東京電力福島第一原発事故で周辺の子どもが甲状腺にどれぐらい被曝(ひばく)したのかを調べた政府の現地対策本部による検査結果について、原子力安全委員会は5日、個々の健康リスクは評価できないとした。それを補う上でも長期的に子どもを追跡する福島県の健康調査の充実が重要だとした。
検査は安全委の指示で3月下旬、飯舘村と川俣町、いわき市の15歳以下の約1150人に実施された。住民の要望に応じて8月中旬以降、個別に検査結果が通知された。検出限界以下の子が過半数で、それ以外で内部被曝の存在が確認されたが、医療措置は必要ないと判断されている。
通知されたのは1時間当たりに甲状腺から体外に出ている放射線量の計測値で、将来にわたる内部被曝線量の推計は出されなかった。同じ計測値でも1歳と15歳では甲状腺の放射線への感受性は5倍ほど違うため、一律に計測値だけでは判断できない。
安全委は、3月の検査は「全体状況を把握するのが目的で誤差が大きい」(班目〈まだらめ〉春樹委員長)と判断。計測値から個別の内部被曝線量を推計し健康リスクを評価するのは「乱暴すぎる」(久住静代委員)とした。
甲状腺がんが万一、発症しても進行が比較的遅い。対策本部の原子力被災者生活支援チームは個人のリスクが評価できなくても、定期的な検査で、早期発見できるとしている。
甲状腺検査の結果が知りたいという福島県民の要望は、ひとえに「我が子の健康リスクが知りたい」という願いからだった。しかし、政府と安全委は計測値を通知しておきながら、内部被曝線量や健康リスクは評価できないとした。後は「生涯、甲状腺の検査を受けて欲しい」という不親切な対応を今回示した。