Kianu



1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:00:20.68ID:flZ1wfTAO
もう何年も前の話だけど






3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:01:18.78ID:GcDKo98p0
ホームレスをおかずに飯食ってたのか






5: 【7m】 :2011/09/01(木) 07:01:51.39ID:BVWnAwxO0
同卓してて臭くなかった?






6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:04:50.59ID:flZ1wfTAO
>>5
公園で洗ってたからそんなに臭くなかったよ






8: 忍法帖【Lv=16,xxxPT】 :2011/09/01(木) 07:15:25.27ID:LS3HLgMaP
ホームレスでも仲良く出来るお前はたいしたもんだ。



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:15:00.58ID:flZ1wfTAO
まぁ暇な奴は聞いておくれ
携帯だから遅いのは勘弁な


当時、俺は小学生4年生
父は俺が生まれてすぐ事故で死んだ
だから母と二人で生活してたんだけど
母は生活のために朝から晩まで働いてたから
家庭での会話なんて一切なかった

おまけに学校でもぼっち
でもイジメられてたわけじゃなくて
田舎だったせいか、片親ってだけで仲間に入れて貰えなかったんだ
何か腫れ物を扱うようなカンジ
それを子供ながらに感じ取ってたのか、自分からもあえて友達を作ろうとはしなかったんだ






9: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 :2011/09/01(木) 07:16:49.96ID:mPhcTASE0
逆にホームレスがたいしたもんだろ






12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:23:30.21ID:flZ1wfTAO
学校でもぼっち
家でもぼっち

まぁそんな俺にも一つだけ料理という趣味があった
母は作る暇もない人だったから
よくホカ弁とかパンとかを置いててくれたんだけど
ある日テレビで料理番組を観てから興味を持ち
そこからレシピをメモして作ったり見様見真似で作ったりするようになった
それをラップしてテーブルに置いてたら母が喜んでくれたみたいで
月に一度お小遣と共に食費をくれるようになった

というわけで俺はめでたく食事係になったわけです






15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:29:38.60ID:flZ1wfTAO
食事係になってからは飽きもせずに毎日飯作っては、
夕方に一人でテレビ観ながら食うという生活を送っていた

でもやはり寂しかった
飯は我ながら美味いと思ってたけど
母にすら「おいしい」と直接言われたことなかった
置き手紙に書いてたことはあったけど

そして寂しさに耐え切れなくなった俺は妙案を思い付く






17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:40:41.08ID:flZ1wfTAO
ある日の夕方、俺はいつも通りに晩飯を作るとそれを皿に盛ってラップをした
確かカレーだったと思う
俺はその皿とスプーンを持って近所の空き地へ向かった

空き地には大型家電が不法投棄されてて
中がどうなってんのかはわかんなかったけど
空き地の周りには入れないように無数の鉄線が引いてあった

しかし数日前に大人がなんとか潜れるくらいの穴があるのを見つけてたから
そこから入って空き地の隅にあるデカい土管の上によじ登った

単純に外で食べてみたくなったんだ
ピクニック気分というかなんというか
でも近所とか学校の奴にそんな現場見られるのも嫌だったので
俺にとって空き地は絶好の場所だったんだ






18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:50:05.85ID:flZ1wfTAO
俺は夕暮れを見ながら無言で食った
外で食ったからといっても、所詮はぼっちなのだ
それでもいつもとは違う食事風景を俺はすごく気に入った

ので、それから毎日晩飯を空き地で食うようになった

漫画や時々デザートにアイスを持っていくと楽しさは倍増になった

そんなことをし始めて3日目くらいかな
俺はその日も灰色の土管の上で飯を食っていた
その日のメニューは忘れもしない、スパゲティーとおにぎりだった

そしてちょうどスパゲティーを食べ終わって、
漫画読みながらおにぎり食べてるところに事件は起こった






20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 07:55:25.75ID:flZ1wfTAO
座っている土管の中からトンッと音がしたんだ
最初は気のせいだと思ってけど
それからまたトントンッて音が聞こえて
猫か何かが居るのかと軽い気持ちで土管の中を覗いてみたら
寝転がって新聞読んでるおっさんとバッチリ目が合ってしまった






23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:00:22.40ID:flZ1wfTAO
驚きのあまり声も出なかった
通い詰めてた空き地にまさか人が住んでると思わなかったんだ
そして俺は驚いて絶句したと同時に
持っていたおにぎりを地面に落としてしまった
そしたらおっさんが

「うわっ、もったいな。それ食べていい?」

と言ったので
とにかくおっさんが怖かった俺は無言で何度も頷いた






27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:10:51.41ID:GcDKo98p0
まさか土管のある空き地が実在するとは






28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:12:49.73ID:flZ1wfTAO
律儀に了承を得たおっさんは新聞を畳んで土管の中から這いずって出てきた

白のTシャツにベージュのズボンとおっさんスリッパ
どれもボロボロだったけどおっさんの全体像は意外とそこまで汚くなかった

そして砂がついたおにぎりを拾って食うおっさんに
まだ恐怖心を抱きつつも、俺は子供特有の無邪気な質問を投げた

俺「なぁ…おっさんはホームレスなん?」

おっさん「直球やなぁ。まぁそうやけどホームレスって言うなや」

俺「何で?家無いんやろ?」

おっさん「何か聞こえ悪いやん。可哀相なカンジするやろ」

俺「家無いの可哀相やん」

おっさん「だから可哀相って言うなや」


その日から何と無く友達になった






29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:19:18.58ID:8KnzTTIiO
おっさんのスペックたのむ






