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社説

除染計画 住民に明確な見通しを(9月5日)

 福島第1原発事故による放射能汚染を除去し、周辺に安心して人が住めるようになるのは一体いつなのか。その見通しが依然はっきりしない。

 政府は除染を急ぐとともに、住民が納得できるような、帰還へのより具体的な道筋を示さねばならない。

 政府は放射性物質を取り除く除染の基本方針を決める一方、原発から半径20キロ圏内の警戒区域の一部で、居住禁止が長期化するとの見解を福島県に伝えた。

 年間被ばく線量が200ミリシーベルトの地域は、住民の帰還までに20年以上かかる可能性もあるという。

 根拠もなく楽観的な見通しを語るのは禁物だ。放射線量の高い場所で警戒区域の解除を見送る判断はやむを得ないだろう。

 だが、早期の帰郷を望む避難住民には、あまりにむごい現実である。

 政府の除染基本方針は、年間被ばく線量が避難の目安となる20ミリシーベルト以上の地域を迅速に縮小させることを目標に掲げた。

 そのため、2年で居住地域の放射線量を半減させ、子供の被ばく線量を6割減少させるとしているが、具体性に欠ける。

 文部科学省は最近、原発から半径100キロ圏内の放射性セシウムによる土壌汚染を示す地図を初めて公表した。

 汚染の深刻さには驚かされる。2200地点のうち約100地点が、チェルノブイリ原発事故後の強制移住の基準値を上回った。

 地域をさらに細かく分けて汚染度を計測し、地図の精度を高める必要がある。

 これに基づき、詳細なデータに裏打ちされたきめ細かな除染計画を策定すべきだ。

 汚染場所の多くは田園地帯の中にある。森林や農地の除染は、住居や道路よりもはるかに時間と手間がかかる。病院、学校などのインフラ、職場を含む生活圏全体が安全でなければ、暮らしは成り立たない。

 肝心なのは、場所と汚染度に応じて、除染の方法と終了する時期のめどを示すことだ。

 汚染された土などの処分も困難な課題だ。政府は最終処分場を整備するまで、各自治体の仮置き場での保管を求めている。

 安全な処分方法を早期に確立し、最終処分場の受け入れ先を決める議論を始める必要がある。

 除染が長期に及ぶ場合は、その地域の住民に別の土地で生活を再建する選択肢も用意すべきだろう。

 政府は、避難住民が中途半端な状態から脱して将来の展望を持てるように、長期にわたる生活支援策を充実させねばならない。

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