(cache) 「一丸で職務全う」　那智勝浦町長の自殺で職員

「一丸で職務全う」　那智勝浦町長の自殺で職員

　和歌山県那智勝浦町の小嶋英嗣町長（55）が自殺してから初の執務日となる30日朝、町役場では各課ごとに課長が職員に状況を説明した。約２カ月前に小嶋町政がスタートしたばかり。衝撃的な出来事だったが、幹部職員は「動揺してばかりではいられない。町のため、しっかりしなければならない」と話した。

　総務課では、橋爪健課長（58）が涙ぐんで「冥福を祈りたい」とあいさつ。葬儀や町長選の日程を報告した後、「町長、副町長が不在の中、職員が一丸となって取り組んでいきたい。協力をお願いしたい」と呼び掛けた。

　自殺の原因について橋爪課長は「分からない。異変はなかった」と話す。自殺を図った前日の26日、庁内の階段で転んで頭を打ち、病院で手当てを受けていた。脳の検査で異常はなく、27日は普段通り仕事をしたというが、その日の夕方、自宅で首をつった。

　新宮署によると、小嶋町長は自殺した部屋に、妻や子どもあてに「しっかり頑張って下さい」、町民あてに「お世話になりました」「お許し下さい」などと書いたＡ４判用紙２枚のメモを残していた。町長職の重要さを示す内容はあったが、自殺に結びつく具体的な理由は書かれていなかったという。

　同町は29日付で、町長の職務代理者に橋爪課長を任命。30日に選挙管理委員会に欠員通知をした。町長選挙は通知から50日以内にある。町議会12月定例会は12月９日開会、17日までの予定で、４日に議会運営委員会を開く。

告別式は12月１日

通夜は30日午後６時から、那智勝浦町勝浦１０５３の自宅で、告別式は12月１日午後１時から、同町天満８０３の２　中本葬祭勝浦斎場「ザ・スランバーズガーデン」で。喪主は妻、千賀子（ちかこ）さん。

町内に衝撃走る

　町長の突然の死は、町内に衝撃を与えた。

　南紀くろしお商工会の森川起安会長（62）は「町長は商工会の理事を務めていたこともあり、かかわりは深かった。まじめで、何事も一生懸命な人だった。それだけに一人で悩みを抱え込んでしまったのではないだろうか。わたしたちは一致団結しなければならない」。那智勝浦町観光協会の外山靖夫会長（68）は「28日の新聞の朝刊で知り、驚いた。４日前に会ったが、悩んでいる様子はなかった。庶民派の町長でこれからという時だっただけに残念としか言いようがない」。勝浦漁協の丸山一郎参事（53）は「水産業を活気づけようとしてくれていた。いままで以上に期待していた。非常に残念」と話した。

近隣首長「残念だ」

田岡実千年・新宮市長
　隣同士、観光や産業振興を一緒に頑張ろうと話し合っていた。まじめで前向きな町長で、広域での取り組みを楽しみにしていた。27日に一緒だった新宮周辺広域市町村圏事務組合議会では議長をこなし、自殺するようなそぶりは全然感じなかった。これから一緒に頑張ろうという矢先で残念でならない。

三軒一高・太地町長
　小嶋町長は誠実な方だったので、町民や家族のことを考えると残念でならない。

奥田貢・北山村長
　ただ驚いている。27日の会議で一緒だったが、悩んでいるようには感じなかった。「忙しい」と聞いたことがあったが、みんな同じことなので、気にも留めなかった。詳しい事情は分からない。当選してわずか２カ月、これからという時だったのに残念だ。

田嶋勝正・串本町長
　先日、東京であった全国町村長大会で一緒に食事をした時に小嶋町長は「行政は課題が多いですね」と言われ、わたしは「那智勝浦町だけではないですよ。互いに協力して頑張っていこう」と話したばかりで、ショックを受けている。一緒にこれからやっていけたのに、本当に残念だと思う。

武田丈夫・古座川町長
　今月、東京で会議があった際２人で飲みに行った。忙しいとは言っていたが意欲的で、隣町だしお互い協力していこうと話をしていたので、訃報（ふほう）を聞いて驚き残念に思う。誠実で責任感の強い人だったので、多忙な中で精神的に苦労されたのでは。

【朝礼で橋爪健課長（左）から説明を聞く職員＝30日、和歌山県那智勝浦町で】

(2009年11月30日更新)