32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:25:42.21ID:flZ1wfTAO
>>29
詳しいことは聞いてないから実際はわからんけど
40代くらい
中年体型(腹が若干ぽっこり)
ハゲてない






31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:22:24.02ID:flZ1wfTAO
それからも俺は相変わらず空き地へ通った
おっさんはというと、
起きて新聞読んだりしてるのが2割
土管の中で寝てるのが8割だった

起きてる日は自分のぶんの飯食いながら
どうでもいい話の相手をして貰ってたけど
おっさんが8割方寝てるおかげで俺は相変わらずぼっち飯だった

それが面白くなかった俺は
またしても妙案を思い付く






36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:37:49.77ID:flZ1wfTAO
とある夕方、俺はいつものように空き地へ向かった
でも土管に座ることはせず、いつもよりデカい荷物を地面に置くと
遠慮もせずに土管の中を覗き込み
案の定寝腐っていたおっさんを揺さ振って起こした


俺「おっさん、起きてや」

おっさん「なんやねん…今寝てんやから邪魔すんな」

俺「おっさんいっつも寝てばっかりやん。カビ生えんで」

おっさん「もう生えてんちゃうか。お前にもカビつけたろか~」

俺「きっしょ!そんなんいいから飯食おうや」

おっさん「えー俺今日飯無いから無理」

俺「いけるって。俺おっさんのんも作ってきてん」

おっさん「えっ?ホンマか?くれるん?」

俺の誘いに目を輝かせたおっさんは
思惑通りすぐに中から出てきて
俺がいつもしているように土管の上にスタンバイした






38: 【11.5m】 :2011/09/01(木) 08:42:54.54ID:9Z5zGgNW0
おっさん上手く使ってなにか利益をあげるのなら分かるが、飯を使っておっさん釣るとはまさに鯛で海老を釣るだな






39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:47:43.94ID:flZ1wfTAO
俺も定位置に座ると持ってきたリュックサックの中から弁当箱を二つ出した
デカい箱はおっさんでそれより若干小さい箱が俺
中身はギュウギュウに詰めたオムライスだった

おっさん「うわぁーお前ケチャップすごいやん。蓋の裏にべったーなってるやん」

俺「うっさいなぁ。美味しかったらいいやん」

とは言ったものの母以外に食べてもらったこともなければ、
当然誰かに感想を貰ったこともなかったので
味に自信があるかと言えば正直微妙だった

けどそんなことは言いたくなかったので
俺はおっさんがオムライスを口に入れる瞬間を横目でチラチラと見るのが精一杯だった

そして一言

おっさん「おーホンマや。めっちゃ美味いやん」

それが空腹だったからか純粋な評価なのかはわからなかったけど
俺は内心おしっこちびりそうなくらい嬉しかった






40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:47:51.42ID:GcDKo98p0
今日飯無いから無理ってことは、いつもは>>1が飯食う時にはおっさんも何かしら食べてたのか
何食ってたんだ?






45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:01:54.23ID:flZ1wfTAO
>>40
パンとか食ってた気がする
何にも食わない日もあったよ
腹減ってないねん、とか言ってた
今思えば強がりだよね






44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 08:59:41.13ID:flZ1wfTAO
それからは母と俺と密かにおっさんの分の晩飯を作るようになった
遠慮してたのかおっさんは大食らいではなかったので
材料などの負担はさほどなかった
2人分も3人分もあまり変わらないのだ

そしていつしか俺の生活は
夕方飯を作って空き地へ行き、
おっさんと今日あった事の話とかしながら飯食って
8時ぐらいには家に帰るというものになっていった
もっと話してたい日もあったけどおっさん曰く

「おっさんだってまだ捕まりたくはないねん」

ということで必ず8時には強制帰宅させられてたのだ






47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:08:03.35ID:kDvwLnFp0
えっ…なにこれ?…いい話じゃん






49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:10:24.19ID:bVh8dhvvO
「ホームレスと中学生」






51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:10:45.36ID:flZ1wfTAO
そして夏休みに突入すると遊び相手が居ない俺は
例の空き地へ入り浸るようになった

その頃になると飯だけでなく
二人で色んなことをして遊んだ
おっさんは面倒臭いオーラが半端なかったけど
それでも最終的にはいつも付き合ってくれた

ある時は家から持ってきたコロコロを回し読みしたり
不法投棄された家具の山にお互い色の違うビー玉を隠して
それを先に探し当てたほうが勝ちというゲームをしたり
夏休みの宿題を手伝ってくれたりもした
ちなみにアサガオの観察日記は
おっさんが担当してくれた
もちろんアサガオは空き地に置いてた






55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:17:50.20ID:flZ1wfTAO
おっさんとの出来事は多過ぎて何を書けばいいのかわからなくなってきたので
知りたいのがあれば言ってください

おっさんと風呂
おっさんと宿題
おっさんと土管の中身
おっさんと特技

なければ適当に書くよー






56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:18:20.62ID:RcQTKuPs0
おっさんと土管の中身気になる






64: 【6.3m】 :2011/09/01(木) 09:27:38.44ID:9Z5zGgNW0
俺んとこのおっさんは歌歌うのが好きだったな
よく分からん昔の歌を鼻歌で歌うんだ
下手くそだったなぁ…
あれから10年、あのおっさんまだ生きてるかなあ…






65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:34:14.42ID:B+lIr0cA0
全国にいろんなおっさんいるなぁ






