2011.07.14 Thursday
「世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル」にだまされるな
次の図を見たことがあるだろうか(図をクリックすると拡大)。
![世界もおどろく](http://megalodon.jp/get_contents/66599505)
これは、「世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル」という文書の一部だ。この毒々しい絵と数値を見た人は、
「えっ?日本の基準値ってこんなに高いの?」
「基準値以下でも危険なんだな」
と思ってしまうだろう。では、次の表を見て欲しい(図をクリックすると拡大。元の文書はこちら)。
![CODEX](http://megalodon.jp/get_contents/66599506)
こちらを見ると、
「あれっ?日本の基準値って厳しいほうなのでは?」
となる。そう、日本の基準値はEUと同じなのだ。ヨウ素では他の国より高いものがあるが、今問題になっているセシウムでは、外国よりもかなり厳しい。テレビでよく
「日本の基準値は厳しいほうです」
と言っている理由がこれだ。
「世界は全然驚いてなんかいない」
のだ(※1)。では、どうしてこういう食い違いが生じるのか。
それは、最初に挙げた図が、見た人を不安にさせるために書かれているからだ。
そもそも、基準値なんて国によって違うので、日本より高いところもあれば低いところもある。日本より低い数値だけを選んで資料を作れば、こういう資料はいくらでも作れてしまうのだ。現に、日本よりも高い数値はいっさい隠されている。
また、日本の数値を高くみせるために、いろいろなトリックが仕込まれている(※2)。
たとえば、ベラルーシの飲み物の基準が10ベクレルになっているが、これは水道水の話で、牛乳の基準値は100ベクレルだ。つまり、牛乳と水道水を「飲み物」としてごちゃ混ぜにし、高いほうの数値を隠して低いほうの数値だけを書いている。
また、ベラルーシの食べ物(子供)を37ベクレルとしているが、これはベビーフードの基準だ。ベビーフードも食べ物には違いないと言われれば、まったくの嘘とも言えなくなるが、限りなく詐欺に近い。
さらに、WHOの水の基準を10ベクレルとしているが、WHOでは、「これらは、環境中に放射性核種が放出されているような、緊急時で汚染を受けている水供給に適用されるものではない。」としていて、原発事故のときに適用してはならない数値だ。
WHOの文書では、原発事故時にはIAEAの基準を使うように書かれており、それを見るとセシウム137の基準は2000ベクレル/Kgと、日本の暫定基準の10倍だ。
一番大きな問題は、各国の平常時の基準値と緊急時の日本の暫定基準を比較している点だ。チェルノブイリ原発事故直後のベラルーシの基準は日本よりかなり高かったのだ(※3)。
最初に挙げた図は、「放射能について正しく学ぼう」というサイトのものだが、このように、サイトのタイトルとは大きくかけ離れた内容なので注意してほしい。
冷静に考えれば、日本が世界よりも何百倍も何千倍も基準値がゆるいなどありえないとすぐわかりそうなものだが、不安な人はますます不安になる情報を信じてしまう傾向があるようだ。
※1
実際には、日本が基準値を低く設定してしまったことで、これまで輸出できていたものが輸出できなくなってしまったという例もある。詳しくは「川勝知事“怒りの”コメント 静岡」に書いてあるが、つまり、外国が、「本来うちは日本より基準がゆるいけど、日本がそんなに基準を厳しくするなら、日本産のものには日本の厳しい基準を適用しちゃうよ」ということだ。
※2
これは中部大学の武田邦彦教授も同じだ。彼は WHO の水の基準値が 1 ベクレル/リットルだと言っているが、これはスクリーニングレベルの話で、本当はガイダンスレベルと比べるのが正しい。武田氏にこのような初歩的な知識がないとは考えにくい(?)ため、一般人にわからない嘘を混ぜながら、自説に都合がいいように誘導しているとしか思えない。
※3
