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清水の世界王者に喜び極限 応援団総立ち賛辞
(2011年9月1日午前9時00分)
判定の結果が発表された瞬間福井県関係者らで埋まった応援席は興奮のるつぼとなった。「よくやった!」「おめでとう」−。試合中は、大歓声で清水選手の背中を押した応援団。総立ちで抱き合い、新チャンピオンをたたえる声と拍手は鳴りやむことがなかった。
ファンの依頼で後援会などが手配したチケットは約220枚。父惠治さん(61)や母景子さん(57)ら80人は、バス2台とワゴン車で会場に到着した。清水選手の東京の友人・知人も詰め掛け、応援席はそろいのオレンジのTシャツで埋まった。惠治さんや景子さんは「自分のボクシングを貫いてほしい。そうすれば十分に勝機はある」と思いを語った。
応援席は試合開始前から興奮状態となった。清水選手と7、8年前からの知人というバーのオーナー、佐野伸明さん(40)は約30人の常連客と観戦し「何試合も見てきたが、きょうは全く冷静に見られなかった」。
試合中は清水コールとともに「いけー、勝利しろーっ」「左、左ーっ」という掛け声が飛び交い、ペースをつかまれた中盤には「足、足ー、離れてー!」と絶叫が響き渡る場面も。
終盤、清水選手が攻勢に出ると興奮は高まるばかり。最終12回は「気合やーっ」「勝つ勝つ、絶対勝つ!」とボルテージは最高潮となった。大学のボクシング部の後輩、須田恵太さん(24)は「本当にうれしい。先輩は自分たちの誇り」と満面の笑み。佐野さんは「うれしくて、涙がとまらなかった」と赤い目で話した。
家族は1階アリーナ席で喜びを分かち合った。兄の宏昭さん(36)は「勝つことは信じていた。中盤少し厳しかったが、乗り越えることができた。精神面が強くなった証拠」と勝因を語る。「よくやったよ」と応援でびっしょりとなった汗をぬぐった。
母景子さんは「夢のようで、苦労が報われた。おめでとう」と喜び、父惠治さんは「うれしいのひと言。3ー0で勝利したかと思ったが、勝てて本当によかった。応援に来てもらったみなさんのおかげ」と周囲と握手を交わしながら感謝の気持ちを表した。「夢をつかんだ、大した男だ」とわが息子をたたえた。
恩師「よくやった」 県アマ連盟、笈田さん
世界チャンピオンとなった清水智信選手の高校時代の恩師で、県アマチュアボクシング連盟常任理事の笈田孝一さん(64)は「すごいことをやった。よう頑張った」と喜びを表した。指導を受ける清水選手の“後輩”たちも「いずれは清水さんみたいになりたい」と刺激を受けていた。
「最終ラウンドまでいったら勝つと思っていた」という笈田さん。試合は観戦しなかったが、描いた予想通りの勝利に「打ち合いなら負けていただろう。最後まで自分のボクシングができていたのでは」と分析した。
試合の2、3日前、清水選手から「ベルトを持って帰ります」というメールが届いた。新王者になった直後、笈田さんは「おめでとう。よく頑張ったな」と返事を送った。
「センスは良かった」という高校や大学時代、清水選手は日本で頂点に立つことはなかった。プロを目指したとき、笈田さんは「やめておけ」と止めたこともあった。それでも、持ち味である足を使い、間合いを取ったアウトボクシングに「最近はカウンターやアッパーがすごくうまくなった」と評価。「高校時代からよく練習した。その成果が実った」と世界王者への軌跡を振り返った。
新王者が誕生した夜、福井市の福井運動公園にあるボクシング練習場では、笈田さんの教え子たちも吉報を喜んだ。山口優香さん(明倫中2年)は「清水選手みたいに目標に向かって頑張る選手になりたい。目標はオリンピック」と話した。
この練習場で清水選手が練習する姿を見たことがあるという陶山昂汰君(春江高2年)は「将来は清水選手に追いつけるように頑張ります」と話していた。
信じ続けた12R 妻・静恵さん、労ねぎらう
新チャンピオン誕生−。場内アナウンスが響き渡るとリングサイドの清水選手の家族らは一斉に立ち上がり、歓喜のガッツポーズ。妻の静恵さん(29)も両手を高々と上げ、周りとハイタッチを繰り返した。笑顔はくしゃくしゃに崩れ、目には涙が浮かんだ。
「お疲れさまでしたと言いたい」と第一声。「ボクシングは最後の最後まで一発があるので、ドキドキで気が抜けなかった」と3年前の内藤戦を振り返り、「うれしいけど、逆にホッとした」と安どの気持ちを見せた。
試合前日までは清水選手の緊張がひしひしと伝わってきたが、当日になると比較的リラックスしていたという。この日は静恵さんなりに験を担いで会場に来た。朝は清水選手を一人にしてあげ、応援には短い丈のパンツをはくという二つを実行した。日本チャンピオンになったときもそうしたが、内藤戦で敗れたときは長いパンツだった。「ちょっと恥ずかしいんですが」と試合前照れた。
会場入り口では応援に駆け付けてくれたファンを出迎え案内役。試合中は手を合わせて祈る一方、打ち合いになれば「距離(を取れ)距離」「気持ち(で負けるな)気持ち」と立ち上がって声援を飛ばす気丈さも見せた。
陰日なたなく支える静恵さんに清水選手から当日午後にメールがきた。「いつもわがまま聞いてくれてありがとう。きょう、男清水、頑張る」。その言葉をしっかり受け止め信じた。
試合終了後、控室に戻る清水選手に報道陣が静恵さんへのひと言を求めると、声を絞り出し「やったよ」。2人でがっちり世界をつかんだ。