67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:38:27.70ID:flZ1wfTAO
子供というものは例に漏れず秘密基地の類が好きだったりする
当然俺も漫画やテレビで見て大好きだった
しかしぼっちの俺には秘密基地を作って遊ぶ友達など皆無
所詮妄想の中でしか遊べないのだとぼんやり思ってた

が、秘密基地は意外と近くにあった



俺「なぁ、おっさん」

おっさん「ちょお待てって。もうちょっとで読み終わるから」

俺「いやそうじゃなくて、おっさんの土管の中ってどうなってるん?」

おっさん「はぁ?どうって別に…普通やけど」

俺「土管とかもう普通ちゃうやん」

おっさん「ドラ○もんだって住んでるやん」

俺「ド○えもんは土管に住んでないって」

おっさん「あ、ちゃうわ。マリオやわ」

俺「じゃあ俺マリオでいいから見せてなー」

おっさん「ちょっとだけやでー」






68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:38:51.78ID:flZ1wfTAO
そんなわけで初めて土管の中に入ってみると
下にはダンボールが何枚も敷いてあって
床になる面がなるべく平らになるようにしてた
あとは拾ってきたであろう新聞とエロ漫画雑誌、
小さい懐中電灯(電池切れ)に毛玉だらけの毛布
小汚いリュックサックがあった
中身は見てないから知らないけど
加齢臭だけが漂うつまらない秘密基地にうんざりしたのを覚えている

俺「俺のワクワクを返せ」

おっさん「もうちょっとで読み終わるって!」


おわり






70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:42:00.41ID:flZ1wfTAO
じゃあとりあえず小話は後にして続き書きます
自分で振っといてごめんね

先に言っておきますが一応オチはあるけど別に面白くないからね!

ただの思い出話です






73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:44:48.21ID:MU2yfrOa0
このおっさんはもう失うものが無いから優しくなれるんだろうな






79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:53:42.33ID:flZ1wfTAO
俺「あれ…?おっさん…?」

それは突然だった
いつものように昼過ぎに空き地へ行くと
その時間だとだいたい土管から出てきて
何かと用事をしているはずのおっさんが居なかった
まぁ今日は特に暑いしまだ寝てるのかもと
土管の中を覗いてもやっぱり居ない
居ないどころかおっさんの家財道具一式無くなっていたのだ

最初は驚かせるためにどこかに隠れてるのだろうと
ゴミの山を探してみたものの結果は同じ
俺は土管に座り夕方まで途方に暮れた






81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:54:58.46ID:MU2yfrOa0
ちょ






82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:55:25.65ID:RcQTKuPs0
え、ちょっと おっさん おい おっさんどうした






85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:01:44.98ID:hIc5TwYtO
おっさん……(´・ω・`)






86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:04:45.80ID:flZ1wfTAO
探すにも探しに行く当てもなかった
おっさんとは空き地以外で会ったことはなかったし
昔からぼっちだった俺は外で遊ぶことなどほとんど無く、
自宅付近と登下校以外には土地勘0だったのだ

俺はひたすら待った
持ってきた飯にも手を付けずに
三角座りをしながらただおっさんを待ち続けた

なぜおっさんは居なくなったのか?
家に帰った?
事故?病気?
それとも俺のことが嫌いになった?

正直、おっさんが死ぬよりも嫌われることのほうがよっぽど怖かった
想像しただけで涙が出そうだった
だけど日頃のぼっちのおかげで泣くのを我慢するのは得意だった俺は
夕日が落ちてもただただおっさんを待ち続けた






90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:08:18.50ID:uZM2+lQ20
おっさん「あいつは俺なんかとツルんどったらあかん。友達ぎょうさんできるとええな。…じゃあな」






94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:13:34.10ID:flZ1wfTAO
そして腕につけていた安物のデジタル時計が7時を表示する頃、おっさんは普通に帰ってきた

俺は思わず駆け寄っておっさんの汚いシャツを掴み勢いよく引っ張った

俺「おっさんのアホ!!どこ行ってたん!?」

おっさん「なんやなんや、心配してくれとったんか?すまんなぁ」
俺「すまんなぁじゃなくて!!何しててん!?」

おっさん「それがなぁ、ちょっと面倒臭いことなってもうたんやわー」

苦笑いするおっさんと俺はとりあえず土管に座ることにした






101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:22:53.45ID:flZ1wfTAO
おっさんの話はこうだった

おっさんは普段、俺を帰した後は朝方の公園で風呂と洗濯物をしてたんだけど
その一部始終見てしまった近所の人が通報して、
公園から帰ろとしたところに警察がやってきたんだそうな

でもおっさんは警察が自分に向かって歩いてくるのをいち早く察知して
事もあろうかその場から猛ダッシュで逃げたのだ

そして寝所を知られては終わりだと
念には念を入れて一日中街をうろついてたらしい






105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:33:46.07ID:X3gY6pfI0
よかったおっさんは生きてたんだ






106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:34:07.18ID:flZ1wfTAO
俺「ほんならもういけるん?」

おっさん「いやー…微妙やなぁ」

俺「えっ?逃げれたんやろ?」

おっさん「せやけどこんなちっちゃい町や。ここがバレんのも時間の問題やろなぁ」

俺「嘘やん…どないしよ…」

おっさん「どないしたもんかなぁー」


深刻な俺とは逆におっさんは呑気なもんだった
俺が手をつけずに残していた飯を食いながら、
今日は歩き疲れたわとか言って早々に土管へ潜り寝てしまったのだ
俺は腑に落ちないまま仕方なく家へ帰り、
珍しく家に居た母に何時だと思ってるんだとガミガミ怒られてしまった






