄(せん・きゆう)元船長は、中国で「英雄」として迎えられ凱旋(がいせん)帰国した。あの元船長は今、どうしているのか。訪ねてみた。【晋江(中国福建省)で隅俊之】

 潮のにおいが心地よい福建省晋江の深滬(しんこ)港。10隻以上の漁船が岸壁でアジなどを水揚げし、100人以上の漁師らで活況を呈していた。元船長の自宅は、その港から徒歩10分ほどの住宅街にある。

 「飛行機に乗ってきたのか」。そう言いながら姿を現した元船長は「海の男」らしい筋肉質な体をしているが、以前の写真と比べると心なしか太って見える。3階建ての自宅2階の居間には帰国時に空港で花束を贈られた時の写真が額に入れて飾られている。壁には「中華民族英雄」と記された有志から贈られた旗や、地元政府から贈られた「道徳模範」の小旗が誇らしげに掲げられていた。だが、いすに座って薄型テレビをジッと見る元船長の顔は寂しそうだ。

 「記者が来たら『彼ら』に連絡しなければいけないんだ。何も言えないよ」。元船長が携帯電話でどこかに電話をすると、10分ほどで地元政府の宣伝部の関係者と公安担当とみられる関係者が駆けつけてきた。記者証の提示を求め「いつ来たのか? どこに泊まっているのか」と尋ねてはノートに書き込み、「許可がないから取材は容認できない」と繰り返す。

 今年5月の香港紙、明報によると、元船長は巡視船に故意に衝突したとの見方を否定し「彼らが突然、方向を変えたため衝突した」と主張。停船後に乗り込んできた海保職員に棒で右肩を殴られたうえ、左足を蹴られたなどと、日本側証言と明らかに矛盾する内容も語っていた。しかし、当局者の前で押し黙る船長の姿からは、思うところを自由に言えないことへの苦渋がにじみ出ているようだった。

 帰国直後は「これからも釣魚島(尖閣諸島の中国名)海域で漁をする」と話していた元船長だが、明報などによると、地元政府は元船長に出漁を禁止。衝突した漁船を買い上げ、月3000元(約3万9000円)のふ頭での仕事をあてがった。事件以前は約1万元の収入があったという元船長は自由に町の外にも出られず、地元政府の監視下におかれた「全方位保護」の生活を強いられている。「煩わしい生活は海の上より苦しい」といい、1日4箱もたばこを吸っているという。記者が訪れた時にも足元に小さなバケツを置いて何度もたばこを吸っては捨てた。「(もう漁は)していないんだ」という言葉が寂しく響いた。

 深滬港からは、衝突したあの漁船と同じ青色に塗られた船が次々と出漁していく。地元漁師によると、今も多くの漁船が尖閣諸島付近に出漁。4日前に尖閣諸島付近から帰ってきたという漁師は「あの島は中国の領土だ。事件後、あの海域に行くなと言われたことはないし、これからも気にせずに行くよ」とのんびりと話す。

 尖閣諸島周辺では事件後、「以前はいなかった」(地元漁師)という中国の漁業監視船が頻繁に姿を見せるようになり、先月24日には監視船2隻が初めて日本の領海を侵犯した。事件から1年、再び波風が立ち始めている。

 ※澹のつくり部分

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最終更新:9月6日(火)12時46分

毎日新聞

 

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