[イ] えっ!……つまり、何も企画を考えもせず、ソフトを立ち上げると?
[ラ] 当たり前。だって、最良のツールなんだから、水先案内からすべてお任せよ。まず素直に、勧めたいソフトの名前とウリをタイトルに入力するね。
[イ] あなたは、企画を考えるとき、まずは自分なりに、手書きでメモしたり、ざっとアイディアフラッシュをテキストにしたりはしないのですか?
[ラ] えっ? しませんよ、そんなかったるいこと。だってパワポで見せるのに、遠回りしないほうが早いでしょ。紙に書くなんてとんでもない。どうせデータ化するのに、そんなことするのかと。できるビジネスマンは効率化を重要視。これだよね。
他の業務を全部止めて
プレゼンの資料作りにまる3日?
[イ] では、その効率化とやらで進めているプレゼン資料は、どのくらいの時間をかけて作成しているのでしょうかな?
[ラ] そうねえ、プレゼンの3日ぐらい前からは、だいたいは資料作りにかかりっきりだね。他の仕事はせずに超~集中。そんなオレの姿に、たぶん部内の誰もが一目置いてるね。だって、誰も話しかけてこないから。みんなよくわかってるよ。
[イ] 資料作りに3日もかけるんですか? しかも他の業務を全部止めて!?
[ラ] だってプレゼンは大事だから、気合い入れなきゃやばいでしょー。ぶはは!
[イ] ゴホン……。えー、不肖Dr.イシグロ50歳、ビジネスコンサルティングの世界に身を置き、30年近くになる者として、僭越ながら言わせていただきます。さきほどから聞いており思ったのですが、あなたのやっていることは「仕事のための仕事」になってはおりませぬかな?
[ラ] あん? 何言ってんのオッサン。うっせーよ。大事なことに時間かけんのが当たり前なんだよ。だから、パワポでがっちり資料作るだろうが!
[イ] ……フフフ。キミ、いまなんて言ったのかな……。
[ラ] えっ……。
[イ] ……あのねえ! おとなしく対応してたらちょっと調子づいてないかね。ここからは、この桜吹雪が目に入らぬか! 的な展開だぞ、無能君よ。