108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:36:43.38ID:lyN1Rtsx0
こういうのも青春ナ感じがしていいな






115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:46:19.78ID:flZ1wfTAO
次の日まだ不安が残っていたのでいつもより早目に空き地へ行くと
おっさんが下手くそな歌を唄いながらラジオ体操をしていて
すこし安心したのも束の間、
その日の夕方晩飯を一緒に食っていると
明日からバイトをするから昼間は来るなと言われてしまった

俺はまたおっさんが黙ってどこかに行くのではないかと
また不安になったけど夕方なら来ていいと言われたのでそれ以上は深く考えなかった

しかし別れは着実に近付いていたのだった






118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:53:32.82ID:flZ1wfTAO
そして昼間は家で時間を持て余し、夕方に空き地へ行くようになった
相変わらずおっさんはおっさんのままで
飯を食いながらくだらない話ばかりしてた

と思ったらおっさんが唐突に言った

おっさん「明日遊びに行こかー」






119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:53:48.99ID:WnVn7AOp0
おっさん・・・・・






120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:54:44.70ID:B6awYj7k0
やめてくれ・・・






123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:04:46.50ID:mgyMAKk90
ホームレスって良い人多いんだろうな…猫がなつくぐらいだし






125: 【15.2m】 :2011/09/01(木) 11:06:37.69ID:9Z5zGgNW0
>>123
多いだろうな…
でも今の俺の近所にいるホームレスはなんか怖い、睨んでくる…






124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:04:59.12ID:flZ1wfTAO
あまりに突然過ぎて俺はびっくりしてしまった
と同時に嬉しかった

おっさんと出掛けたことなんてなかったし
何より夏休みの絵日記が真っ白だったから
それが埋まるのが最高に嬉しかった

おっさん「ほんでどこ行きたいねん」

俺「遊園地!」

即答だったと思う
ベタかもしれないけど、休みの日に遊園地へ行ったという同級生の話が
実はすごく羨ましかったのだ

おっさん「そうかーほんなら明日遊園地行こか」

俺「約束やからな!やっぱめんどいとか無しやからな!」

おっさん「どうやろなぁー」

俺「えーっ!!!!」

おっさん「ハイハイ嘘やて」


そんなこんなで翌日、空き地に集合して遊園地へ行くことになった






127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:11:08.52ID:flZ1wfTAO
その日の夜はよく興奮して眠れなかった
学校の遠足なんかじゃこれっぽっちも楽しみじゃなかったのに
おっさんと遊園地へ行くためにリュックサックを用意し、
お小遣で買ったお菓子やらを詰めるのは
それだけでワクワクしたのだった

翌日、朝早く起きた俺は張り切って弁当を作りリュックに入れて
水筒を肩から斜めにかけると浮足立つのを抑えながら空き地へ向かった






131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:18:02.29ID:flZ1wfTAO
いつもの場所でいつもの格好で土管に座るおっさん…

とは少し違っていた
具体的に言うとまず無精髭が綺麗さっぱり無くなってて
髪もボサボサだったのがある程度切って整えられていた
顔も何だかサッパリしてて、まるで風呂に入れた後の野良犬のようだった
まぁ入れたことないから知らんけど

とにかく見違えるようなニュータイプに変貌していたのだ

服以外は






132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:20:09.45ID:g53fDkDNO
ホームレスもなりたくてなるやつなんかほとんどいないだろうからな

色々辛さを味わってる人間はホームレスとか関係なく性格は優しいよ

逆にどうしようもないクズもたまにいるけどな






135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:27:35.47ID:flZ1wfTAO
俺「おはよー…あれ?おっさん何か綺麗になってない?」

おっさん「おはよーさん。せやろ?ちょっと格好つけてみたんや。ええやろー」

俺「まぁ汚いよりはいいけど」

おっさん「お前は愛想無いやっちゃなぁ」

俺「服があかんわ」

おっさん「さすがにそこまで手回らんかってん。でもこれかて昨日洗濯したやつやねんで?」

俺「え~…」

実際は別にどうでもよかった
そもそもおっさんが小綺麗にしてくるなんて予想外だし
それはそれでもう慣れてたので周りの目も気にならなかったけど
せっかくここまで綺麗にしたのにと勿体ない気持ちが生まれたのだ

そして俺はまたしても妙案を思いついた






137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:28:01.47ID:kDvwLnFp0
おっさん優しすぎる
こんなに人間的にいい人なのがホームレスにならないといけないなんて社会は厳しい






139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:40:02.09ID:flZ1wfTAO
俺「ちょお待ってて!」

空き地からすぐそばにある自宅まで俺は猛ダッシュした
そして家へ入り、母が寝ている横を音を立てないように忍び足で通りタンスを開けた
そして少し悩んだ末に目的の物を持って、また猛ダッシュで空き地へ戻った

おっさん「なんやねん、忘れモンかぁ?」

俺「ちゃうわ!これ取りに行っててん。おっさんサイズ合うかな?」

おっさん「え?何やコレ、こんなデカいサイズの服どないしたんや?」

俺「それおとんのやつやねん。おかんがタンスにずっと仕舞ってたのん思い出してさぁ」

おっさん「はあぁ?返してこんかい。そんなん勝手に持ってくんなアホ」

俺「ええねんって。もう誰も着られへんし、勿体ないやんか」


そうして渡した服はおっさんにはちょっと小さかった






142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:45:48.48ID:YDR8eqZz0
三丁目の夕日に出てきそうな話だな

