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農園流された兄弟と家族失った農家女性ら 弁当店で再出発
 | 再起をかけ、弁当作りに励む大泉さん兄弟と女性たち=岩沼市二木 |
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宮城県岩沼市で開園予定だった観光農園を東日本大震災の津波で失った大泉功太郎さん(28)、俊介さん(23)兄弟が、被災農家の女性5人と市内に手作り弁当店「オアシス」を開店させた。夢を絶たれた若い兄弟と、家族を亡くし、家と田畑を流された年配の女性たち。それぞれの思いを込め、弁当作りに励んでいる。
オアシスは、大泉さん兄弟の実家である花屋の一角を間借りし、7月上旬にオープン。約2カ月かけ、水回りを工事し、ガスコンロなど調理器具をそろえた。 弁当は朝から作り、正午までに約50個を店に並べる。季節の炊き込みご飯に、「筑前煮」「ナスのずんだあえ」など6品のおかずが付く。 祖母の造園業などを手伝っていた大泉さん兄弟は今春、沿岸部の寺島地区に観光農園を開こうと準備を進めていた。農園は、祖母が持つ農地を活用。震災当時も小松菜の種を植えていた。 2人は津波が来ると聞き、慌てて逃げた。後日訪れると、約10アールの農園は浸水し、せっかく植えたブロッコリーやニンジンなど20種類の野菜は跡形もなくなった。「元に戻すには5年、10年かかると言われ、ショックだった」と俊介さん。震災後、何もする気が起きなかった。 失意の兄弟を奮起させたのは、寺島地区の農家の女性たち。祖母を通じ、子どものころから「おばちゃん」と呼んで交流があり、農園の開園に向けては、野菜の育て方など助言もくれた。 女性たちは避難所に身を寄せていた。「何かしていないと、つらいことだけを思い出す」。そんな一言を聞き、奮い立った。 震災で食べることの大切さを痛感した2人。弁当店の開店を決めたが、「思い付くメニューに限界があった」(功太郎さん)。自ら野菜を作り、料理上手な女性たちに協力を仰いだ。 平塚節子さん(64)は長年連れ添った夫を亡くし、自宅を流された。現在は市内のアパートを借りて住む。「夫の仏壇を見ると涙が出てくるけど、弁当作りで生きる張り合いができた」と喜ぶ。 「おばちゃんたちと一緒に店を続けることが新たな夢になった」と功太郎さん。弁当は1個500円。お総菜は100〜300円。営業時間は午前11時〜午後5時。日曜定休。連絡先はオアシス0223(29)3138。
2011年09月05日月曜日
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