(しばらく同文をブログの最初に記述します)
まひるのサンタさん 腐食から
海の様子を見に行って横棒に足をかけたらボソッと落ちた!
海岸の歩道脇のこの鉄製の柵は何十年も経ったように見える。
しかし、本当は5〜6年だ!
たえず波しぶきがかかるところでは腐食が激しくボロボロ落ちていく。
海岸沿いにお住まいの方は、よくご存じの海風による腐食です。
さて、本題。セシウム・・・ほとんどの人が見たことも聞いたこともなかった金属でしょう。こういった場合には、化学の知識を動員します。まず、周期表から
セシウムは、Cs一番左の下から2番目にあります。(ご確認ください)
この縦に並ぶ金属 上から
Li(リチウム)
Na(ナトリウム)
K(カリウム)
Rb(ルビジウム)
(ここからガラス管保管でしょうか)
Cs(セシウム)
Fr(フランシウム)
は、アルカリ金属といわれ、非常に反応しやすい金属なのです。現在よく使われているLi-ion(リチウムイオン電池)が、不適切な利用を行うと爆発騒ぎを起こすのはご存じではないでしょうか。
ナトリウムは、皆様よくご存じの食塩の成分(NaCl)です。非常によく知られた物質です。
このナトリウムを見たことがある人は、ほとんどいないのではないでしょうか?鉄、アルミニウム、金、銀といった いわゆる我々がよく知っている安定した金属とは全く性質が異なります。
空気中の成分と爆発的に反応を起こしてしまうため、空中で保管することはできず、石油などに入れて保管する必要があるからです。
ナトリウムを単体で大量に利用しているのは、ご存じもんじゅ。ナトリウム漏れ事故の動画です。ナトリウムにより配管、支持構造物がぼろぼろになっているのがよく分かります。すなわち金属ナトリウムは、腐食性が非常に強いのです。
次に英語ですが、アルカリ金属の性質 空気酸化や水との反応
Li(リチウム) -> Na (Sodium) -> K (Potassium) -> Rb(Rubidium) -> Cs (Caesium)
と比較しています。最後の水との反応を見てください。右に行くほど反応が激しくなり、最後のセシウムの時には、水槽が爆発します。周期表が下になればなるほど、金属が凶暴となる印象で、反応が激しくなります。
(簡単なビデオの説明)
・アルカリ金属には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム の6種類がある
・全て柔らかい金属で、ナイフで切ることができる。
・最初のカットは、リチウム。ナイフで切るとメタル色がみえる。空気と反応して徐々に黒くなる
・ナトリウムも切ることができるが、リチウムよりも早く黒くなる
・カリウムを切ると、すぐに変色してしまって、メタル色を見ることはできない。
・周期表の下になるに従って、空気との反応スピードが速くなる。
・最後の水槽への投入は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの順。最後水槽が爆発するのは、セシウムを投入したとき。
もう一つ別のセシウムと水との反応動画(Slow Video)
我々はこのようにとてつもなく反応しやすい金属と戦わなければならないのです。冒頭に掲げた塩害(ナトリウム)以上の反応を持つ物質が金属につくとどうなるのでしょうか?単に、物質の上にくっつくというよりも、物質と簡単に化学結合しそうです。
ソビエトではどうなったか。
放射性セシウムの恐怖 前編『除去を諦めたロシア』 から
チェルノブイリ原子力発電所の事故から25年。
半減期が約30年の放射性セシウムによる土壌汚染が問題になっている。しかし、一方で放射性セシウムの除去を何年も行ってきたが、ロシアは結局諦めてしまった。それは何故なのか。
チェルノブイリ原発事故では大量の放射性セシウムを含む放射能が飛散した。放射性セシウムは非常に反応しやすい物質で、常に他の元素と結合した状態で発見されている。IAEAが行った環境影響調査結果では、「屋根材やコンクリートにも容易に結合している」と報告がされている。
放射性セシウムの半減期は30年。ガンマ線という波長の短い電磁波を光の速さで放射する。そして生物に衝突し、DNAを傷つける。飛散距離が長く、これを遮蔽するには10cm以上のコンクリート、鋼鉄、鉛、水しかない。
