事件【新章 東北学】赤坂憲雄(6)「福島」の不安と向き合う+(3/3ページ)(2011.9.5 07:40

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【新章 東北学】
赤坂憲雄(6)「福島」の不安と向き合う

2011.9.5 07:40 (3/3ページ)
福島県飯舘村(8月30日)

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福島県飯舘村(8月30日)

 福島は、いや、もう陸前高田まで巻き込んでいるので東北は、と言うべきでしょう。東北そのものが汚染地域のイメージを持たれてしまっている。白河以北が「一山百文」ならぬ「汚れた土地」と見なされる、それを認めることはできません。もし福島にノーマンズ・ランド(無人地帯)をつくってしまったら、日本地図は変わってしまう。国策の帰結として起きた原発事故を、手に負えないからとチェルノブイリのように放置すれば、きっと国家のモラル・ハザードを招きます。誰も国を信じなくなる。東北を捨ててアジアに向かうのですか。確実に、日本の経済や産業の構造が崩れていくでしょう。

 わたしたちはこの国の命運を左右する事態に直面しています。福島や東北だけのことではない。日本という国を維持していこうとするなら、どれほど巨大な資金や労力が必要であっても、徹底した除染作業を欠かすことができません。そのうえで、わたしたちは放射能汚染とともに生きることを選ぶしかないのです。

 低い線量の放射能の影響というのは、晩発性です。10年、20年後に健康的な問題が出てくるとしても、いくらかの時間の猶予はあります。たとえば福島県を医療特区として、最先端の医者や研究者を呼び集め豊富な資金を投入すれば、一定の準備はできるはずです。人類の未来に役立つ医学を、福島から創造していくのです。それは世界に対する貢献にもなるでしょう。そういえば福島県は野口英世の故郷でした。

 中途半端に逃げてしまったら負けです。日本には科学技術をはじめ、優れたものがたくさんある。そのすべてを動員して前向きに立ち向かうときに、混沌の底から日本の新しい風景が浮かび上がってくると、わたしは信じたいのです。(民俗学者)

 =次回は19日に掲載

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