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/409183728X/2log0d-22/ref=nosim/






233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:09:43.51ID:flZ1wfTAO
おっさんには家族の話はしたことがなかった
そしてするつもりもなかった
今思えば大人相手に気にすることもなかったのかもしれないけど
元々家庭の事情によってぼっちへと導かれてきた俺には
この話題は何が何でも言いたくなかった

だからおっさんは俺に父が居ないなんて
全く知らなかったはずなんだけど
察してくれたのだろうか

ピチピチのポロシャツと丈の短いズボンに身を包んだおっさんは
それ以上何も言ってはこなかった


そしていざ遊園地へ






237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:20:55.70ID:flZ1wfTAO
電車に揺られること小一時間
途中で乗り換えに失敗して責任のなすり付け合いをしながらも
どうにかこうにか遊園地に到着した

おっさん「大人1枚とガキ1枚」

俺「ガキなんて券売ってへんで」

おっさん「アホォ。子供って書いてガキって読むんじゃ」

俺「じゃあ大人って書いておっさんって読むんかー」

おっさん「うわっ、憎そいのー」

俺「すいませーん!おっさん1枚とガキ1枚くださーい!」


そして無事チケットを入手し中へ入ると
そこはもう俺にとっては夢の国だった
今みたいに凝ったアトラクションがあるわけでも
ましてやネズミがいるわけでもなかったけど
豪華な電飾に彩られた世界に俺は大興奮したのを覚えている






242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:31:19.33ID:flZ1wfTAO
首が痛くなるくらい周りをぐるぐると見渡しながら歩いてると
まず目に入ってきたのはこれだった

俺「おっさん!おっさん!」

おっさん「何や便所か?早いのー」

俺「ちゃうわ!ほら、あれ乗ろうや!」

おっさん「んー?どれやねん」

俺「あの飛行機みたいなやつ」

おっさん「紐でブンブン回されてるやつか?」

俺「そうそう!」

おっさん「うわぁ…」


今でも正式名はわからないけど
デカい円柱の上ほうからワイヤーが吊してあって
その先に飛行機がくっついてて円柱が回転すると
遠心力的なもので飛行機が結構なスピードでブンブン回るやつ

おわかりいただけるだろうか?






473:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:48:44.95ID:ZAOAAADJ0
>>242
としまえんにあるよな






243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:33:52.02ID:YDR8eqZz0
うわー地元の小さな遊園地なんだな






245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:43:06.92ID:flZ1wfTAO
おっさんは明らかに嫌そうな顔をした

おっさん「あれめっちゃ怖そうやん…」

俺「なんで?楽しそうやん!空飛んでるみたいやん!」

おっさん「お前なぁ、あの紐取れてほんまに飛んで行ったらどないすんねん」

俺「え…?あれ取れるん?」

おっさん「紐つけてんやったら紐取れることだってあるやろ」

俺「ほんならおっさん一回乗って確認してきてや」

おっさん「しばくぞボケ」


俺は嫌がるおっさんの手を引いて何とか乗ることに成功した
一人乗り用だったので乗ってる最中におっさんがどんな顔してたかはわからないけど
終わって飛行機が停止しても
しばらくおっさんは座ったまま口半開き状態だった






246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:51:48.78ID:flZ1wfTAO
そんなおっさんを引きずり俺は止まることなく遊びまくった

メリーゴーランドはとにかく派手で本に出てくるお菓子の家みたいな印象だった
お化け屋敷はおっさんと手を繋ぎながら入った
めちゃくちゃ怖かったけど俺の手を引くおっさんの歩くスピードも
なかなか怖かった記憶がある
小さな線路を走る汽車にも乗ったし
水上をペダル漕ぎながら進むのも楽しかった

そうこうしてるうちに腹が減ったので
近くにあったベンチで弁当を食うことにした






248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:54:30.40ID:dpJ3476W0
こういう話はやっぱおっさんが似合うな

近所のお兄さんお姉さんおばさんだとこうは似合わない

おっさんが持つ不思議な魅力だな






250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:04:52.76ID:xo/g0KEQ0
既に切なさ全開だわ






251:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:04:58.25ID:flZ1wfTAO
おっさんは俺が弁当を持ってきたことを言うと
ちょっとびっくりしてた

おっさん「こんな時にまで作ってきたんか」

俺「こんな時やからやん。遠足に弁当持ってこん奴なんかおらんで」

おっさん「まぁせやけど…今日くらい外でなんか食わしたったのによ」

俺「ホームレスのくせにお金あるん?」

おっさん「アホ、ホームレスは家は無いけど金は意外と持ってたりするもんやねん」

俺「へーそうやったんや。じゃあおっさんの分も俺食うわ」

おっさん「いやいやいや!食いますやんか兄さん!」

おっさんは相変わらずのノリで弁当食ってたけど
俺はホームレスのおっさんに
遊園地に連れて来てくれる金があるとは思えなかった
チケットを買う時ですら子供ながらにヒヤヒヤしていたぐらいだ
だからおっさんの発言を聞いて俺は内心ホッとした

(そうか…ホームレスもお金持ってるんやなぁ…)

