国の外交は、その方向性だけでなくタイミングが大切である。正しい目標を定めても、行動する時期を見誤れば諸外国とボタンのかけ違いが起き、結果的に世界の流れから離れた道に迷いこんでしまう。
日本の経済外交の柱である通商政策が、いま、その危機に直面している。米国主導で進む環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加表明が、大幅に遅れているからだ。
米オバマ政権は、11月にハワイで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに協定の大枠を固めるつもりだ。日本が不在のまま9カ国が交渉を加速している。
このAPECの時期を逃すと、日本の交渉参加は難しくなるだろう。米国では来年、大統領選挙が実施される。オバマ政権は保護主義的な米議会内の勢力や労働組合への配慮を強めるはずだ。各国に自由貿易を働きかける力は低下する。日本のTPP参加についても、米政府・議会内で消極論が強まるのが心配だ。
日本の歴代政権は、農産物の市場開放と、そのために必要な農政改革を先送りしてきた。外国企業の参入を促す規制改革も遅れている。米国だけでなく、欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)にも、日本を「保護主義国」とみなす声があることを忘れてはならない。
日本は世界からどう見られているか。野田佳彦新首相は、その厳しい現実をしっかり認識してほしい。農業保護をめぐる国内の政治的な動きばかりに目を奪われていると、日本は「経済連携にふさわしい相手国ではない」と判断されてしまう。
TPPは米国主導の構想だが、日米2国間だけの通商問題と考えるべきではない。菅直人首相が昨年、TPP参加に意欲を示してから、それまで日本との経済連携に消極的だったEUが態度を変え、前向きな交渉姿勢に転じた。日中韓の3カ国による自由貿易協定(FTA)にも動きが出ている。
経済大国の日本と米国が関係を深めれば、刺激を受けて欧州やアジアも動き出す。その波のうねりが、巨大市場国の中国に市場開放と貿易ルールの順守を促すテコになる。日本のTPP参加でこうした連鎖が起きる外交力学を日本自身が自覚し、活用しなければならない。
日本が経済成長を続けるためには貿易や投資で、海外の力を国内に取り込む必要がある。TPPはそのための重要な土台となる。野田新首相は日本への期待といら立ちが交じる海外の声に耳を傾け、交渉参加の意思を一刻も早く表明すべきだ。
野田佳彦、TPP、APEC、FTA、菅直人
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