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有田で開発の釉薬極小粉末、放射性物質の吸着に効果 | ||
磁器の町・有田で開発された釉薬(ゆうやく)に使う極小粉末が、放射性物質の吸着に高い効果があることが、佐賀県鳥栖市の産業技術総合研究所生産計測技術研究センター(産総研)の分析で明らかになった。放射性物質の浄水用フィルターや汚染水を入れる容器の開発など既に引き合いも来ている。極小粉末の特許を持つ西松浦郡有田町の陶芸材料製造販売「古川商店」は近く、新会社を設立し、販売を本格化させる。
吸着効果が分かったのは、モンモリロナイトと呼ばれる鉱物を極小の粉末にした同社商品「アドバンスクレイ」。波佐見焼や有田焼の食器の釉薬や日焼け防止クリームの原料に使われている。同社が15年前、平均粒径100ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)に加工する破砕と精製技術を開発し、製法特許を取得した。
産総研によると、アドバンスクレイを汚染水に散布して混ぜ合わせ、沈む間に放射性物質を吸着させる。底にたまった沈殿物を取り除くと除染が完了する。
吸着のメカニズムは「イオン交換」と呼ばれる反応。水に含まれたモンモリロナイトは、セシウムやヨウ素といった他の溶液と接触すると、瞬間的にそれぞれのイオンが入れ替わる。モンモリロナイトの結晶構造が層状で、水によって膨張する性質があるため、表面積が広がることで吸着能力が高まるという。
産総研の実験では、アドバンスクレイ13ミリグラムを塩化セシウム液1リットルに混ぜたところ、セシウム吸着率は24時間で99・3%との結果を得た。一般的なセシウム吸着剤のゼオライトの66・8%を超えた。ヨウ素の吸着率も99・2%と、活性炭の88%を上回った。
東日本大震災による福島第1原発事故を受け、古川商店が、水質浄化や菌・ウイルス抑制効果があるアドバンスクレイの放射性物質への転用を着想した。産総研の分析結果が得られたことから、本格的な販売に向け新会社を設立する。釉薬原料としては1キロ4100円で販売している。
同社で研究を進めてきた古川猛さんは「放射能汚染に苦しむ東北や関東地方の住民や農家の助けになれば」と話している。 |
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2011年09月05日更新 |