もちろんバイトで稼いでたのは言うまでもなかった






254:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:15:28.51ID:flZ1wfTAO
飯を食い終わってから広場に行ってヌイグルミが踊るショーを見たり
また飛行機に乗っておっさんが白目剥いたりして
とにかくこれでもかと言うくらい遊びまくった

そして時間的に次が最後だと言われると
俺は迷いなく観覧車を指差した

またお決まりなカンジだけど
来た当初にあれは最後に乗るものだとおっさんに言われていたのだ
理由は今でもよくわからん

俺はおっさんと向かい合わせに座ったが
観覧車が動き出すとあまりの高さにびびってしまい
外の風景を見れなくなってしまった






258:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:24:47.25ID:flZ1wfTAO
観覧車が頂上近くまで来る頃には俺もうおっさんの顔すら見れず、
ずっと自分の足元ばかり見ていた
飛行機やお化け屋敷なんか比じゃないくらい怖かった

するとおっさんは俺に言った

おっさん「何してんねん。めっちゃええ景色やのに早よ見んかい」
俺「おっさんおかしいんちゃうか…こんなん怖すぎるやろ」

おっさん「あははははっ!こんモン怖いことあるかい!」

爆笑しながらおっさんは丸くなった俺の背中をバシバシ叩いた

俺は飛行機での復讐だと涙目になった






264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:28:32.07ID:GcDKo98p0
こういう展開かと思った
264_1






266:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:31:59.70ID:8KnzTTIiO
>>264
ワロタwww






267:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:34:31.48ID:flZ1wfTAO
それからもおっさんは景色を見ろとしつこかったので
俺は身を屈めたまま勇気を出してちょっとだけ外を見た

すると視界に広がったのは青一色だった

屈んだ俺の位置からだと周りの建物なんて一切見えなくて
観覧車の窓は全部綺麗な青一色だった

俺は予想外に怖くなかった景色に
恐る恐る背筋を伸ばしてみた


ら、怖かった






273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:49:05.98ID:flZ1wfTAO
おっさん「お前何怖がってんねん。飛行機は乗れてたやん」

俺「飛行機はこんな高なかったわ…」

おっさん「変な奴やっちゃなぁ…まぁええわ。一回見てもうたら一緒や。ちゃんと見てみ」

俺はまだしつこいおっさんにうんざりしながらも
窓に付いてる手すりみたいなやつにガッチリ掴まって渋々周りを見ることにした

すると最初は怖かったものの慣れてきたのか
長く続いている線路
遠くに見える海
玩具のようなビル
豆粒のような人間
俺は次第に興奮していった






276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:54:38.22ID:ElfOH7eC0
このまま泣く自信ある






277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:57:38.38ID:vSFVPbIk0
なんか泣きそう






280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:08:03.35ID:flZ1wfTAO
まだ完全に恐怖が消えないため手すりは握ったままだったけど
もう俺は外の世界に夢中になった

そんな俺におっさんは言った

おっさん「どうや、なかなかええ景色やろ」

俺「うん、何かちょっといけてきたかも」

おっさん「おう。みんなな?そんなモンやねん。井の中の蛙言うやろ?」

俺「何それ知らん」

おっさん「だからなぁ?今自分の身近にあるモンだけが全部ちゃうってことや」

おっさん「ちょっと見る角度変えただけで、いつものしょーもない町がこんなにええモンになんねん」

おっさん「最初は誰かて怖いけど、やってしまえば案外なんとかなる」

おっさん「周りがあかんのやったら視点を変えたらええんや。わかるか?」

俺「んー…ようわからん」

おっさん「やろうなぁ」






281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:10:00.11ID:flZ1wfTAO
その時の俺はまだガキだったので
おっさんが何でいきなり校長先生みたいな話をしだしたのか全くわからなかったけど

「こんな話ちゃんと聞かんでええねん。何となくでええねん」

と言ったのは今でもハッキリ覚えてる






283:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:10:26.59ID:YaRWjxMl0
おっさん…
ダメなやつほどよく語るよな
そこがいいんだけど






292:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:21:16.02ID:flZ1wfTAO
そんなこんなで観覧車を降りて辺りがちょうど暗くなり始めた頃、
俺達はいつもの町に帰ってきた

そして空き地まで戻ってくると
おっさんは渡すモンがあるからと
土管の中に潜ってしばらくしてから
ちょっと汚れたノートを俺に差し出した

おっさん「お前明日から学校やろ。ほれ、アサガオの観察日記や」
おっさんは律儀に観察を続けていたのだ






295:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:27:01.95ID:flZ1wfTAO
俺「あー!めっちゃ忘れてたわ!おっさんありがとう!」

おっさん「ちゃんと毎日書いたんやで。感謝せぇよー」

俺「お礼に明日おっさんの好きなモン作ったるわ!何がええ?」

おっさん「んー、明日はええわ。って言うか…今日で仕舞いや」

俺「え?何が…?」

何がって聞かなくても空気でわかったけど
俺はあえて言葉にした
いつもみたいに冗談だと返して欲しかったのだ






296:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:27:44.54ID:xo/g0KEQ0
ああああ・・・・






299:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:28:27.28ID:AEgUtGhO0
いやああアアアアアアア






304:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:34:10.98ID:flZ1wfTAO
頭が真っ白になった
さっきまでの楽しさは夢のように消えて
変わりに嫌な汗がダラダラと流れてきた

おっさん「もう今日でさいならっちゅーこっちゃ」

俺「だ…だから何でなん…」

おっさん「おっさんなぁ、引っ越しするんやわ」

俺「ホームレスのくせに引っ越しとかあるわけないやん…」

おっさん「いやいやホームレスだって引っ越しぐらいするって」

俺「せーへんわ…」

おっさん「するって」

俺「………」


(俺のこと嫌いになったんか?)

