【第1回】 2011年9月2日
[イ] その、なんでも善悪で振り分ける思考がダメなんだって。○×ではなく、AとBというふうに、上下ではなく左右並列に分けるんだよ。グラデーションで全体の中の境界線を考えていくのが、チャート思考ともほど近い、イシグロ流の「二択思考」。そう考えていくと、別にパワポがダメなんじゃない。キミの頭の中が料理そのものなんだから、そこに調味料としてうまくパワポを使えばおいしくなるだろう。
[ラ] えっ!? 使ってもいいんですか？ じゃあ使います。
[イ] 最初から全否定をしていない。ある程度までアイディアが固まったところで、操られないように道具として使えば、有効に決まってる。パワポじゃなくて、すべてをそこに頼ろうとする｢パワポ依存症｣の人間側の問題。酒やたばこやギャンブルが悪いんじゃなくて、ハマる側が悪いのと同じ。
[ラ] だって、メリットばかりでデメリットなんかないから、使いますよね？
本当に大事なことは紙1枚で伝わる
パワポ依存症は会社にとっても損害？
[イ] だからダメなんだよ。かかる時間という膨大なデメリットがあるでしょ。キミの給料払ってる会社にとっては、莫大な損害。たとえば、ぴこぴこ画面なんか動かしたりせず、紙1枚で仕事獲得できたらどう？
本当に大事なことは、それだけ削ぎ落としても十分伝わるし、みんなそうすべき。ＩＴ時代に入って、世界的に「仕事のための仕事」が増えている。メールのCCの使い方もだし、電話かけない、かけたら要領をえない下手さってのもそう。
[ラ] 給料の対価なんて、考えてもいませんでした。みんなそうなので……。
[イ] ｢みんながやってるから｣と、疑問を持たずに右へならえしてしまう伝染病のひとつが、「パワポ依存症」という病気だ。世の中にはびこるライフハックという処世術が、人間の創意工夫の力とオリジナリティを減退させている側面もあるのではないか。不肖Dr.イシグロはそれを教えるため、今日もいく！ さて、では、重病患者のキミは、頭の中を解剖させてもらうかな。おい、メス。
[ラ] そんな無茶苦茶な！ 理由をパワポで説明してくださいよお！
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【Dr.イシグロ 本日のカルテ】
◎患者：26歳／男性／ソフト会社勤務／営業
◎症状：パワポ依存症（重度／全治6ヵ月）
◎処方箋：パワポは道具にすぎない。道具にふりまわされない。
まずは、頭の中で企画を整理し、それを簡単に紙に書き出す。
パワポはそれを味付けする程度で。大事なことは紙一枚で伝わることを忘れない。
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【本日の格言】
天は人の上にパワポを作らず人の下にパワポを作る