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森林の除染、手付かず 平地より山間部が高線量 放置すれば汚染源に


 福島第1原発事故で、住民が避難した警戒区域と計画的避難区域の大半を占める山間部の森林の除染は、手付かずの難題だ。専門家の間では「森林の除染は事実上不可能」との見方もあるが、放置すれば流れ出る水を通じ汚染源になり続け、住民の帰還の障害になる恐れがある。

 共同通信が8月下旬、計画的避難区域で独自に線量を計測した際、民家が点在する福島県浪江町赤宇木の森林地帯で毎時約40マイクロシーベルト(地上1メートル)の最高値を観測した。線量は平地より山間部が高い傾向があった。政府が今月1日公表した線量分布でも、計画的避難区域の最高値は浪江町昼曽根尺石の森林地帯の毎時41・3マイクロシーベルト(同)だった。

 毎時40マイクロシーベルトが1年間続くと、1日16時間は線量が低い屋内にいるとしても積算被ばく線量は200ミリシーベルトを超え、現在の避難の目安である20ミリシーベルトの10倍以上となる。京大原子炉実験所の今中哲二(いまなか・てつじ)助教は「人が住める線量ではない」と指摘。「チェルノブイリ原発事故でも森林の除染は手付かずだった。除染は事実上不可能ではないか」と話す。

 一方、安斎育郎(あんざい・いくろう)立命館大名誉教授は「国の除染方針でも森林の優先順位は低いが、困難でも絶対に取り組まなければならない課題だ」と強調。森林の腐葉土を除去することで一定の除染効果が期待できるという。

 放射線医学総合研究所の市川龍資(いちかわ・りゅうし)元副所長も「放射性物質は木の葉に付着しやすく、葉が落ちてできる腐葉土に蓄積される傾向がある」と腐葉土除去の手法を支持。ただし「森林の除染は前例がなく、膨大なコストを伴うだろう。まず生活圏に近い森林から除染するしかない」と語る。

 福島県は面積の71%が森林で、多くが山地だ。政府は8月26日に決めた除染基本方針で森林について「面積が大きく膨大な除去土壌等が発生する」と難しさを認めた上、腐葉土を除去すれば、保水など「森林の多面的な機能」が失われる恐れがあるとして「検討を継続」と事実上棚上げした。

 (共同通信)

2011/09/03 20:35

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