喉まで出かかったけどやっぱり聞けなかった






306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:35:53.52ID:S8QykrVnO
おっちゃんんん!!






307:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:36:33.62ID:T2/LARTpO
バレてたんだな…






309:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:40:13.57ID:flZ1wfTAO
またぼっちに逆戻り

そう思うと悔しくて悲しくて悔しくて悲しくて
物凄く寂しくなった

それからおっさんは
「もう8時や。早よ帰り」と
いつものように俺の背中を押した
ただいつも違ったのは
軽くなったリュックサックを背負い
汚れたノートを抱えて唇を噛む俺だけだった






314:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:45:05.37ID:flZ1wfTAO
その日はあまりにショックで眠れなかった

というのは嘘でリュックサックとノートをぶん投げたまま
俺は遠出の疲れで居間で死んだように爆睡した

翌朝目覚めると母が運んでくれたのか
きちんと布団で寝ていて観察ノートもしっかりランドセルに入れられていた






318:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:48:00.61ID:K5N5xVuv0
寝ちゃうのかよww






319:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:49:53.94ID:flZ1wfTAO
俺はランドセルを背負い学校へ向かった
本当に爆睡だったため、道中に何度も昨日ことは夢じゃないのかと
グルグル考えてはなぜか学校に近付くにつれ現実に戻され
その度に俺はおっさんに裏切られたという思いでいっぱいになった






321:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:56:14.52ID:flZ1wfTAO
久し振りの教室に俺の居場所はやっぱり無かった
でもそんなのは慣れていたので俺は淡々と自分の席につき、ランドセルを置いたところで先生が来て
夏休みの宿題を提出することになった

周りのクラスメイトはあれを忘れただの
アイツがすごいだの賑やかに話していたが
俺は憂鬱なだけだった

なぜなら夏休みの宿題のほとんどをおっさんと一緒こなしたからだ






322:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 18:57:57.21ID:QX7l0oQs0
おっさん…俺もガキんちょとてきとーに会話できるおっさんになりたいなぁ






326:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:01:23.75ID:flZ1wfTAO
漢字や計算ドリルではわからないところを教えてもらい
自由工作では器用なおっさんと一緒にゾウの貯金箱を作った
読書感想文は本を読むのがめんどくさかったので
おっさんが適当に作った冒険話を聞いてその感想を読んだかのように書いた
そしてアサガオの観察日記にいたっては
もう100%おっさん作だった






331:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:09:52.42ID:vSFVPbIk0
そんな大人になりてぇなぁ。
そして子供に戻りたくなった






332:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:09:56.80ID:flZ1wfTAO
書き忘れたけど結局絵日記は持って行かなかった
爆睡して遊園地のこと書けなかったし
爆睡しなくても多分書けなかったと思う

みんなが各々提出する中、
俺も混ざって持ってきたものを先生に渡した
全員が渡し終わると先生は徐に数人の日記や工作に目を通し
面白おかしくコメントしたり突っ込んだりしだした
けど俺はまったく笑えなかった
面白さならおっさんのほうが数倍上だと思った

すると不意に自分の名前が呼ばれた
端から先生の話など聞いてなかったので
呼ばれると思わずビクッと体を揺らしてしまい恥ずかしかった






338:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:16:43.87ID:flZ1wfTAO
先生「>>1の観察日記はすごいなぁ。よう描けてるわ」

俺「はぁ…」

先生「けどちょっと絵も字も上手過ぎるような気もせんでもないけどなぁ」

俺「はぁ…」

先生はニヤニヤと俺を見ながらページをめくっていく
ただでさえ注目されるのは嫌なのにクラスメイトは黙って俺のノートを見る先生の様子を伺っている
俺はあまりの居たたまれなさに俯いてしまった
早く終われ、早く終わってくれ
おっさんにやってもらったことなんか後でならバレてもいいから
とにかく早く終わってくれ
そう願っていると先生が突然笑い出した






343:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:21:00.22ID:ILZK8I0r0
先生、なんで笑うんや!






345:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:21:58.54ID:flZ1wfTAO
先生「知らんかったなぁ。>>1は食べるんがそんなに好きなんか?」

俺「はぁ…?」

あまりに意味不明な言葉に俺は俯いていた顔を上げた
すると先生は俺の方へ近付いてきて机にノートを広げ、
日記の文章を書く欄を指差した

そこには、



8月○日 晴れ
アサガオに水をやった。
飯うまかった。

と書かれていた。






347:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:22:59.97ID:iFxmZUWB0
なんかちょっと感動した






349:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:23:46.68ID:1sBUe1W+0
おっさん…
胸が熱くなるな…






355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:26:01.33ID:Xvffmec50
おっさん、反則やで…






356:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:27:19.55ID:flZ1wfTAO
その次の日も次の日も、短いアサガオの文章後には必ず
「飯うまかった。」と書いてあった
それは昨日である31日も書いてあった。
遊園地に行ってたからアサガオの絵と文章はなかったけど、
ただ一言「飯うまかった」と書いてあった

先生がそれを読み上げるとクラスメイトはみんな爆笑していた
コイツどれだけ飯が好きなんだとそれはもうバカ受けだった
みんながみんな笑うモンだから俺もつられて笑ってしまった
泣きながら笑ってしまった






359:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:28:56.91ID:mKmCtu8z0
おっさんwwww
・・・(´;ω;`)






363:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:31:35.85ID:flZ1wfTAO
学校からの帰り道、俺は真っ直ぐに空き地へ向かった
いつもの穴を潜りいつもの土管を覗いたけど
やっぱりおっさんは居なかった
いつかのように汚い家財道具も一式無くなっていた

ただ唯一残ってたのは綺麗に畳まれた父の服と
夏が終わり枯れ始めたアサガオだけだった


おわり






366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:32:00.09ID:OcThB20R0
おっさんホンマにもうおらへんの






372:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:33:11.97ID:FJCjp/zF0
なんなのこのええ話






373: 【17.6m】 :2011/09/01(木) 19:33:18.02ID:bP291dLt0
心がほかほかだぜ






389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:36:07.40ID:flZ1wfTAO
長々と付き合ってくれて
どうもありがとうございました
昨日寝る前にふと携帯のカレンダーを見て今日が9月1日なのを知り
何となく思い出して何となく書いてみました
保守してくださった方もありがとうございました

夏休み終わっちゃったね…
もう俺もおっさんだから関係ないけどwww






399:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:39:07.58ID:OcThB20R0
オッサンの土管の中は話してくれたし
宿題はさっきのことなんだろうな
簡単でいいから風呂と特技が聞きたいな






407:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:42:39.52ID:1sBUe1W+0
もっと書いてくれよ…






409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:42:47.40ID:flZ1wfTAO
何だかたくさんありがとう
今日は夜勤があるので途中で切れちゃうかもしれないけど
それまでなら書けるだけ書きます
特技の話でいいのかな?

でもとりあえずパパッと飯食ってきてもいいでしょうか?






510:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 21:17:37.50ID:OcThB20R0
菊次郎の夏のイメージと主題曲がずっと流れてた

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000UMP1HA/2log0d-22/ref=nosim/






463:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:31:16.31ID:flZ1wfTAO
夏休みに入ると俺は昼間から空き地に入り浸るようになった
おまけにそこで宿題までしようする俺に
おっさんは呆れた顔で言った

おっさん「お前なぁ宿題ぐらい家でせぇよ」

俺「別にいいやん」

おっさん「こんなクソ暑い中、しかも平でもない土管の上で宿題する奴なんかおらんで」

俺「ここにおるやん。もーおっさんうるさいからあっち行っといてや」

おっさん「いやいやそれお前やから。っていうか汗臭いねん」

俺「臭さでおっさんに勝てるわけないやんか」

おっさん「まぁそらそうか」

そんなやり取りをしてるうちにおっさんは何も言わなくなった
その変わりにガコンッ!とかドンドンッ!て音が聞こえ始めた






465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:37:11.56ID:GcDKo98p0
スコココバシッスコバドドトスコココバシッスコバドドトスコココバシッスコバドドトスコココバシッスコバドドトスコココ
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スコココバシッスコバドド`へヾ―-―    ―-― .へヾスコココバシッスコバドドドンスコバンスコスコココ
              /|\人 _.ノ _||_. /|\






468:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:42:27.75ID:flZ1wfTAO
視線を宿題から音のする方へ移すと
驚くことにおっさんが粗大ごみの山の中で大暴れしていた


おっさん「おおおおおおっ!!!!!!」

俺「ちょっと!おっさん何してんねん!!」

おっさん「はぁ…はぁ…うっさいんじゃボケェ…お前は早よ宿題せんかい」

うるさいのはおっさんだろと思ったけど
何やらすごい気迫でテレビやタンスを持ち上げては投げを繰り返していたので
おっさんは暑さで変になったんだろうかと
それ以上は触れずに無理矢理宿題に集中した
そしてそれは俺が帰るまで続いたのである






474:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:50:06.25ID:flZ1wfTAO
次の日、空き地に行くとおっさんは土管の中で爆睡していた
どうやら昨日の件で体力を消耗したらしく、
揺すっても叩いても全く起きなかった


が、そんなことよりも俺は土管の横に佇む見慣れない物に心奪われていた






479:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:57:47.93ID:flZ1wfTAO
何とその物体とは勉強机だったのだ(多分)
詳しくは覚えてるないけど机部分はプラスチックのBOXやベニヤ板、
日よけには鉄パイプや何かの棒で骨組みして段ボールを被せたなんちゃって屋根もあった
イスは捨ててあったのをそのまま使えそうだった

言葉足らずで上手く伝えられないけど
今思い出してもなかなかの出来だったと思う
まぁ所謂継ぎ接ぎだらけだったけどね






481:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:59:38.54ID:OcThB20R0
机作ってくれたのか






482:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 21:00:28.75ID:FJCjp/zF0
ホンマおっさんええ奴やねー






487:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 21:05:34.37ID:flZ1wfTAO
そう、おっさんはなかなかの器用さんだったのだ
大工道具もないのに一体どうやって作ったのか未だに謎だけど
それからもたまに飯食う用のテーブルを作ったり、
捨ててあったラジオを修理して使ったりしてた
そんなこと出来るなら土管じゃなくて
もっと家っぽいの作ればいいのにと言ったこともあったけど

おっさん「土管よりええ家なんか無いわ」

とのことでした


おわり






402:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:40:39.53ID:4jcNAqWz0
泣いた

おっさんのおれが全力で泣いた






417:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:45:42.77ID:FJCjp/zF0
優しいおっさんになれるようにするわ。




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