「こんな自動車メーカーとは出会いたくない」とゾクっとさせられる交通安全のポスター
自動車事故の問題は世界共通で、【制限速度を守ってほしいのが痛いほど分かる広告】や【事故の衝撃が飛び出す看板】などのように、海外のプロモーション、ポスターではあるが日本でも十分通用するものは星の数ほど存在する。今回紹介するのもその類で、一瞬理解に苦しむものの、何を意味するのかが分かった後は色々と考えさせられたり、絶句した後に、事故の恐ろしさを改めて認識できるというものである(【I Believe in Advertisng】)。
↑ ぼろぼろの自動車。名前はトヤツダ?
これはニュージーランドでは有数のワインや数々の食材の産地としても知られている、北島の東海岸にあるホークスベイ地方にある交通安全協会が提示したもの。ポスターの中央には完全に破壊された自動車の亡骸と、その上部に自動車名と思われるロゴが評されている。しかし「TOYAZDA(トヤツダ)」などというブランドは聞いたことがない。
と、右下のメッセージに目をやると「注意散漫な運転手なら、どこの交差点でもおこしてしまうかもしれません」との警告メッセージ。そこで写真をよく見直すと、左半分と右半分がまったく別の自動車であることが分かる。つまりこれは「一台の廃棄状態となった自動車」ではなく、「一台の自動車の真後ろにもう一台が思いっきり突っ込んで、前の自動車の後ろ半分と、後ろの自動車の前半分が押しつぶされ、一台の自動車のように見える状態」なのである。
そして上部の「TOYAZDA(トヤツダ)」の意味が理解できる。前方の白い車が「TOYOTA(トヨタ)」で、後方の緑色の自動車が「MAZDA(マツダ)」であったこと、その二台が一台に見えるかのようになるまで猛烈な勢いで衝突したため、一台の「TOYAZDA(トヤツダ)」となってしまったことを……。
同様の広告はもう二種類ほど用意されている。
↑ 「フォルクスワーゲン」と「ミツビシ」で「フォルクスビシ」
↑ 「ニッサン」と「スバル」で「ニッスバル」
状況を深くかみくだいて理解できない子供は、単純に「自動車と自動車が合体して新しい種類が出来た」と無邪気に喜ぶかもしれない。しかしこれが交差点での交通事故の結果出来上がった造形であることが(コピーから)分かる大人は、背筋がぞっとしてくるに違いない。
当然だがポスターの写真には一切人の姿は映っていない。しかし「トヤツダ」「フォルクスビシ」「ニッスバル」に姿形を変える前後の状態を想像すると、あまり考えたくない結論しか導き出せない。そしてその印象と共に、交通事故の恐ろしさが心に刻まれ、特に交差点での安全運転を心がけるようになる、という次第である。
なお一つ付け加えるとすれば。「ぱっと見」で分からなくするため、という配慮があるからだろうか、いずれのポスターも合成名が一種類の文字フォントで出来ている。これはやもすると、ポスターの意図を分かりづらくしている部分もある。例えば「TOYAZDA」なら「TOY」と「AZDA」で微妙にフォントを変えたり、色合いを変化させ、元々は別の自動車の名前だったことを分かりやすくする、という切り口も考えられよう。
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