いかがでしょうか、セシウム除染が非常に困難と考えられる理由を納得していただけたでしょうか。
日本では、次のような記事が流れています。
産総研、土壌のセシウム除去で新技術
2011/9/1 11:32
産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は1日までに、土壌中のセシウムを除去する新技術を開発したと発表した。低濃度の酸と顔料の一種であるプルシアンブルーを利用する。放射性セシウムを含む廃棄物の量をもとの土壌の150分の1に減らせる見込み。従来手法よりも扱いやすく低コスト化が期待できるという。福島県などでの除染に役立てたい考え。
土壌中のセシウムは特に粘土粒子にくっついている。新技術はまず薄い硝酸か硫酸を土壌に通して粘土からセシウムを水溶液中に抽出する。
薄い硝酸を使った場合は200度、45分でほぼ100%抽出できた。さらに、水溶液中のセシウムイオンをプルシアンブルーの微粒子に吸着させた。微粒子の量は汚染土壌の150分の1で済み、廃棄物を減らせる。
実験には非放射性のセシウムを使ったが、放射性セシウムでも同様の結果が得られるという。
従来のセシウム抽出法は高濃度の酸を使うので取り扱いが難しく、コストもかかっていた。農地の土壌を傷める難点もあったという。新技術の酸は濃度が従来の12分の1と薄く利用しやすい。今後、協力企業を募り実証試験を進める予定だ。
うまくいけばいいのですが。。。
セシウム・・・それにしても、放射能がなくても恐ろしい金属です。
冒頭の塩害の写真。これをどうやって、元通りにします?我々にできるのは、このガードレールを撤去するだけではないのでしょうか?
塩(ナトリウム)よりもはるかに結合性の強いセシウム、それを除染できるといわれて、あなたは信用できますか。
注:もちろん、セシウムは単体セシウムではなく、塩(えん)になっています。しかし、海風よりもはるかに強い腐食能力があるのは間違いなく、それゆえコンクリートにも、金属にも容易に結合してしまうのです。(チェルノブイリで証明されています)
反応性が非常に高い金属原子が、ごくごく微量ばらまかた。しかも半減期が30年
除染が非常に困難な理由です。
■関連ブログ
原子力発電入門(8)−核分裂生成物の半減期と病気2011.8.15
原子力発電入門(6)放射能と放射線
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手間と費用の莫大さは除染をやらなくてよい理由には全くなりません。
そして法的に、汚染を発生させて被害を拡大させ続けている責任者が、除染という原状回復と汚染損害賠償についてすべて費用負担すべきものです。
今放出された放射性物質が微量でも大きな被害を及ぼし、除染がいかに困難であるかがよくわかりました。
ありがとうございます。
(前回のリンク先ブログも勉強になりました)
除染すればまた元通りに暮らせるようになると希望を抱いている方も多いと思います。また、現地の子供たちが雑巾片手に除染と称して何の準備もなく拭き掃除をしている様子に胸がつぶれる想いです。
そんな中利害のあるものたちが責任のなすりつけ合いをし、既得権益を握り締めたまま、または、自分の名誉欲のみに走るふとどきな態度にはらわたが煮えくり返ります。
国じゅうに原発が立地している日本では今の状況は人ごとでなく、一度事故が起きれば、海外へも大きな影響があり、それは回りまわって自分たちに返ってくるのです。
自分の生活におぼれずに、注視し続け、できるときには声を上げてゆきたいと思いました。
セシウム除去ではありませんが、7月に類似の視点からセシウム化合物の毒性に関する記事を掲載しています。ご参考までに:
http://techpr.cocolog-nifty.com/nakamura/2011/07/post-19c9.html
※URL欄にも同記事をリンクさせていただきました。
私も同じ話をtwitterで今朝つぶやいたところでした。
産業技術総合研究所の理事に元経産省が2人ほどいるのも気になります。http://www.aist.go.jp/aist_j/information/director/director_main.html#director_ono