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WBA・Sフライ級、清水が王者に 判定でカサレス破る
(2011年8月31日午後9時13分)
県勢初の世界チャンプ誕生−。世界ボクシング協会(WBA)スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦は31日、東京・日本武道館で行われ、福井市出身で同級7位の挑戦者、清水智信(30)=金子=が5度目の防衛を目指したチャンピオンのウーゴ・カサレス(33)=メキシコ=を2−1の判定で破り、自身3度目の世界挑戦で悲願のベルトを奪取した。
本県出身者がプロボクシングの世界王者となるのは初の快挙。清水は本来のフライ級より1階級上げての挑戦ながら、序盤から得意のアウトボクシングを展開し、左のリードパンチで距離を取ってペースを握った。
中盤は圧力をかけてきたカサレスのパンチをもらう場面もあったが、打ち合いでも引かずに戦い、再び主導権を手にした。
終盤は疲れの見える王者に鋭いワンツーやボディーを見舞い、優位に試合を進めた。判定は審判員2人が115−113で清水、1人が115−114でカサレスだった。
清水のプロ戦績は23戦19勝(9KO)3敗1分けとなった。
鍛えた接近戦 結実
5回、カサレスの猛攻が始まった。前進して距離を詰め、次々とパンチを浴びせる。挑戦者危うしか−と、はた目には映ったが、清水のハートは燃えていた。「ここでずるずる引いたら相手ペースになる」。あえて打ち合いを受けて立ち、パンチをもらっても、ひるまず拳を振るった。
本来より一つ上の階級で王者の重いパンチに耐え、ついには押し返したことが、終盤の清水の見せ場につながった。10回は右、左のワンツーが鮮やかにカサレスの顔面をとらえ、血しぶきがマットに散った。11回には劣勢をさとったか、王者が勝負をかけて突進してきたが、きっちりジャブやボディーを当てて撃退した。後は勝ち名乗りを聞くだけだった。
試合後、清水は「あの試合があったから今がある」と3年前の世界戦を転機に挙げた。世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者の内藤大助(宮田)に挑戦し、優位に試合を進めながら終盤10回、まさかの逆転KO負けを喫した一戦だ。
悔しさをバネに持ち味のアウトボクシングに加え、接近戦でも負けない体と技術を鍛えあげた。ブロッキングも磨いた。何より「精神的に強くなった」という成果を、大一番で存分に発揮した。
準備も怠りなかった。7月中旬に静岡・伊東で1週間の合宿を張り、猛暑の中を連日30キロ走り込んで強靱(きょうじん)な下半身をつくった。帰京後は計150ラウンドのスパーリングを重ね、12回を戦い抜くスタミナを養った。
左右の構えを頻繁にスイッチしてくるカサレス対策のため、右利きと左利きの選手を交互に相手にするスパーリングも取り入れ、感覚を磨いた。「右でも左でも全部のパンチにカウンターを合わせるつもりだった」と自信を持って臨んだ。
「このベルトは大事にする。でもいずれは(本来の)フライ級のベルトを巻かせてやりたい」と金子ジムの金子賢司トレーナー(47)は思いを語った。実現すれば、通常とは反対に階級を下げての“逆2階級制覇”。30歳の新王者、前途には夢が膨らむ。(水口浩樹)