「みなさん進級おめでとうございます、これで召喚の儀式は終了です。この場はこれにて解散とします。あとの時間は各々の使い魔と親交を深めるために使って下さい。
なお、使い魔の名前は明日の授業までに考えておいて下さい。あと、自分の使い魔の習性等,分からないことがある人はこの後聞きに来るようにして下さい。」
コルベールが解散を宣言すると生徒たちはそれぞれの使い魔を連れて学院に戻っていった。
ヴィオレッタが学院の方に歩き出そうとすると一緒にいた子狐がこちらも歩いて帰ろうとしていたルイズの方へ走っていった。
子狐はなにやら膝をついて呆然としているルイズの使い魔の周りをぐるぐる回り出した。
遅れてヴィオレッタがちょこちょこ走ってくるのをルイズはじっと見ていた。
ヴィオレッタの父親であるヴォルテーヌ伯爵はルイズの父親のラ・ヴァリエール公爵と親交があり、ルイズとヴィオレッタは互いに顔見知りであった。
「ちょっとヴィオレッタ。自分の使い魔ぐらいちゃんと見ててよね。」
「ごめんね~ルイちゃん。」
「その呼び方は止めてって言ってるでしょ。あなたも少しは貴族らしくなさい!」
「大変失礼しました。ミス・ヴァリエール…ってこれでいい~?」
「まったく、あんたって子は…で、そのちょろちょろしてるのがあなたの使い魔?」
「そうよ~。ルイちゃんの使い魔ってこの人?」
「そういうことになるわね。」
「初めまして~私はヴィオレッタ・ド・ヴォルテーヌっていうの。どうぞよろしくね。」
ヴィオレッタはそう言うと優雅にというよりは可愛く一礼した。
「あんた、人が名乗ってるのにその態度は何よ!名前があるならちゃんと名乗りなさい!」
ルイズの剣幕に押されて彼女の使い魔は話し出した。
「ああ、ごめん。なんだかよく分からないけどとりあえず俺の名前は平賀才人って言うんだ。」
「ヒラガサイトー?変わった名前だね。」
「サ・イ・トだ。えーっと…ここって外国だよな?…それじゃサイトヒラガって呼んでくれ。」
「わかった~、それじゃサ・イ・ト・ヒラガって呼ぶよ。」
「…サイトだけでいいよ…それより聞いてみるんだけど…ここはどこだ?」
「え~とね、ここは…」
「だからトリステイン魔法学院だってさっきから言ってるでしょ。」
「そのトリステイン魔法学院も知らないしというかさっき人が空を飛んでたよな?」
「メイジが飛ばなくてどうするのよ!」
ヴィオレッタはそんな微妙にかみ合わない二人のやりとりを面白そうに見ていたが、何か不穏な空気を感じたので
「私、この子の名前を考えなきゃいけないからルイちゃんまた後でね~。」
その場から退却した。
「それじゃ~あなたの名前をかんがえましょうね~。どんな名前がいいかな~?狐だからコンタローとか、フォックンかな?それとも…」
寮の自室に戻り、にこにこしながらヴィオレッタが名前を考えてると…
-僕の名前は白面金毛九尾の狐だよ-
彼女の頭の中に声が響いた。
「えっ、今の何?」
びっくりして辺りを見回してもそこには自分の使い魔がいるだけ。
「もしかしてあなたが?」
-そうだよ。僕が君の頭の中に直接話しかけてるんだよ-
「へえ~、使い魔と主人ってってお話ができたんだ~。」
-まあ、全ての使い魔がそうとは限らないんだろうけどね。それより僕の名前は白面金毛九尾の狐っていうんだよ-
「ハクメンコンモウキュービノキツネって…変な名前~。…じゃあハクメンちゃんって呼ぶね?」
-その呼び方は…イケメンの出来損ないみたいで…別の呼び方がいいな-
「イケメン?なにそれ?…じゃあキュウちゃんでどう?なんか響きがかわいいし、いいんじゃない~?」
-それもなんだかな…他になにかない?-
「え~?キュウちゃんにしようよ~これじゃないとヤダ!」
その場で手足をばたばたさせているヴィオレッタを見て
-そ、それじゃあキュウでいいよ…今までも名前なんて適当に名乗ってたしね…まぁ…-
使い魔の子狐はやれやれといった感じで主人の提案に賛成するのだった。
「それじゃ~あなたの名前はキュウちゃんね。よろしくね、キュウちゃん。」
-こちらこそよろしく頼むねご主人様-
「ところでキュウちゃんって何が出来るの?」
-いきなりどう答えていいのか分からない質問だね?-
「そういえば使い魔って主人の目になれるんだよね?」
-ころっと話が変わるし…-
「え~っと…こうかな?…ってなにこれ?」
ヴィオレッタは意識を使い魔の方に向けて集中してみた。すると目の前に不思議な景色が見えてきた。
「カーテン?足?それに何この白いの?………ああっこれ私のパンツ!」
そう、彼女は自分のスカートを下から覗いていたのだった。
「キュウちゃんのエッチ~!変態!マリコルヌ!」
-最後のは分からないけど…僕の視線で君を見たらそうなるんだからしかたないじゃないか。べつに君の下着に興味は無いし-
「興味はなくてもレディーの下着は覗いちゃだめなの。」
慌ててヴィオレッタは視覚を自分のものに戻してキュウを自分から少し離れた場所にやった。
まさか使い魔の視線がこうまで低いとは思ってなかった。
思い返してみれば男子が今日召喚の儀式で召喚した使い魔の中にはネズミや蛇やトカゲもいたような気がする。
「明日からは他の使い魔の動きには要注意ね~。」
特に地面を歩く小動物系の使い魔には注意しようと思うヴィオレッタであった。