社説

東日本大震災 放射性ごみ貯蔵/場所や保管期間を早く示せ

 唐突な施設設置の打診に、不信感や怒りが噴出したのは当然だ。福島第1原発事故という未曽有の災害に苦しむ中、住民や自治体にまた一つ、重荷を押しつけようというのだろうか。
 事故で発生した放射性物質で汚染されたがれきや土壌を一時的に管理する「中間貯蔵施設」を福島県内に建設したい意向を、政府が県などに伝えた。
 今後、除染などを進める上で、汚染物質の適切な管理・保管が不可欠との考えからだ。ただし、最終処分場にすることはないと強調している。
 だが、肝心の施設の建設場所や保管期間などには言及していない。住民にとっては、不安ばかりが残ったとも言える。
 県や地元自治体が受け入れの可否を検討しようにも、材料が決定的に不足している。政府は丁寧な状況説明と、具体的な情報の提供を急ぐべきだ。
 放射性物質で汚染された廃棄物や除染作業で発生した土などについて、政府はこれまで市町村ごとに仮置きする方針を示してきたが、その後の処分方法には触れてこなかった。
 先月26日に発表した基本方針で「処分場の確保は国の責任で行う」と明記。進め方については、「早急に処分場建設のロードマップを作成して公表する」との表現にとどめていた。
 除染作業が本格化すれば、汚染土壌などの廃棄物が大量に発生する。住宅地に近い仮置き場を、長期間にわたって放置するわけにはいかない。そこで中間貯蔵施設が浮かび上がったということなのだろう。
 突然の話に、佐藤雄平福島県知事は「困惑している」と繰り返した。事前の打診は全くなかったという。不快感をあらわにしたのもうなずける。
 放射性物質の飛散や、地下水の汚染などを防ぐ設備を想定しているとみられる。しかし、設置場所や規模、保管期間などによって施設の持つ意味合いは、大きく変わってくる。
 細野豪志原発事故担当相は「一定期間貯蔵できなければ、仮置き場と変わらない」と語った。ある程度の耐用年数を持った施設にしたいようだ。
 貯蔵の対象をどこまで広げるかも注目される。浄水場で出た放射性物質を含む汚泥などを対象とする可能性を、政府は否定していない。
 環境省は先に放射性濃度が1キログラム当たり8千ベクレル超、10万ベクレル以下のがれきや汚泥の焼却灰などについて、管理型最終処分場での埋め立てを認める方針を示した。これらの中間貯蔵を、どう位置付けるかも課題となろう。
 最終処分場にしないことを明言したとはいえ、県外に施設を造るのは容易ではない。福島の廃棄物を受け入れるところがあるかは不透明だ。
 住民や自治体は、中間貯蔵施設が事実上の最終処分場になることを最も警戒している。建設は到底認められないとの声が、一部で上がっている。
 議論を始めたいなら、政府は施設の具体的な内容に加え、最終処分場の建設場所をいつまでに決めるのかなどを、早急に明確にしなくてはならない。

2011年09月05日月曜日

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