日本よりも低いとして引き合いに出されているベラルーシだが、チェルノブイリ原発事故直後の基準は、飲料水が370ベクレル、牛肉は3700ベクレルと、日本よりかなり高かった。ベラルーシの汚染限度の変遷は、「食品の暫定基準に対する疑念と不安が絶えない事情」に詳しい。日本はまだ「緊急時」なので現在は「暫定基準」だが、将来的には基準値が下がっていくと思われる。
これは、「世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル」という文書の一部だ。この毒々しい絵と数値を見た人は、
「えっ?日本の基準値ってこんなに高いの?」
「基準値以下でも危険なんだな」
と思ってしまうだろう。では、次の表を見て欲しい(図をクリックすると拡大。元の文書はこちら)。
こちらを見ると、
「あれっ?日本の基準値って厳しいほうなのでは?」
となる。そう、日本の基準値はEUと同じなのだ。ヨウ素では他の国より高いものがあるが、今問題になっているセシウムでは、外国よりもかなり厳しい。テレビでよく
「日本の基準値は厳しいほうです」
と言っている理由がこれだ。
「世界は全然驚いてなんかいない」
のだ(※1)。では、どうしてこういう食い違いが生じるのか。
それは、最初に挙げた図が、見た人を不安にさせるために書かれているからだ。
そもそも、基準値なんて国によって違うので、日本より高いところもあれば低いところもある。日本より低い数値だけを選んで資料を作れば、こういう資料はいくらでも作れてしまうのだ。現に、日本よりも高い数値はいっさい隠されている。
また、日本の数値を高くみせるために、いろいろなトリックが仕込まれている(※2)。
たとえば、ベラルーシの飲み物の基準が10ベクレルになっているが、これは水道水の話で、牛乳の基準値は100ベクレルだ。つまり、牛乳と水道水を「飲み物」としてごちゃ混ぜにし、高いほうの数値を隠して低いほうの数値だけを書いている。
また、ベラルーシの食べ物(子供)を37ベクレルとしているが、これはベビーフードの基準だ。ベビーフードも食べ物には違いないと言われれば、まったくの嘘とも言えなくなるが、限りなく詐欺に近い。
さらに、WHOの水の基準を10ベクレルとしているが、WHOでは、「これらは、環境中に放射性核種が放出されているような、緊急時で汚染を受けている水供給に適用されるものではない。」としていて、原発事故のときに適用してはならない数値だ。
WHOの文書では、原発事故時にはIAEAの基準を使うように書かれており、それを見るとセシウム137の基準は2000ベクレル/Kgと、日本の暫定基準の10倍だ。
一番大きな問題は、各国の平常時の基準値と緊急時の日本の暫定基準を比較している点だ。チェルノブイリ原発事故直後のベラルーシの基準は日本よりかなり高かったのだ(※3)。
最初に挙げた図は、「放射能について正しく学ぼう」というサイトのものだが、このように、サイトのタイトルとは大きくかけ離れた内容なので注意してほしい。
冷静に考えれば、日本が世界よりも何百倍も何千倍も基準値がゆるいなどありえないとすぐわかりそうなものだが、不安な人はますます不安になる情報を信じてしまう傾向があるようだ。
※1
実際には、日本が基準値を低く設定してしまったことで、これまで輸出できていたものが輸出できなくなってしまったという例もある。詳しくは「川勝知事“怒りの”コメント 静岡」に書いてあるが、つまり、外国が、「本来うちは日本より基準がゆるいけど、日本がそんなに基準を厳しくするなら、日本産のものには日本の厳しい基準を適用しちゃうよ」ということだ。
※2
これは中部大学の武田邦彦教授も同じだ。彼は WHO の水の基準値が 1 ベクレル/リットルだと言っているが、これはスクリーニングレベルの話で、本当はガイダンスレベルと比べるのが正しい。武田氏にこのような初歩的な知識がないとは考えにくい(?)ため、一般人にわからない嘘を混ぜながら、自説に都合がいいように誘導しているとしか思えない。
※3
日本よりも低いとして引き合いに出されているベラルーシだが、チェルノブイリ原発事故直後の基準は、飲料水が370ベクレル、牛肉は3700ベクレルと、日本よりかなり高かった。ベラルーシの汚染限度の変遷は、「食品の暫定基準に対する疑念と不安が絶えない事情」に詳しい。日本はまだ「緊急時」なので現在は「暫定基準」だが、将来的には基準値が下がっていくと思われる。