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2011年9月4日(日)付

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電力制限解除―節電の夏を次に生かせ

東京電力と東北電力の管内を対象とした電力使用制限令の解除が予定より早まった。大震災の被災地などは2日に解除。残る地域も9日に制限が解かれる。夏が峠を越し、必要な電力の確保にメドが立ったからだ[記事全文]

2020年夏―五輪をまた呼ぶのなら

国際オリンピック委員会(IOC)は2日、2020年五輪に東京、ローマ(イタリア)、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)、ドーハ(カタール)、バクー(アゼルバイジャン)の6都市が立[記事全文]

電力制限解除―節電の夏を次に生かせ

 東京電力と東北電力の管内を対象とした電力使用制限令の解除が予定より早まった。大震災の被災地などは2日に解除。残る地域も9日に制限が解かれる。夏が峠を越し、必要な電力の確保にメドが立ったからだ。

 天候に助けられた面もあった。7、8月に気温が30度以上になる真夏日が昨年と比べれば3割ほど少なかった。とはいえ、停電などの混乱を回避できたのは何といっても「節電」によるところが大きい。

 特に東電管内では、今夏の最大使用量が4922万キロワットにとどまり、前年の最大値を1千万キロワット余りも下回った。平日のピーク時需要をならすと2割強の減少となる。政府要請の15%減を余裕で達成した。

 自動車業界が操業日を土日に振り替えたことで原発2〜3基分が節約された。照明を減らしたり、エアコン利用を控えたりといったオフィスや家庭での工夫も大きく貢献した。

 もちろん、しわ寄せを受けた部分はある。休日出勤や時差出勤で生活リズムが崩れた。操業を制限したり、保育所の手配に追われたりしてコストが増えた企業も少なくない。

 一方で、「電気代が減った」「無駄な会議を減らした結果、仕事の生産性が上がった」「在宅勤務の拡大や残業禁止で自由な時間ができ、家族との会話も増えた」との声も聞く。

 定期検査を終えた原発の再稼働に具体的なめどは立っておらず、国内の電力は今後も不安材料を抱える。暖房需要が強まる今冬は、政府の試算だと関西や四国、九州でも電力不足に陥る懸念がある。

 行きすぎた省エネや無理な節電をするまでではないが、仕事の進め方や暮らしを大胆に見直すことで、かかる負荷を少しでもプラスに転じたい。

 日本の電力産業は、できるだけ電気を使わせ、それに合わせて供給力を増強することに力を注いできた。需給バランスの維持も電力会社にお任せだった。

 だが、この夏の節電は、使う側が主導権を握ることで脱原発や電力改革が進められる可能性を示した。需要のピークをうまくならすことができれば、発電効率が上がり、経済全体も筋肉質へと改められる。

 そのためには、節電がメリットになる仕組みが必要だ。ピーク時を避けて電気を使えば得をするような料金体系の導入に向けて、メーター類の開発や規制緩和を急がなければならない。

 節電を積極的に制度の中に組み込んでいく。この夏の経験を、次へと生かしたい。

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2020年夏―五輪をまた呼ぶのなら

 国際オリンピック委員会(IOC)は2日、2020年五輪に東京、ローマ(イタリア)、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)、ドーハ(カタール)、バクー(アゼルバイジャン)の6都市が立候補したと発表した。開催地を決める再来年9月のIOC総会に向けた戦いが始まる。

 日本国内の関心は高くない。東日本大震災と原発事故からの復旧が道半ばだ。石原慎太郎都知事は「復興五輪」を掲げるものの、今は五輪招致まで頭が回らない国民が大半だろう。

 なでしこジャパンの世界一は感動を呼んだが、やって来る保証がない9年後の五輪は共感しづらい。なにより肝心の都民が「もう一度やってみよう」と盛り上がらないまま、都知事が再挑戦を決めてしまった。秋の都議会は、それが都民の声なのか審議しなければいけない。

 東京は16年大会の招致で開催計画は高い評価を受けながら、「南米初」を訴えたリオデジャネイロ(ブラジル)に敗れた。今回、絶対的な本命は見当たらないが「中東初」「イスラム圏初」を掲げるライバルがいる。18年冬季五輪が平昌(韓国)に決まっているから、東アジアで冬と夏の五輪が続くことへの抵抗感も予想される。

 前回の招致では、149億円の招致費の3分の2を都が負担した。国内の機運を盛り上げるのに84億円を費やしたが、支持率アップにつながったかは疑わしい。IOC総会用に作った10分間のPR映像の制作費に5億円もかかったことは都議会で問題になった。招致費の精査、圧縮が必要になる。

 メーンスタジアムは約1千億円をかけて新設する前回の計画を見直し、1964年東京五輪の主会場だった国立競技場の改修で対応する方向だという。経費や後の利用を考えれば、再活用は理にかなっている。

 東京五輪から半世紀近くが過ぎ、当時の会場群は老朽化が進む。都はスポーツの価値を認めて五輪に立候補したのだから、招致にかかわらず、国と連携して改修を進めるべきだ。

 開催地選びはIOC委員の無記名投票で決まる。計画の優劣に加え、委員との人脈がものをいう。前回は日本スポーツ界の外交力の弱さが響いた。

 自己資金が乏しい日本オリンピック委員会(JOC)は、都民の税金に招致費を頼るという自覚が要る。さらに、国際的なスポーツ界のネットワークを太くし、アスリートとともに国内世論を呼び起こす内外への発信力が求められる。

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